浦和フットボール通信

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河合貴子×椛沢佑一 浦和レッズ2013ライブディスカッション 「次のダービーが優勝への基準になる」

レッズ密着取材を続ける河合貴子氏に、本誌・椛沢編集長が浦和レッズの現状や選手達の思いを毎月訊く「レッズ2013月刊ライブディスカッション」。5年ぶりの出場を果たしているアジアチャンピオンズリーグは、最終戦に一縷の予選リーグ突破可能性を残し、リーグ戦は3位につけるなど、まずまずの成績を残した序盤戦を展開している。現状のチーム状態はどうなのか。各選手達の様子なども交えてお話を訊いた。(浦和フットボール通信編集部)

photo by(C)Kazuyoshi Shimizu

リーグ戦では好調維持もアジアの戦いで苦戦。

椛沢:ここまでの流れをみるとリーグ戦は昨年に比べて勝ちきれるようになったように感じるけれども、ACLでは決定力に物足りなさを感じるという序盤戦の印象です。ここまでのチームの出来としては、総括的にはどうでしょうか。

河合:ACLの戦いは自滅だと思う。なぜ自分たちでゲームを難しくしているのかと思うようなゲームをした。しかし、これは今後の良い経験になると思っている。リーグ戦に関しては、大宮戦はあったけれども、方向性は間違えていないのだから、下を向くことなくやり続けること、最後に笑えば良いんです。

椛沢:リーグ戦で通用するところが、アジアでは通用しないというレベルの差を感じるところもあります。特に勝負を決める部分での物足りなさを感じる。試合の駆け引きにおいても足りないと思いますね。

河合:試合の駆け引きがイマイチなのは確かで、そこで自滅に繋がっていると思う。ホームで負けた全北戦もあり得なかった。

椛沢:前半にあれだけ圧倒をしていて、後半大逆転を許してしまうのは、厳しいですね。

河合:アジアはアウェーで戦う難しさはあるのだと思うけど、アジアを勝ち抜いていくためには、ホームでは勝利をして、アウェーでは最低限引き分けをするという星の取り方と戦い方をしないといけない。

椛沢:苦しい展開の時に点が取れる選手が、アジアを優勝した時にはワシントン、ロビーという選手がいましたが、今のレッズは良いサッカーをした中で、崩して点を取る形が多く、苦しい展開の時に点が入ることはほとんどない。そういう力がアジアでは求められるのではないかなと思います。

河合:苦しい時にミドルシュートを積極的に打っても良いと思う。崩し方にこだわり過ぎていて、勝負する場面に物足りなさを感じるところがある。あとは、槙野が言っていたように、豊富な運動量と後ろからのビルドアップが鍵になると思います。

椛沢:やり方を我慢して貫いたから、結果が出たという試合もあります。そう考えると何が答えなのかなと思うこともある。チームとしてやり方を崩すことは嫌う面はあるのでしょうね。

河合:それはあるだろうね。でも、打てる時には打つなとはミシャさんは言っていないのだから、打てる時には積極的にシュートを打てば良い。

椛沢:広州戦の後半は、明らかにその意識が増えて、流れが変わりました。前半は繋ぐことに固執して、スタンドもイライラする場面がありました。反面、リーグ戦では、比較的バランス良く戦えている試合が多いとは思います。

photo by(C)Kazuyoshi Shimizu

河合:湘南のチョウ監督が、レッズのOBで気合が入っていたんだけども、記者会見が終わった後に、言われた言葉があって、湘南も名古屋など良い試合をしてきている中で、ここまで対戦した中で、浦和が一番強くて、完成度がすごかった。ミシャさんの練習を見に行きたいといわれて、すごく嬉しかった。

椛沢:湘南戦は完璧な試合でしたからね。選手のクオリティの差も感じてしまったところもありました。

河合:選手のクオリティについては、チョウ監督にはそれは言うなよ、とさびしそうに言われました。それを克服するのは、湘南にとっては酷なことかもしれない。

photo by(C)Kazuyoshi Shimizu

椛沢:あとは、興梠が入ったことで攻撃のバリエーションが増えた部分と、興梠自身がストライカーとしての活躍が足りない部分で、大宮戦やACLの試合で物足りない。強烈なFWがいないと厳しいなという思いが出てしまうのも事実だと思います。

