浦和フットボール通信

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浦和レッズ2013ライブディスカッション 「浦和で愛される選手になりたい(柏木陽介)」

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レッズ密着取材を続ける河合貴子氏に、本誌・椛沢編集長が浦和レッズの現状や選手達の思いを毎月訊く「レッズ2013月刊ライブディスカッション」。終盤の失速の中での選手達の心境はどのようなものだったのか。河合さんにお話を訊いた。(浦和フットボール通信編集部)

メンタル的な弱さが見えた終盤戦

椛沢:終盤は、なぜあそこまで立て直せなかったのでしょうか。

河合:メンタル的な弱さが一番だと思う。ゲームコントロール、ゲームの運びも下手だった。ここ一番という試合でことごとくゲームを落としてきたのは、メンタル的な弱さだと思う。

椛沢:今のレッズにはメンタルが強い選手がいないのでしょうか。

河合:ピッチの中で崩れそうになった時に、精神的な柱になるような選手はいないのかもしれない……。一生懸命、山岸がその存在になろうとしていたりするけれども……。セレッソ戦が終わった後は、槙野も声がボロボロで、声を必死に出していたことが分かった。彼らは、一生懸命やっているんだろうけども空回りをしているのか……。

椛沢:槙野も頭の中が攻めることになり過ぎていて、守るべきところでも意識が攻めになってしまっているのではないかと思いました。

河合:よく、両ワイドが前に出た時の、裏のスペースを使えと言われているけれども、浦和はその両ワイドの選手が攻め上がる意識が強いだけに、よく突かれてしまった。

椛沢:セレッソ戦も両サイドのスリーバックの裏を思いっきり使われて、深い位置まで侵入をされてしまって失点を喫しました。一番危険な位置を相手も狙ってくる中で、簡単に突かれてしまった。前掛りになりすぎて、あの辺りのバランスが全く取れていなかったと思う。守備があっての攻めではないのでしょうか。

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河合:しかも、2点目の失点は前半のアディッショナルタイムでの失点だった。メモには『しっかりクリアできず』と書いてあった。時間帯を考えればしっかりとボールを切れば良いのだけど、その冷静さもなかった。今年の課題は、局面、局面の弱さだったと思う。せっかくレッズの花が咲きそうだったのに、しぼんじゃった。また冬の寒さが訪れてしまった。

椛沢:このような結果だから、そう見えるのかもしれないですけど、大切な一戦の前に、大原での練習を見ていると、楽しんでいるだけに見えるような時がある。締まる時に締まっているのかなと。

河合:継続して練習を見ている立場からすれば、締まる時は締まっていると思う。ミニゲームでも興梠を暢久がここまで潰しに行くのか!と、激しいと思う時もあった。ただ、うちは甘ちゃんなのかな……。興梠が話をしていたのだけども「うちのクラブはみんな優しい。負けたりすれば、普通だったら、ああだとこうだと凹むくらい言われるのに、うちは次、頑張ろうと言ってくれる」という雰囲気があると。

椛沢:選手のコメントにもありましたが、仲が良いチームだけではダメ。ダメな時はダメだと言える厳しい雰囲気もないと勝負時の力が出ないように思えます。

河合:いみじくも最終戦が終わった後に興梠が言ったのは、「3-1で勝つよりも3-0で勝ちたい。それが無理ならば1-0で勝ちたい」と。私はそれだと思うよ。そうでなければ同じことの繰り返しになってしまう。

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椛沢:2点、3点取られるチームはなかなか勝てないですよね。0で抑えれば、引き分けることはあっても、負けることはないわけです。

河合:最初は引きこもりと言われるくらい守っていたチームが少しずつ進化していって、攻撃的な部分を出すことが出来た。最初はボランチ一枚が最終ラインに下がるというところから、2枚が下がるというオプションなども増えた。そのような引き出しの中でどれを使うかという判断能力が今後は求められる。今はその使い分けが出来ていない。まだレッズのサッカーは、進化の途中だと思う。

椛沢:確かに攻撃のバリエーションは増えたと思います。

河合:ただ、引いた相手を崩すやり方がまだ足りない。

椛沢:引いた相手を崩すという意味では、FWの存在が足りないような気がします。ペナルティエリアでクロスから入ってくるボールを合わせられる選手が興梠しかない。原口や柏木がシャドーの位置から入り込んでこなければいけないのですが、彼らはあまりそれがうまくない。相手のゴール前を固められて展開が硬直した時に、シャドー一枚のどちらかを変えて、FWを入れることができれば、サイドまでは攻略出来ているのだから、より決定的場面を作り出すことが出来ると思います。那須さんがあそこまで点が獲れるんだから、高さのある選手がいれば、もっと点が入ると思うんですけどね。

河合:頑張れ阪野!

