浦和フットボール通信

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URAWA TOWN MEETING006「2013シーズン前半戦を振り返って。今シーズンの取り組みなどについて。」

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クラブとファン・サポーター、街の人々が膝をつき合わせて語る場として作られた「URAWA TOWN MEETING」。今季初となった開催では、2013年シーズン前半戦を終えて、レッズ史上最長の5期目の任期を迎えた橋本光夫代表をお迎えして、ここまでのクラブ、チームの状況。将来に向けたビジョンについてお伺いをした。

■ゲスト:橋本光夫代表 畑中隆一事業本部長、松本浩明広報部長
■司会:椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)、豊田充穂
▼日時:6月14日(金)19時半~22時
▼場所:酒蔵力 浦和本店

2013シーズン序盤戦を振り返って

椛沢:ここまでのトップチームについての印象をお聞かせ願えますでしょうか。

橋本:まずACLにおいて、予選リーグを勝ち上がれなかったのが残念です。ACLの最終戦が終わった後にミシャ監督とは、来年もACL出場を目指し残されたリーグ戦をしっかりと闘おうという話をしました。監督も予選を突破出来なかったことを非常に残念がっていました。リーグ戦においては、ダービーマッチの大宮戦と、ワンチャンスを決められてしまった清水戦に関しては決して満足はしていませんが、昨年からミシャ監督の下で積み上げてきたことを継続し、新加入の選手もフィットし、チームが非常に良い雰囲気の下で、レベルアップをしようと意欲的に練習に取り組み、試合に臨んでくれていると感じています。今後もより上を目指してやっていきます。

椛沢:中断期間では、外国籍選手を含めた補強などについての考えはないのでしょうか。

橋本:色々な人からその質問を受けます。私も強化のスタッフと話をしてきています。今季、新たに5人の選手補強を行いました。それぞれの選手が持ち味を発揮し、チームに早いタイミングで馴染み、良いパフォーマンスを見せてくれていると評価をしています。それは監督の指導に感謝していると同時に、個々の選手がこのチームでなんとか頑張ろうと思ってくれている結果だと思っています。彼らのモチベーションを落とさないようにやっていくことが重要だと考えています。100%満足はしていませんが、期待しているレベルに近い今の状態で、新たな補強は考えなくて良いと思っています。

椛沢:先ほど、橋本代表がお話されたように、好調の中でも大宮アルディージャに負けたことは多くのサポーターも悔しさを感じていると思います。10月5日がホーム埼玉スタジアムに大宮を迎えての、今季2度目のさいたまダービーがあります。改めてダービーへの意気込みをお聞かせ頂ければと思います。

橋本:勝ちたい!それだけです。

ユース、ジュニアユース、ジュニア、レディースについて

椛沢:続いてはユース、ジュニアユース、レディースについてもお伺いをしたいと思います。

橋本:まずは、ユースについては、昨年苦戦をしました。そのために今年は、男子の育成部分については、監督、コーチの役割分担の見直しを行いました。具体的には以前もレッズのコーチを務め、その後トップチームも見ながらユースの状況も見てくれていた強化部の大槻毅君にユースの監督を兼ねる形で、育成全体をマネジメントするダイレクターをやってもらうことにしました。去年までは、各年代ごとに担当コーチがその選手たちを指導する形をとっていて、各年代でそれぞれの指導者が育成方針の大枠に沿いながらも、独自の指導を行っていました。そこに育成全体の方針をより意識する形、またトップチームのサッカーに即した人材を育てるという意識を持って、全体をオーガナイズする形にしました。
実際には北海道キャンプでもユースから高校一年生も含めて3人が一緒に参加していますし、その中で一年生の選手がよい活躍をしていて将来が楽しみだという話も出ました。現時点で、これまでよりもさらに良い形で進んでいると認識しています。

椛沢:小学生年代のジュニアチームも今年から始動をしました。

橋本:ジュニアについては、レッズが浦和に出来てから、少年団の指導者の皆さんと話を重ね、これまでレッズとしてはジュニア世代を持たないということにしてきました。しかし、過去2年間で旧浦和市内の小学6年生を中心にレッズのコーチが指導するレッズジュニアアカデミーを大原サッカー場で開催していたこともあり、そうした活動の中で、少年団の指導者の皆さんから評価して頂いたという認識を持っています。レッズもジュニアチームを作り、全国大会への出場を目指して活動して欲しいという要望もあるなど、そうした流れからジュニアのチームを持つことを決め、現在に至っています。
また、ジュニアを持たなかったために、浦和や埼玉南部の子供たちが、Jリーグの下部組織である柏や大宮、FC東京に所属してしまって、良い選手の獲得機会を逸していたという側面もありますから、そうした部分を改善したいという思いもあります。今季から始動したばかりですが、非常に頑張ってくれていると思います。