河合:大宮戦は興梠にもボールが収まらなかった。槙野が言うには、全体の運動量とチームの生命線である後ろからのビルドアップが足りなすぎる。それがモロに出たのが大宮戦だと思う。それを感じた槙野が広州戦では見せてくれた。興梠の同点ゴールも槙野が起点になって、槙野が持ち込んで、平川がシュートを打ったけども、そこを興梠が詰めていた。興梠自身はあのゴールはオフサイドだったと思うと恥ずかしそうに言っていたけれども、ゴールはゴールですからね。あそこは良く詰めていたと思うしあのような動きをしないとゴールは奪えない。練習でもあのように興梠はよく詰めている姿が見えます。

さいたまダービーは痛すぎる敗戦。優勝でしかこの悔しさは晴らせない。

椛沢:上位対決で迎えた“さいたまダービー”に敗れました。

河合:大宮に負けたことで、大宮に無敗記録を更新され、さらに順位は上に行かれて、ダービーの対戦成績も8勝8敗5分けで、並ばれた。色々な意味でも浦和のプライドが許さない試合だった。あの試合は勝ちたかった。それを考えるとリーグ戦も好調とは言い切れない。

椛沢:あの試合は、サッカーとして負けてしまった。攻略されてしまったという試合だった。レッズは、ノーチャンス。原口がいなくなってから何も出来なくなってしまった。

河合:浦和がなぜあんなに消極的になったのか分からない。那須は自分が外に出ている間に失点したと、すごく悔しがっていた。サッカーで言う危ない時間帯。失点が多い時間帯は統計的にも決まっている。それは、試合の立ち上がりと終了間際。ここの意識をもっと強く持たないといけない。

椛沢:スタンドもなんで那須を入れないんだよという奮起だったし、ピッチもそれに呼応をしてなぜ入れないのかという感じになった。ルールからすれば止血を審判が確認しなければ入れないわけですから当然なので、あの危険な場面で失点をしてしまうのは勝負弱さが見えました。

河合:そこの意識をもっと強く持たないとダメだね。大宮の敗戦から経て、広州戦の勝利をみたら、精神的に成長をしたかなと思ったけれども、ミシャさんは次の清水戦を見なければ分からないと言っていた。広州戦と同じくらいのパフォーマンスを清水戦で見せることが出来たら、メンタル的な成長が見られたといえると。課題としてはミドルでも良いから狙うこと。ゲームの入り方、ゲームの終わらせ方に注意することだね。

椛沢:チームもサポーターもこのダービーには懸けていた所があったので悔しい思いが残りました。

河合:ミシャさんは痛い敗戦だと言っていたけども本当に痛い。広州戦の前日練習で、私に一番話しかけてきた言葉が、「大宮戦……ダメね…」だった。ミシャさんも引きずっていたけども、私も引きずっていますと(笑)さすがに槙野も落ち込んでいて、槙野はいつも言っているじゃないか。負けた試合の後はちゃんと修正する、それだけの力がある。敗戦から学ぶことは大きいと。いつも、そう言っているよね?と言ったら、槙野もそうだよね!と言っていた。

photo by(C)Kazuyoshi Shimizu

椛沢:ダービーのダメージは大きかったですね。

河合:みんなダメージが大きかったけど、下を向くことなく次に行けたことは大きい。最後にうちが笑えば良いんだと。陽介も那須も優勝すれば良いんだと言っていた。だから「目標高く」というコラムを書かせてもらいました。

椛沢:あのダービーの前は、原口の気合いが入っていましたよね。試合前のシュート練習の時から、原口のシュートは他の選手とは違う球筋で、そこから気持ちを感じることが出来るくらいでした。

河合:それだけに相手GKと接触しての怪我は残念だった。森脇もダービーを楽しみにしていて、気持ちが入っていた。森脇にとって初のダービーで、楽しみで仕方ない。潰しあいだという話をしていた。レッズは外から見ていて、ダービーの時に大宮の外国人選手にやられていましたよね?と言っていて、それはラファエルだという話をして、俺が外国人を潰しますといっていた。途中まで潰していたんだけどね。興梠もダービーが大事なこと、ダービーに負けて、バスが囲まれたこともサポーターに特別な思いがあることも聞いたけど、何よりも順位が逆転するのが嫌だと言っていた。目指しているのは優勝なんだよね。

椛沢:ダービーがようやくダービーっぽくなってきたという印象も受けました。今までは浦和の選手にも、どこか大宮を舐めている姿勢が見え隠れしていたけれども、大宮の立場も変わって、お互いが負けたくないというバランスが取れて、良い雰囲気になりました。

河合:だから10月に当たる時には、大宮も優勝争いをしていろよ!と言いたい。浦和も優勝争いをしているからと。

椛沢:ダービーを制した方が優勝のポジションに行くくらいの試合になれば、最高の展開になりますね。大宮はあのサッカーが続けられれば、優勝争いをする可能性はあるのではないでしょうか。選手層が薄いので、戦力さえ維持できれば上位に残っている可能性が高いでしょう。

河合:大宮は、夏場がどうなるかだね。次のダービーでは、優勝争いのダービーになって、もっと最高の舞台がやってくる。ホーム埼スタで、どのくらいの入場者があるか。大宮からも2万人くらい来て下さいと。その最高の雰囲気の中で、大宮に勝って優勝をするしかない。この悔しさは優勝しないと晴れないからね!

