浦和フットボール通信

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河合貴子のレッズ魂ここにあり!「輝く未来へ突き進め!(前編)~山田直輝選手」

J開幕から浦和レッズを追いかけ、ケーブルテレビのパーソナティなどで活躍をしている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。

”浦和のハート”山田直輝、復帰までのエピソード

試合後の夜は、精神的な高ぶりがあるために、選手達はなかなか寝付けないという話を聞いた事があった。試合を取材している私の場合は、布団の中に入って横になると、頭の中でキックオフの笛が鳴り響き、取材した試合が頭の中で始まり、自分が気になるシーンが繰り返し流れ、特にゴールシーンなどは何度も再生されて寝付けないでいる。

5月26日の柏戦の夜もそうであった。西日が差しこみ始めた国立競技場のピッチが頭の中で映像となって浮かび上がり試合が始まった。だが、いつもとこの夜は違っていたのだ。頭の中の映像は、国立競技場だったはずなのに、どういう訳か途中から大原の練習場に変わっていた。そして、大原のピッチで山田直輝選手が、永田拓也選手達と嬉しそうにミニゲームに参加していたのだ。何処で『夢』に変わったかは分からないが、山田直輝選手が完全合流した『夢』を見たのだ。目が覚めると頭の中は山田直輝選手が両手を振ってニコニコと嬉しそうに大行進している。

ひょっとしたら、山田直輝選手がミニゲームに初参加するのではないか?そんな予感がし、大原の練習場に行かないといけない強迫観念に駆られた。そして、はやる気持ちを抑えて大原に出向くと、我が目を疑った。『夢』で見たのと同じ光景が繰り広げられていたのだ。

ミニゲームで子犬のようにボールを我武者羅に追いかける山田直輝選手は、サッカーが出来る喜びを噛みしめていた。さすがに体力が持たなかったようで、山田直輝選手は「ダメだぁ」と途中でミニゲームを抜けてピッチの横で大の字になって寝転がってしまった。山田直輝選手のプレーを優しい眼差しで見つめていたミシャ監督は「ナオキ!ブラボー!」と拍手を送り、優しく抱きしめて、今までの労をねぎらうように背中を叩いた。

「北海道合宿に向けて、みんなとサッカーが出来て良かった。僕が一番嬉しいと思う。みんなとボール蹴って楽しかった」と山田直輝選手は満面の笑みを浮かべた。左膝前十字靱帯損傷して、約1年2カ月ぶりのミニゲームでの対人プレーであった。

怪我をして以来、初めてスパイクを履いたのは、4月7日のことであった。鈴木啓太選手が「直輝がスパイクを履いたぞ!」と歓声を上げると、少し照れながらうつむき加減に山田直輝選手は、芝生の感触を嬉しそうに確かめていた。そして、スパイクが履けるようになると、徐々にやれる事が増えて行き、身体の動きが良くなっていったのだ。

しばらくすると「スパイク履いてから、早くないですか?!順調でしょ?!」と状態を確認するかのように、山田直輝選手が尋ねて来た。「良い感じだね!でも、リハビリは一進一退だからね。焦らないでね」と私は釘をさしたが、山田直輝選手の状態は目を見張るものがあった。そして、山田直輝選手は「合宿からゲームに合流したい」と関ドクターと話していて、膝の状態を確認するためにはこの日しか無く、「今日、やりたいです(ミニゲームを)」と関ドクターに直訴し、「無理しないぐらいなら」と承諾を得てのミニゲーム参加であった。スパイクを履けるようになってから、ちょうど50日目の出来事だった。

「怪我する前に、上手くサボる事を覚えないといけないなぁ・・・と思っていて、怪我してしまい。久しぶりに(ゲーム形式)やったら、今迄のプレースタイルで・・・。何処にどう動いて良いか?分からず、結果的に走り廻っていた。ミスが多いが、気にする段階では無い。あんなにバテルと思ってなかった。ブランクは大きい」と山田直輝選手は話しながらも笑みが零れた。孤独との闘いだったリハビリから解き放たれ、仲間とサッカーを出来る喜びを感じていた。

「リハビリは自分本位。相手が、裏を走る度に着いて行くのは辛かった。走らないでくれ!って何回も思った。サッカーは、味方と敵がいるんだなぁ・・・と感じた。やっぱり、その駆け引きは楽しいね」と山田直輝選手は話した。

サッカーの喜びを感じている山田直輝選手と話していると、私の方も嬉しくなって来て、見た夢の話を伝えると、「正夢じゃないですか!長年の勘ですか?練習試合を楽しみにしてるって言っていたから、これ(初ミニゲーム)は良いのかなぁって思ってた。良く見に来てくれた!」と驚き「たか姉!今度、試合に出る夢を見てよ」と懇願するので「いやぁ~たぶん当分は見ないね」と言いながら、お互い顔を見ながら笑った。山田直輝選手の笑顔と共に、爽やかな初夏の風が大原に吹いた。時の流れを感じる風であった。

漸く、サッカーが出来るスタートラインに山田直輝選手は立ったのだ。

<あのOB選手が勇気付けていた・・・後編へ続く>

Q.まず「R」のREST、安静について

A.打撲、捻挫、そして骨折などの怪我をすると、傷んだ部位を動かすと強い痛みが発生します。安静にすることで痛みが緩和します。また傷んだ部位を動かすと出血が止まりにくくなりますので、安静は止血処置としても重要です。また怪我をすると必ず炎症が起き、組織にむくみが発生し腫れます。動かすと炎症が増強しますので、腫れを抑制するためには安静が重要です。

川久保誠 profile

1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。
川久保整形外科クリニック
整形外科・スポーツ整形・リュウマチ科・リハビリテーション
http://www.kawakubo-clinic.jp/

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