椛沢:今季、非情に苦戦を強いられている、レッズレディースについては、如何でしょうか。

橋本:レディースについては、今季、新しい監督を迎えた中で、プロ選手を含むベテラン選手の引退や移籍があり、チームが大幅に若返りました。際どい試合をしながらも勝ちきれない試合が続いて、苦戦している状況です。私は浦和レッズレディースというチームの役割が何かをもう一度考えなければいけないと考えているのですが、それは、このサッカーが盛んな浦和という街で、女子のサッカーもしっかりと普及させ、女子もサッカーがやれる場所を提供していく、つまりより広い部分でのサッカー文化の普及、そして女子サッカーの歴史をつないでいくということだと考えています。そのためにもチームが良い結果を残していかなければいけませんが、女子サッカーに対する日本全体の考え方、注目のされ方も変わってきているので、そのあたりを考慮して、我々もサポートしていくことが大切だと考えています。先日、埼玉県サッカー協会からジュニアユースチームの全国大会5連覇に対して「功労賞」を頂ました。将来性ある選手たちを数多く抱えていることを併せてご報告いたします。

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最長任期の代表となった橋本代表が見据える将来ビジョン

椛沢:橋本代表は4月の株主総会で5期目になり、浦和レッズ史上、最長任期を務める代表です。過去のURAWA TOWN MEETINGでも、様々な思いを伝えて来て頂いていますが、改めて浦和レッズをどのようなクラブにしていきたいと思っているか、お伝え頂ければと思います。

橋本:昨年、浦和レッズ創設20年の記念の年を迎えましたが、そこでクラブとしては3ヵ年の中期計画を立てました。今年はその2年目で来年が3ヵ年の最後の年になります。以前、藤口社長の時にトリプルAプランというものを立てて取り組んだ内容と考え方としては大きく変わってはいません。大きな3つの柱からレッズを発展させていくということで、一つは魅力的なサッカーを見せるチームをしっかりと作る。その中にはトップチームだけではなくて、育成も含めた一環したサッカーというものが含まれます。
もうひとつはJの理念である地域密着。地域の皆さんから誇りに思ってもらえる活動をする。それはハートフルの活動やレディースもその活動に近いものかもしれません。このタウンミーティングもそうしたものだと認識していますし、色々な活動をより発展成長させていきたいと考えています。
具体的には、浦和の中で、「Jの理念を実現する市民の会」という団体が立ち上がり、川淵三郎キャプテンの講演会などを開催していますね。そうした会を作りたいという相談を数ヶ月前から受けていたのですが、そのような会は皆さんにオープンにやりましょうと伝え、レッズからは畑中事業本部長に参加するよう指示しました。色々な形でレッズとしても積極的に協力させてもらうという話をしています。そのような活動を通じて、我々だけではなくてこの街に住んでいる方たちと一緒になって、行政などにも働きかける場を作りたいとも考えています。三つ目は、プロの興行を営む、浦和レッズは会社であり、安易に潰すわけにいかない存在ですから、安定した経営ができるようにしていかなければなりません。ですから、我々の短期の目標は、2010年度に2.6億という大幅な赤字を出した部分を挽回していくことです。しかし、当然その流れの中では、さらに成長をして、自らが資金を稼ぎ、さらによい選手を集めて、強いチームを作るということも含まれていますし、その部分は対立するものではないと考えています。

椛沢:ミシャ監督が2年目ということで、強化の中長期視点では、どのようなチームにしていきたいと思っているのでしょうか。

橋本:監督の契約期間は約1年でしたが、短期のつもりでミシャさんにお願いしたつもりはありませんでした。シーズンが終わって、腰を手術してもらい、今の状態まで回復しています。それを嬉しく思っていますし、これからもしっかりとサポートしていきたいと考えています。これは私個人の思いだけではなく、クラブスタッフ全員の思いであるということをお伝えしたいです。一人の立派な監督の下で、長期にわたって、選手の補強をしながら続けていくという覚悟でいるということをお話させて頂きます。

