浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトーク Vol.141 (5/29)

2試合連続の6-2、柏戦。2ステージ制導入に文化を育てる観点はあるのか?

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:日曜日は、柏レイソル戦でした。柏は水曜日にACLを戦い、レッズが敗れた全北現代を退けてJリーグ勢として、唯一のベスト8進出を決めました。日程的なハンディがあった中ではありましたが、レッズは、前節に続く6得点で、その柏を破りました。会場も国立競技場ということで、レッズのホームのようなもの。スタンドの半分は赤く染まり、赤と黄色のコントラストは、その日の朝方に行われていたバイエルンvsドルトムントの試合を思い起こさせる対戦でした(笑)。

豊田:神宮外苑は爽やかな好天。わざと日曜日にずらせておいたヤボ仕事をすませ、事務所からレッズ戦に向かうというフットボールデーを楽しみました。国立競技場にはJFL時代から日立とレイソル相手の観戦ラッキーゾーンがありまして。バックスタンド2階席のビジョンよりのシートなのですが、そのあたりに私が座るとなぜか三菱時代からレッズがレイソルに大勝するのです。もちろん今回もSA席あたりの当日券となるとアウェーが先に売り切れていますので、仕方なくホーム援軍のど真ん中にお邪魔するチケットとなったのだが、席番を見たらズバりそのエリア(笑)。そもそも始まりは19試合17得点の快進撃を続けていたエジウソンを擁しニカノール監督が率いていたレイソルを、ギド・ブッフバルト以下のレッズが7-0で葬った96年頃。国立メインスタンドをバックに眺める赤と黄色の配置もそっくりだったので、「今日も始まるのでは?」と抱いた直感がまんま的中しました。

椛沢:国立の柏というと、『7-0柏戦』の記憶が今でも思い起こされますね。ここ最近は北嶋の開始早々のゴールで苦汁を舐めさせられた2011年、ポポの劇的ロスタイムゴールで勝利した2012年の試合と圧勝ムードがありませんでしたが、この試合は90分通して完膚なきまでに柏を潰すぞ!とコールリーダーからも発声があってのサポーティングとなり、まさにその通りになりました。先制点は、狙いの形。原口が中盤から持ち上がり、興梠に楔のパスを入れると、その折り返しを原口がさらに相手の裏で受けて、相手を交わしてゴール。前半終了間際にも興梠が起点となって、左サイドの梅崎に渡って、左からのクロスを柏木があわせて追加点。これも狙いの形だったと思います。良い時間帯での得点になり、試合を優位に進めることができました。

豊田:敵はネルシーニョ政権の五年目で、長期体制を固めた上で成果も示し始めているクラブ。ミシャの長期政権を確立したいわれらレッズとしては、近未来の理想型を考える上では外せない相手である訳です。ましてや今季のレイソルはACLに最重点を置き、レッズが苦杯を喫した全北現代にアウェーでも勝利している。日本を代表するクラブとしてトーナメントラウンドに勝ち残ってもいます。相手もJ中断前のレッズ戦が山場であることは明白で、私たちの「現在位置」を知るために必見の試合でした。プレースタイルの相性からしてもレッズが先制すればかなりアタッカーたちの出番も多いゲームになる予想が多かったし、その通りの展開になった。特に先制点の場面ではサイドバックの位置に開いて展開を作ろうとしていた増島選手を狙った攻撃陣の連動が目の前で見ることができ、迫力を感じました。