椛沢:シーズン終盤にやって来るダービーで、あの大宮をどう崩せるようになるか。これが優勝するための成長が必要な部分かもしれません。今回のダービーが基準になって、あのようなサッカーを乗り越えられるようになれば、おのずと頂点が見えてくるかもしれないですね。

河合:それはそうだね。実は、ダービーの前から、「埼玉には浦和だけ~」というサポーターのチャントが頭から離れなくて、歌っていたら、うちの母親にそんな歌を歌っていたら足元すくわれるわよ!と怒られた。家に帰ったら、ほら見たことかと……でも、この歌は相手をリスペクトしている歌だと思う。大宮がJ1にいないと歌えないし、浦和が勝って歌うのが最高なんだけども。

椛沢:リスペクトは拡大解釈ですね?(笑)でも大宮が良い位置にいてくれないと、“まんまの歌”なので、面白くもなんともない歌だから、ある種、そういう部分はあるかもしれないですね。サポーターも今回は封印をして、試合前には歌わなかったんですよね。次に優勝争いをして、勝って歌えれば最高ですね。

強敵・広州に勝利して、グループリーグ突破の可能性を最終戦に繋げる。

椛沢:ダービーで悔しい敗戦をした後、すぐに広州戦がありました。

河合:あの中で迎えた広州戦で、ちゃんとしたパフォーマンスが出来た。

椛沢:あの試合は大きかったですよね。広州戦で同じような負け方をしていたら、今季ズルズルいってしまうのではないかという雰囲気だった。

河合:あの試合は、先制点のチャンスを外して、失点をして、嫌なムードが流れた。あれは大宮戦も同じような雰囲気で、嫌だなという思いがよぎった。ただ、槙野や何人かの選手が言っていたけれども、広州戦は、前半に負けていたけれども、ロッカールームでは負けている雰囲気ではなかったと言っていた。私もなんでこんなチームにあんなにアウェーで大敗したのかと思った。良いチームだけど強いとは思わなかった。

photo by(C)Kazuyoshi Shimizu

椛沢:確かにアウェーでは、前半に、かなり相手を崩したけれども、さすがリッピ監督だなと後半は対策を打たれて、マンツーマンで守られてブロックを作られて、個人能力の高さでゴールを決められた。これをやられると厳しいなという試合だったんですけど、ホームでは、そのようなやり方をやってこなかった。

河合:なぜだろうね。リッピ的にはアウェーで勝って1位通過は決めたかったと思うけどね。

photo by(C)Kazuyoshi Shimizu

椛沢:アウェーで見た時の怖さは感じませんでした。

河合:レッズは運動量を出して、ビルドアップをしてボールポゼッションをして、相手の良さを消していた部分もある。コンカが守備に追われて下がり気味になっていたこともある。

椛沢:アウェーではチンチンにされた、ムリキも抑えていたところもあります。

河合:うちには、モリキがいますから(笑)。槙野がそのように試合前に言っていたんだよね(笑)。森脇もムリキと対戦することがわかっていたから、まずはファーストディフェンス。無理して飛び込まないで、相手が嫌がるくらい、ついていくということを実践していた。森脇は気持ちが入ると良い守りが出来る。

椛沢:ムリキに対しての守備に関して言うと、広州戦は、平川も良かったですよね。

河合:ベテランだよね。ゲームから離れていてもあれだけのプレーが出来て波がないのはさすが。平川は安定感がある。ムアントンから帰ってきて大阪に行かなければならない。そして鹿島までの連戦をどう乗り切るか。決勝トーナメントに行くと15日(水)にも試合がある。

椛沢:決勝トーナメントの2位突破が出来ると柏との対戦になります。そのためには、ムアントンで勝たなければいけません。タイでは簡単には勝てないでしょうからね。ピッチの状況、暑さの環境と、東南アジアのチームはホームだと圧倒的に強いですからね。インドネシアのチームがホームでは弱かったのに、アウェーに行ったらすごく強くなっていたということもありますから、油断は全くできません。