豊田:ミシャ監督体制で、一定の成績を収めている。橋本代表としての評価としても成果が出ているという話がありましたが、もう一度、橋本代表の評価をお聞きしたい。それは戦術がどうという話ではなくて、クラブ内部において組織の主要幹部としてのミシャはどこが優れているとお考えですか。

橋本:たとえば私だけではなく、どのクラブスタッフともしっかりとコミュニケーションをとれるというのが素晴らしい所だと考えています。大原サッカー場では、毎日洗濯に来てくれている方もいるのですが、その方たちへの声の掛け方、感謝の気持ちをしっかり持つんだということを選手にも伝えてくれています。大原サッカー場の芝のコンディションを保ってくれているのは、あそこにいるメンバーなんだということも伝えてくれますし、そうした人格を持ち合わせているところがミシャさんの最大の長所なのではないかと考えています。

豊田:橋本代表がレッズの代表に就かれてから、コミュニケーションであるとか、クラブの意思の継承、継続というものを一番のテーマとして掲げてこられたと思いますが、ここにきているサポーターの皆さんばかりではなく、多くのサポーターが厳しい視線でクラブを見てもいます。今日もここに来る途中に話しかけられまして、これから橋本代表とミーティングなんだという話をしたら、タウンミーティングで3回も橋本代表に会えるのは快挙なんじゃないかといわれまして、私自身も初めて橋本代表にここでお会いした時に、このようなミーティングを何度出来るかと不安に思ったところもあります。腰を据えてクラブを作るという意味では橋本代表のご苦労もあったと思いますが、サポーターの厳しい意見では、現在の成績はミシャ監督の功績に依存した所が多いのではないか。裏を返せば監督が変わってしまうとまた元に戻るのではないかという疑念があって、それはレッズサポーターが今までの歴史のから感じている部分だと思います。代表の目からご覧になって監督を支えるクラブのシステム、機構、意思統一についてはどのあたりが成長をしてきたか、代表の言葉でお応え頂けますでしょうか。

橋本:全てのスポーツにおいて監督の占めている役割のウェートは非常に高いと思いますし、多くのサポーターの皆さんがチームの好結果に対して監督に高い評価をいただけるのはイコールクラブの評価であるとも言えると思います。監督の力はすごいものだと実感をしていますし、クラブのスタッフやマネジメントの評価ではないんだと言って頂いても良いと思いますが、監督がいなくなった時にどう継続するかは出来ることをやるしかないということです。2011年の状況の中でこれからレッズをどうするかを考えた時に監督を決めるプロセスについても変えました。社長や一部の強化部長が監督を選ぶのではなくて、クラブの各部門のメンバーも含めて皆で喧々諤々議論した中で、監督を決めるプロセスを作りました。ミシャさんに決める時もメディアの追跡を逃れて、クラブに数十人のスタッフが集まって、監督候補者の戦術はどうなのか、実績はどうなのか、特徴的なものは何かということを議論しました。そして最終的に、ミシャさんで行こうということを決めました。このプロセスは今後もそうなるだろうと思います。チームは生き物ですから、クラブが困難な時にどうするかという部分では、しっかりとコミュニケーションをとらないといけません。今も毎週一回幹部のスタッフが集まり、チームやクラブの状況を共有して進むべき方向を確認し、タイムリーに物事を決められるプロセスも採ってきています。そうした仕組みを100%ではないですけれども行ってきていますし、もっと良いやり方があれば採用をしていこうと思っています。

豊田:ホームタウンとクラブの意思疎通と歩み寄りは、橋本代表になってから、緩やかでありながらも確実に進んできていると思っています。橋本代表がお考えになったうえでのプロセスの形で見えてきたものが3ヵ年の中期計画ということだと思いますが、中期計画はクラブをなんとかしようという気持ちが強くあった、その現れだと聞いています。このクラブをなんとかしたいという心情的なものがございましたら、今回の場で一言頂けますでしょうか。

橋本:浦和レッズというクラブはこの20年の中で、様々な面をお見せしてきたと思います。まだ確固たる柱があるかといえば、厳しい状況にあるのも事実でしょう。その中で、このクラブを良くするんだという思いがあります。Jリーグがなかなか難しい状況になっている責任は、浦和レッズにあるんだというくらいの覚悟をもってこのクラブを作っていかないといけないと考えていますし、それはクラブスタッフ全員がその思いで改革に取り組むんだと話をしています。その先頭に立って戦っていきたいと思っています。

