浦和フットボール通信

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URAWA TOWN MEETING006 橋本光夫 浦和レッズ代表(1)Jリーグの成長戦略について

2012シーズンに引き続き、浦和タウンミーティングでは、クラブと街、ファン・サポーターが膝をつけわせてコミュニケーションする場を提供していく。2013シーズン最初となる第6回は、2013シーズンが開幕して数試合を経過。ここまでを振り返りつつ、2013シーズンの浦和レッズの取り組みについて、新たな5期目を迎えた、橋本代表をお招きして、さまざまなテーマについてお話をお伺いした。まずは、今話題の2ステージ移行の問題から話は進んだ。

■ゲスト:橋本光夫代表 畑中隆一事業本部長、松本浩明広報部長
■司会:椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)、豊田充穂

■日時:6月14日(金)19:30~22:00
■場所:酒蔵力 浦和本店

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椛沢:まずは、今一番注目されている話題からお話を聞きたいと思います。Jリーグの2ステージ制移行についてです。橋本代表は反対のお立場を取られているとお聞きしますが、この話題については、どのような流れになっているのでしょうか。

橋本:まず、基本的な話からさせて頂きますが、Jリーグの色々な企画を決議する機関はJリーグの実行委員会ではなくて、理事会という機関です。そこでJリーグに関する案件が決議されるということになります。その理事会に先立って、各クラブの代表が集まる実行委員会があり、理事会に上程する中身を議論するというプロセスになっています。Jリーグの今後を見越して、どのようなことをやらなければいけないかという話については、これとは別に新たな審議機関を設けて議論をしてきました。そこが戦略会議です。戦略会議が出来た発端には、シーズン移行の話がありました。今議論されている案件は二つで、シーズンを移行するという話と1シーズンの大会方式の見直しという話をしています。新聞紙上では、後者については2ステージ制への移行という話が上がっていますが、厳密には2ステージが良いのか、日本の東西を分けた地区の大会をやってから、次の決勝トーナメントをやったほうが良いのか。色々な方法で、アメリカのメジャーリーグ、バスケットボールのやり方、サッカーでもヨーロッパでやっている1ステージのやり方、2ステージのやり方や、クライマックスシリーズのようなやり方など、色々なことを含めて大会方式をどう変えたら良いのかという議論をしているわけです。

椛沢:なるほど。シーズン移行については、大方合意を得たという報道もされています。

橋本:シーズンの見直しは実行委員会で、決議がされて、それぞれのクラブが合意したという形で、理事会に上程をします。理事会で決議がされたら、Jリーグの決議事項という扱いになります。現在の3月開幕、12月閉幕という形を変更して、7月末頃開幕、5月閉幕というヨーロッパのシーズンにあわせてシーズン移行をしたらどうかという話をしています。カレンダーの日程を考える上でどうか、フットボールのメリット、チーム強化のメリットはあるのかどうかなどです。日本代表の強化にどう繋がるかという話や、アカデミーの育成のためにはどういったことが良いのかという議論もしています。この検討が開始された背景はふたつあって、ひとつは、今のヨーロッパのシーズンにあわせて、2018年までのFIFAのインターナショナルマッチデーが決定されていることです。来年以降10月、11月にJリーグが開催できないインターナショナルマッチデーが2018年まで続く状況になります。今のシーズンのままで行くとJリーグの一番盛り上がる終盤戦に月に1試合か2試合しか開催できない事態になりますし、代表を選出する際に難しいという問題から、ここを見直したほうが良いということで、ほとんどのクラブが納得をしています。もうひとつはAFCでもヨーロッパに合わせる形で、今のACLの日程を変えたほうが良いという声がかなり前から挙がっています。特にヨーロッパに近い西側の国は、そこに合わせるべきだと話しています。日程を変えると、今のJリーグの終盤の10月から12月にかけて、ACLのグループリーグの第6戦やベスト16を戦うことになり、Jリーグの優勝を争うクラブがACLにも出ていたら日程的に成り立たないということになるため、今のヨーロッパの日程に移行したほうが良いという話になっています。ただ、ヨーロッパと違って、1月は日本でサッカーをするのは難しい。2月も基本的にJリーグが開幕をしていない。12月は第1週で終わっているということを考えるとシーズンを移行するとしてもある程度ウィンターブレイクを設けないといけない。ただ、今、シーズンオフになっているところをウィンターブレイクにすると、シーズンが極めて限られた月数になり、超過密日程になってくるので12月の第3週までやるとか、2月は第3週、4週で全国で試合を開催できるような環境にならないと難しい。それはスタジアムだけではなく練習場も含めて、降雪地域を中心とした色々な設備の改善が必要です。そのためには時間も必要です。その方がサッカーが出来る期間が広がるという意味でもJの理念に合致する方向のはずだから、それを今から積極的にJリーグと日本サッカー協会が協力をして、各都道府県に協力要請を仰いでいきましょうという話を決めました。これについてはほとんどのクラブが反対のない形で理事会に上程をする形になりました。

椛沢:大会方式の見直しについては、どのような議論がされているのでしょうか。

橋本:もうひとつの大会方式の見直しについて話をします。ここ数年間Jリーグとして総入場者は厳しい状況が続いています。Jリーグ全体が稼いでいる収入の合計の金額をみてもクラブの数は40クラブまで増えましたが、全体としては厳しい状況です。Jリーグ全体が厳しい中で、私も意識をしているし、レッズのクラブスタッフにも言い続けているのは、全体の収入が落ちている中で、大きく影響しているのはレッズが落ちているということです。リーグ全体として危機感を持っていて、どうやってJの魅力を高めるかという議論になっています。地上波のテレビ放映の量がかなり減っています。視聴率が取れないので、スポンサーがつかない。それはJリーグの魅力が落ちているからだと考えると、どのようにしてJリーグの魅力を上げるかは重要なテーマだと思います。