椛沢:阪野に頑張って欲しいですけど、もう少し強力なFWが欲しい……。

河合:横からのクロスだけでは、崩しきれないけれども、ボール縦に入れるスイッチが、相手にブロックを作られていると、なかなかそれも入らない。私が相手チームのDFだったら、クロスに対しては絶対に競り勝つという意識が強いと思う。一番、嫌なのはペナルティエリアの中でボールを持たれることだと思う。それをもっとやることができれば良いのではないかと思う。

椛沢:あそこまでゴール前を固められるとドリブルで仕掛けるスペースがないので、そこまで入り込めないですよね。

河合:元気がペナルティエリアに入ってきたら、相手DFは飛び込めないから、嫌だと思うよ。そのようなシーンを作り出せることができれば、もう一歩上がれると思う。

今季、一番成長した選手は宇賀神。

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河合:終盤の失速の部分で外せないのは、マルシオの怪我もあります。周りからマルシオはどうしたのかとよく聞かれたけれども、怪我です。あっちこっちが痛くなってしまった。最後は、身体がボロボロだった。無理をしているから余計にかばって、ほかのところが悪くなってという繰り返しだった。天皇杯あたりから無理をしてかばって、他が痛くなってという悪循環を起こしていた。膝、腰、付け根、本当に悪いのはどこなのかと思うくらい満身創痍だった。自分が一番大事な時期にピッチに立てないと必死になってリハビリをやっていたんだけど、結局、間に合いませんでした。

椛沢:マルシオの離脱は前線でボールを落ち着かせられる選手がいなかったという意味でも痛かったですね。

河合:ポジティブな所では、今季、宇賀神が一番成長した選手だと思う。夏の磐田戦で、チームは勝ったけれども、宇賀は内容がひどくて、半べそのような顔をしてミックスルームに現れて「チームが勝ったから良かったです」と勝っても一人笑顔がなかった。こうやって選手はダメになってしまうのかと思ったら、彼はそこで踏ん張って、自分が何をしないといけないのか。持ち味はなんなのか、ダメな所は何かを考えられたから、成長が出来たんだと思う。

椛沢:大学時代にそのような術を身につけたと言っていましたね。

河合:いつも彼は雑草だからと言っている。「今季、一番成長したのは宇賀だね」と彼に言ったら「その成長の証をセレッソ戦で見せます!」と力強く言っていたんだけど、見せられなかった。まだまだだね!でも成長したのは宇賀神かなと思っている。山田直輝も帰ってきて、ホント少しずつやれるようになってきた。来年は直輝の年になりますように!と思っているくらい期待をしている。セレッソ戦では、決められるチャンスはあったので決めたかっただろうなあ……。

チームの中心選手へと意識が高まってきた柏木陽介

河合:柏木陽介が試合後にずっと泣いていた理由を考えていたのだけども、陽介は山さんを最後、ピッチに立たせたかった想いが強かったけど、それが叶えられなかったという想いからの涙だったのかなと思った。2点目を取るビックチャンスを吹かして外してしまった。あれが決まっていれば流れは違っていて、浦和は勝ってACLに行っていたかもしれない。あの試合の全てなんじゃないかと思ったくらいのプレーだった。陽介もあそこで決めなきゃという気持ちが強すぎたのだろうから責められない。もっと精神力を鍛えないといけないね。

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椛沢:どうやって鍛えるんですか。

河合:滝にうたれてこい!(笑)。宇賀神が成長したのは、メンタル的な成長もあると思うんだけど、彼は陶芸をやっていて、あれで心が無になるらしい。そうやって心身ともに鍛えないといけない。柏木は自分が言うくらいすごいネガティブで、ミシャさんにもお前が、そうやってネガティブになった態度をとるとチームに対して悪影響になると言われたことがあるそうです。

椛沢:最終戦の柏木のコメントで、キャプテンになるわけではないかもしれないけども、そのくらいの気持ちをもってチームを引っ張っていきたいというコメントがありました。彼の態度やプレーが変わってきたと感じるし、チームの中での責任感が出てきているのではないでしょうか。

河合:はい、言っていました!「自分がキャプテンではないかもしれないけども、そのような気持ちを持ってやらないといけないという自覚をもってきた。ネガティブを引きずっていたらやられた。こんなにたくさん集まってくれたのに、申し訳ない」と。セレッソ戦でのプレーもあって、そのような気持ちになったんじゃないかと思う。今季の序盤は、攻撃の組立の部分とかで、うまくいっていなくて、色々な部分でネガティブだったんだけれども、自分の中では、ホームの湘南戦から気持ちが吹っ切れたターニングポイントだったと言っていた。「守備の部分というけれども、終盤は、攻撃の部分でずっとうまくいっていなかった。縦に入るパスが少なくて、横、横のパスが多くて、その横のパスが相手に狙われていた。攻撃の組立がうまくいっていれば、安い失点はないんだ」と陽介は言っていました。