河合:柏との対戦になれば、移動が楽。レイソルさん、国立でも試合をしてくれても良いですよ。国立だったら会社帰りに皆がいける(笑)。もしそうなったら、15日、22日、26日とレイソルとの3連戦になる。10日間の間に同じチームと3試合をするのは、なかなかないからね。面白い。ぜひ、面白くしたい。

椛沢:あとムアントン戦は、啓太が出場停止なので、那須をボランチにして暢久を3バックの真ん中に置くのかという問題もあります。

河合:もしくは柏木をボランチに下げるか、梅崎と元気もいないからシャドーの位置の陣容も気になるところ。ここはミシャさんの腕の見せ所だね。

椛沢:問題は暑いところで、暢久が機能するかですね(笑)

河合:いや~、それは危ない。山さん、寝ちゃうかもしれないからね(笑)ただ、山さんのやる気スイッチが入ったらすごいからね。あとは、槙野、那須、森脇の3バックはうまく行っているので、崩したくないという思いもあるので、ボランチに山さんを入れるということも考えられるのかなと。ここまでは、ACLは勝てる試合を自分たちで難しくして崩した。アウェーでの戦い方をもっとしっかりやらないといけないね。

椛沢:今年はターンオーバーがうまく出来ていますよね。

河合:疲れたから選手を単純に代えるのは意味がないとミシャさんは言っていて、戦力を落とさずにうまくやり繰りをしている。選手の疲労はあるとは思うけども、それを感じないようにやってきた。

椛沢:同じくアジアを戦う、柏はリーグ戦では、不調です。あれは疲れが出ているんだろうと思う。サンフレッチェはアジア、リーグの両方の調子も上がりません。そう考えると、チームマネジメントが良く出来ているのかなと思います。

河合:ただ、心配なのは、怪我人が増えてきていること。

椛沢:梅崎が肉離れ。原口は大宮戦でGKと接触して肝挫傷での離脱です。

河合:原口はセレッソ戦にむけて調整中。本人はたいしたことはないと言っていましたけども、現在は胸トラップが禁止されている。那須さんは鼻が折れているのに、フェイスガードもつけずにやる。あのど根性はすごい。反対側が折れても良い。フェイスガードをつけていても邪魔だし、途中で取ってしまう。何度も折ったことがあるし、鼻骨骨折は職業病みたいなもんだからと話していました。正直、那須さん無理をしないでも暢久さんがいますよと言いたいんだけどね(笑)。

photo by(C)Kazuyoshi Shimizu

椛沢:熟成度は、現在どのくらいだと思いますか。今後、どれくらい進化していくのが完成形なのでしょうか。

河合:熟成度を測るのは難しいですね。最終的には、世界と戦えるようになることでしょう。

椛沢:そうなると外国人選手の獲得が必要ですね?・・・

河合:でも、それだとサッカーが面白くなくなる可能性もあるよね?バルサのような絶対的なサッカーが出来るようになれば、良いとも思える。

椛沢:そのバルサはメッシというスーパースターがいるから成り立っているところもあります。彼がいないバルサは、何かが足りない感じになってしまいます。

河合:方向性は間違っていないから、ここからどうステップアップをしていくか。熟成度を上げて、サイドのクロスや、クロスを入れるのか中に切り込むのかという判断力も上げていかないといけない。

椛沢:ダービーのような試合で勝つためには、熟成度を上げるべきなのか、相手を打ち破る個人能力を入れるのか、悩ましいところです。

河合:大宮のディフェンスラインは高かった。そのラインの裏を突く動きを唯一やったのが元気が陽介の斜めのパスを受けた動き。あれが出来ると相手はラインを下げなくてはいけなくなって、浦和のペースになっていく。

椛沢;プレッシャーをかけられると、まだ慌ててしまいます。あそこで相手を往なせるようになると成長といえるのではないでしょうか。

河合:相手がラインを上げてきたら、こちらもラインを上げて後ろから冷静にパスを繋いで崩す。無理に縦パスを入れても仕方ないので、そこの判断力が必要になる。あとは良いリズムでパスを繋いでいる時の単純なミス。これで流れが一気に変わってしまう。そこの意識をもっと高く持ってもらいたい。ミスは起きる。人間だから。ミシャさんも選手はロボットではないから、調子が良い時と悪い時があるけれども、一人の選手が調子の悪い時はみんなでカバーできるようになれば良いと話をしていました。

椛沢:その意味では徐々にそんなチームにはなってきていますよね。さらなる熟成度を上げて、さいたまダービーで大宮に勝利をして、優勝を目指す。今季の大きな目標が出来ました。次回は各選手についてお話をお聞きしていきます。

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