椛沢:その中での大会方式見直しという議論が出ているということでしょうか。

橋本:全体として右肩上がりにするためにはどうしたらよいのかということに関しては、ひとつはサッカーの試合の魅力を高めることがあります。そのためには良い選手がJリーグでプレーをして欲しい。Jリーグ草創期に比べてヨーロッパや南米の著名な選手がプレーをする機会が減っていますし、ここをひとつの起爆剤として選手を集めるというアイデアもあります。もうひとつはスタジアムに来て、もう一回リピーターとしてまた来ようと言ってもらえるホスピタリティーをしっかりと改善しないといけないという考えもあります。浦和レッズは埼玉スタジアムという大きなスタジアムを使用できるという大きなアドバンテージを持っています。どうやって試合を見に来てもらえる魅力あるチームをつくれるかという課題に力を注がなければなりません。魅力的なチームをつくる、選手をつくるためには資金も必要です。20年前にJリーグにきてくれた外国人選手の報酬と今、一流の外国人選手を招いた時の報酬を比べると金額が変わってきているのも事実ですので、その原資をどう稼ぐのかというのが大事な話になってきます。シーズンの大会方式を見直しは、この資金を産むと同時に全国放送がなされ露出が拡大するという効果が期待されます。それは、リーグやクラブの経営的な見方をすると魅力的な話になります。

椛沢:その中で、橋本代表は、そのような意見をお持ちなのでしょうか。

橋本:私が会議で言っているのは、日本サッカー協会は2015年には世界のトップ10を目指すという旗印を掲げています。世界のベスト50の国がどういう大会方式でやっているのかを見てみるとバラバラです。トップ10という見方をすると、1ステージ制がほとんどです。そのメリットがあるんでしょうね。2004年まではJリーグも2ステージ制を敷いていて、あるクラブでは年間の総勝ち点だったら優勝しているのに、前後期もチャンピオンになれなかったようなことがあった。前後期とも同じチームが優勝をしてしまって、決定戦を開催する意味がなくなるシーズンになる恐れもある。当時はチャンピオンシップをホーム&アウェイでやって、横浜、埼玉で6万人位が集まってすごかったけれども、これからホーム&アウェイでやれる日程の余裕があるのか。Jリーグの後に、そのような試合をするということは、年間34試合以外にもあと何試合かが必要になってきて、日程面でそれが可能なのか。降雪地帯を考えると日程を広げることにリスクがある中で、そこに安易に踏み込んで良いのか。ホーム&アウェイの公平性が少なくなるとか、盛り上がる可能性もあるかもしれないけれどもマイナス要因はないのか。色々なことを考えないといけない。今までは34試合を通じて、チームがどう成長するかという見方をして、最初のところから、中盤・終盤まで粘り強く皆さんが応援してくれているけれども、2ステージになり、早い段階でこれは難しいとなってしまったら、全体を通じて観客が増えるのか。経営が本当にうまくできるようになるのか。収入は永続的なものになるのか。ある年、優勝をして、良い選手を獲ってみたら、翌年だめだったということになると、Jリーグの経営そのものが破綻することにならないかと。そのあたりの議論をしっかりとした上でやらないと安易に賛成は出来ませんというスタンスをとっています。Jリーグが始まったときは10クラブで、今はJ1、J2合わせて40クラブになって、来年はJ3が出来ます。Jリーグ全体では100クラブになることを目指しています。Jリーグ全体がテレビ放映権などをまとめて、Jクラブに一律に分配するやりをとってきているので、全体の収入が同じだと、クラブの数が増えると各クラブに分配される額が減っているのも事実です

椛沢:スタジアムに来ている、サポーターがどう思っているのか把握をしているのでしょうか。私が知る限りでも、ほとんどのサポーターが2ステージ制について反対の気持ちを持っている中で、その声を聞かないまま議論がなされているのも違和感があると感じています。

橋本:会議の中で力説していることでもあるのですが、ずっと右肩上がりの入場者数をキープできるようにするためには、今来ていないサポーターを増やす必要があると思うんですね。それを増やさない限りは絶対に上がらない。その人たちに興味をもってもらえるやり方に取り組んでいかなければならない。ただ、私は、今まで来てくれている人たちが来てくれることが前提で新しい人が増えれば、トータルが増えるという発信をしていますし、他クラブの社長もそのような発言をしてくれています。リーグ全体としてもコアなサポーターから賛同が得られにくいという認識は持っていると思いますが、今何かを踏み出さなければ、いけないという思いが強いのも事実です。

椛沢:ぜひ、橋本代表にはサポーターの声も会議で生かしてもらいたいと思います。

橋本:私はJリーグのプロセスを考える理事会の理事のひとりでもあって、戦略会議のメンバーでもあります。他のクラブの社長もいますけども、そこで議論をしていて、100%合意しなくても話が決まるプロセスがあっても良いとは思っていますから、私は最後まで反対し続ける人がいてもおかしくはないだろうなと考えています。そのような議論をどんどんしていかないといけないと思います。

(その2に続く)

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