椛沢:後半も68分にロングボールを興梠が相手と競り勝って裏に抜け出ると、GKと1対1になり、後ろから走りこんできたマルシオにパスを出して4点目。ここまで完全にレッズペースでしたが、鳥栖戦から続くもったいない形での失点を喫してしまいます。すぐさま森脇がドリブル突破から5点目となる追加点を決めますが、CKから近藤に決められて2失点目。この二つの失点は防げる失点。得点をすると緩む空気が出るのは、今季の良くない癖。今後の苦しい戦いになった時に無くしておかなければ、勝ち残れなくなります。逆にこの試合は失点をするとすぐに奪い返すこともできました。最後は、興梠が潰れてこぼれたボールを原口がマイボールにすると左サイドをドリブルで切り裂いて、中央に走りこんできたマルシオにクロス。そのままゴールを決めて6-2の勝利となりました。2試合連続の6得点はレッズ史上初の出来事でした。

豊田:いきなりミスから敵エース・工藤荘人に裏に駆け抜けられる場面がありましたが、リードして以降は高い位置でパスカットしても無理に速攻に持ち込んでカウンターの掛け合いになるような展開を自重していた。あのペースメイクと戦術は安定感を感じさせてくれました。確かに失点場面はルーズな部分があり、先行したゲームに救われた印象もありますが……。周囲のレイソルファンの声は「興梠と一緒だと原口(の突破力)がハンパない。倍返しの反撃が来そう」というもの。試合運びの中で終盤にピークを持って行ける効率的なボール保持と、得点に直結する個のパワーを生かした速攻が使いこなせて来たと思います。

椛沢:試合後には、レッズサポーターから「Jリーグ成人おめでとう。頭は赤ちゃんのままだね」「世界基準からかけ離れた2ステージ制 そこに日本サッカーの未来はあるの?」という皮肉たっぷりのメッセージが掲出されました。最近、Jリーグ理事会で議題にあがっている、来季の2ステージ制導入の是非についてのレッズサポーターからのアンサー幕でした。個人的にも2ステージ導入の話題が出ること自体が安易だと思います。優勝チームを増やす。チャンピオンシップで話題を作る。それで多少の人気が得られるのかもしれませんが、反面、勝ち点を多くとっても優勝が出来ない。降格チームもどのように決めるのかという問題が出てきて、リーグ戦34試合の価値が少しずつ削り取られてしまう。リーグ戦を戦うという文化を育てないで、日本サッカーが世界基準を目指せるのか、はなはだ疑問です。システムを安易に変える前にもっと地道にJリーグ、各クラブがやらなければいけないことはあるのではないでしょうか。日本代表が注目される中で、Jリーグがサブカルチャー的な扱いを受ける状態になっていることは、確かですが。それが必ずしも悪いことではないし、地域が支える構造の中で、サッカー文化が芽生えていくためにはどうするべきかを考える方が重要なのではないでしょうか。2ステージ制の考えは、文化を育てる方向からは逸脱しているように思います。

豊田:このゲームでもホーム側では「アフラックデー」と称した黄色の応援ベストの配布が行なわれていました。中立の東京住まいのサッカーファンと思しき人たちからは「こうやってレッズに対抗するのは柏サポ的には悔しいだろう」「スポンサーもほかに予算の使い方があるのでは?」という声が聞こえていた。まあURAWAもクラブとホームタウンの連携には課題を抱え続けており、他所のことは言えませんが……。現状での2ステージ制というのは、ビジネス・モデルとしてJを扱うカラーが強いように見えます。どの国を見ても1年間でリーグ戦を戦うせめぎあいからフットボールは醸成されているわけで、根底にかかわるシステムとカレンダーがホームタウンサイドとの意思疎通なく進められているとしたら違和感は拭えませんね。

椛沢:明日、水曜日はベガルタ仙台戦です。ACLの関係で日程がずれての開催になります。この試合を終えると約1ヶ月の中断期間に入り、レッズは北海道で合宿を行う予定です。ホームでしっかりと勝利をして、2位浮上で、大宮との勝ち点差を3にして、追撃体制を整えてから中断機関に入りたいところです。

豊田:2位に上がっても上に大宮ですか(苦笑)。勝点はもちろん内容も見極めたいです。平日ナイターですが、皆で埼玉スタジアムに集まりましょう。

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