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椛沢:それでは最後は、参加者の皆さんとの質疑応答タイムとさせていただきます。

●質疑応答
レッズの観客動員数を右肩上がりにするためには、ビギナーの方を増やすことだと思います。コアな人は暑い思いで毎試合スタジアムにきて応援をしているわけですが、ビギナーに対して敷居が高くなっているのではないかと思っているのですが、クラブとしてビギナーに向けた施策などは行っているのでしょうか。

松本広報部長:具体的な施策としては、オフィシャルサイトで、はじめて観戦ガイドというものをサイト内に開設をしました。お友達を誘う際にも是非活用して頂きたいと思っています。

畑中事業本部長:スタジアム運営の部分では、ファミリー層を呼び込もうということで、昨年を通して、ファミリー層を意識した企画などは考えています。その他、ジュニアのチームが他のチームと練習試合をする時に埼玉スタジアムで試合を行って、試合後に父兄の皆さんとともにコーチも入り、レッズの試合を見てもらって、みんなで見て楽しんでもらうということも行っています。日曜日は子供が多いということも、よく分かりましたので、Jリーグと日程調整の問題がありますけども、我々は日曜開催も視野に入れながらやっていきたいと思います。Jリーグが20年経ち、Jリーグが開幕した頃は、学校は土曜日に授業があったので、夕方に試合を行っていました。そこから土日が休みになり、早い時間に試合を行い、土曜日も少年団の活動をしようという話になったりと、時代時代のサッカーファミリーの活動は変わっているので、我々はサッカーの町・浦和にいるので、その部分を敏感に感じながらどのようにすると皆にとってよりよい形になるのかを考えていかなければならないと思っています。それが浦和レッズだと思いますし、そこだけは常に我々を信じていただきたいです。まだまだ足らないこともありますが、このような場で、こうするともっと良くなるという話もお聞きし、改善していきたいと考えているということも、補足させていただきます。

橋本:昨年からさいたま市教育委員会の協力を得て、ここに座っているスタッフや若いスタッフも含めて、緑区の中学校の一年生の授業に、レッズのスタッフが講師となって授業を行うチャンスを頂いています。内容は、『埼玉サッカー100年の歴史と浦和レッズ』と題し、皆さんが住んでいる街、浦和のサッカーの歴史とあわせて、レッズの歴史も交えて紹介していくというものです。そうした中で、授業の際に緑区に住む中学生に埼玉スタジアムに来たことあるかと聞くと、来たことがない子がいっぱいいるんです。その子供たちに一度埼玉スタジアムの浦和レッズのホームゲームを体験させたいということで、授業の一環としてメインのアッパーのスタンドで試合を体感してもらうという機会も作っています。今年も引き続きさいたま市教育委員会のご支援を頂き、さいたま市内の中学校、一年生を対象に、このような授業と観戦のセットを行う予定です。これは入場者を増やすための施策ではありませんが、子供たちに浦和のサッカーを知って欲しい、住んでいる町の特長を知り、地域に愛着を持ってほしいという思いで行っていて、将来地元にある浦和レッズを応援しようとということに繋がっていけばいいと考えています。

椛沢:最後は、今回、この場所を提供いただいた、株式会社力の神宮寺社長にご挨拶を頂きます。

神宮寺社長:酒を飲むと色々なことが話せる。それがお酒の良さですね。このような場所で、皆さんと話せることが嬉しいです。浦和レッズが出来て21年経ちますが、最初の頃からレッズのサポーターはすごいし、こんな人たちは他にはいないと思っていました。浦和の街をよくするためには、レッズしかない。埼玉を良くするためにはレッズしかない。先日、小樽の町で、おすし屋さんに入ったら、隣に座ったご夫婦が、私にどちらから来たのですかと聞かれまして、私は「浦和レッズだ」と答えたんです。そうしたら、奥さんが「私は浦和レッズのサポーターです」と言われて、すごく嬉しくなりました。さらに表で食べられる焼き鳥屋さんがあるのを知っていますか?と言われたんですね。もう、こんなに嬉しいことはないですよね。そんな北海道での思い出がありました。浦和には、良いサポーターがいます。力のお客さんもいます。そして浦和レッズという素晴らしいチームがあるので、これからもみんなで頑張っていきましょう!

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会は、その後来場者との懇親会タイムを持ち、日が変わるまでレッズについての話を膝を突き合わせて各々の参加者が話し合った。

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