椛沢:攻撃がうまくいっていないために、レッズのウィークの部分が出てしまったということなんですかね。

河合:遠藤とか今野は遊びのパスを入れる。そのなにげない遊びのパスが重要なんだと。それを入れられるということは余裕があるということなんだよね。そのくらい余裕をもって、それを陽介もやりたいと思っている。でも余裕がないから、あのようになってしまう。

椛沢:余裕がないと、相手をいなしたり、欺くことはできないですからね。

河合:レッズの選手は、ひとりひとりが真面目で、がむしゃら過ぎる部分があると言っていた。冷静さがないということが、ここ一番で弱いことに繋がっているんだと思う。まだ大人のサッカーができない。だから、ピッチの中でゲームコントロールや流れを変えることもできない。

河合:あと陽介が山さんの話をしている時に「浦和で、愛される存在になっていきたい」と言っていたのが印象的だった。

椛沢:暢久や、昨年の達也との、あのような別れを見ていると、この人たちはなんでこんなにサポーターに愛されて支持をされているんだろうと思うんでしょうね。愛される理由は彼らを見ていてれば分かる。そうするとこのクラブでやらないといけないことは見えてくるんでしょうね。

勝つために戦うことを最優先して欲しい。

河合:そうだと思う。その意味で、槙野とか森脇はまだ自分の路線なんだよね。槙野すごく自分なりのスタイルで、一生懸命。ファンサービスにしても足が痛くなるまで、丁寧に行っている。あの姿は頭が下がる。あれは槙野スタイルだと思うし、認める。それプラスアルファが欲しい。ピッチの中での それができる選手なんだから、もっとピッチの中で自覚と責任をもって、頭を使って、体を張ってやってほしい。1点取られても2点取れば良いと槙野はよく言うけれども、いや1点取られるまえに、2点取りましょうよと。

椛沢:正直、ディフェンスが言う言葉ではないと思う。1点取られないようにしてください。
俺たちは0で抑えるから、FWが1点とってこいと本来は、言って欲しい。

河合:大分戦で3点をひっくり返して4-3で勝った試合があったけれども、他の記者は勝ったんだから良いんですよと言われたけれども、浦和は違うんだと言った。森脇も試合後に「7ゴールが入ったから、子供たちもワクワクしてくれたと思う」と話をしていて、私はふざけんなと言った。「浦和の子供は無失点で勝った方がもっと喜ぶと。浦和の子は7点入ったことを喜ばないよ」と。さすがに、森脇も驚いた顔をしていたんだけど(苦笑)

椛沢:それはそうだと思いますよ。浦和の子供を馬鹿にするなと(笑)。あの3失点はないよと言う、子供が多いと思う。

河合:あの時は、森脇はまだ浦和を分かってないと思った。みんな逆転したから良いと言ったけれども、この3失点が問題ではないのか。その部分の意識が後後に、響いてくるよと言った。

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椛沢:あのような試合が年に何度できますかという話ですよね。3点取られて勝てる試合を年に何回も出来るものではない。その言葉が予言のようになってしまった形になってしまいました。浦和の場合は勝利を目指して戦うことを最優先に考えて欲しい。美しいサッカーであれば負けても良いという雰囲気では許されない。ナビスコ決勝では、あくまで自分たちのサッカーを貫くことを通した浦和に、対して柏のネルシーニョ監督は、勝つことが全てだという策を採ってきた。この勝負に対する意識の差を感じさせられた、決勝戦になってしまいました。

河合:私もコラムで書いた監督のフィロソフィーの問題で、あの決勝のあとに、色々と悩んだんだけれども、悩んだ末の答えは、自分たちのやり方を変えて勝って、その先に何があるのかと思った。

椛沢:もちろん全て考え方を捨てる必要はなくて、相手によってやり方を変える必要があるんじゃないかなということなんですよね。自分たちのサッカーを貫いたから負けても仕方ないという言葉は、勝つために戦っているのかという気持ちにさせられてしまう。

河合:自分たちのやり方をやり続けることによって、良い点も見えれば、課題をみえてくる、そのクオリティをあげることで、ゆくゆくは揺らがないものが手に入るかもしれない。このフィロソフィーを持って、通用しなくなった時、勝てなくなった時に、ミシャさんは自らチームを去るのかもしれない。それが全ての答えじゃないかな。

椛沢:ミシャにとっては状況が悪くなっていて、それは広島が連覇をしたことで、ミシャで優勝できるのかという雰囲気が作られてしまう。広島から選手がどんどん来るから、より勝たないとより認められない状況になってきていると思います。来季はミシャにとっても3年目のシーズンになります。だからこそ勝って証明をしてもらいたいと思います。

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