浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトーク Vol.165 (11/13)

仙台に悔しい引き分け。残り3戦、URAWAの総合力が問われる。

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:先週末は、敵地・宮城スタジアムに乗り込んでのベガルタ仙台戦でした。ナビスコ決勝に敗れた直後の試合ということで、踏ん張り所の試合となりました。日曜ナイターのアウェイ戦という悪状況ということもあり、通常よりもアウェイに赴くサポーターの数も多くはありませんでしたが、ホームに負けない声でチームを後押ししていました。試合前には「THE PRIDE OF URAWA」の横断幕を自らのサポーターに向けて掲げて、この試合で俺たちのPRIDE OF URAWAを見せて、試合に挑もうという声がリーダーより掛かり、ゴール裏中心部は夜の仙台に関わらず、上半身裸でのサポートとなりました。この試合への意気込みを見せる。その思いがこもったサポートとなりました。

豊田:TV観戦でしたが、仙台にまで赴いた赤の援軍たちの熱はじゅうぶんに画面に伝わってきました。編集長いう通りの悪条件下でも確実にメディアに存在感を示すサポーティングはこころ強かった。選手にもその心意気はじゅうぶんに伝わっていたと思います。

椛沢:試合は開始早々2分にウィルソンのボレーシュートを山岸がファンブルをしてしまい失点を食らうという苦しい試合の入り方となりました。しかし、選手もゴール裏もすぐに取り返すという空気感はあったと思います。実際に6分に、久しぶりの先発出場となった梅崎が同点ゴールを決めると、31分には興梠が逆転ゴール。この日の仙台はゴール前でそこまでタイトに来なかったということもあり、浦和の攻撃力が存分に発揮されていました。しかし仙台は球際に対して強さが非常に強く、ゴールに向かう推進力に勢いがありました。後半開始早々に同点に追いつかれると、試合は一進一退の展開に。スタンドの熱も帯びる中で、59分についに浦和が勝ち越し。梅崎の右からのグランダーのクロスを興梠が受けると、ディフェンスを背負ったまま、反転をして交わしてゴールに突き刺しました。エースの勝ち越しゴールに燃え上がるスタンド。ここからさらに行くぞという雰囲気がありました。

豊田:DFの集中とタクティクスを固めるという意味においては、ベガルタの守りは直近で対戦しているレイソルやアントラーズに比べて空白があった。そこを適切に狙った攻めの連携ができていたと思います。梅崎司選手は先発出場の好機に応えるゴール前の仕事をこなし、ゴールも決めたし興梠選手のゴールも演出しました。攻守を取り仕切る啓太の欠場を補うイレブンの動きには、勝利の手ごたえをじゅうぶんに感じていたのですが……。

椛沢:仙台に圧力をかけ続けられる中で、浦和もカウンターで応酬をしますが、追加点を奪えず、山田暢久、坪井を入れて守りに入る交代カードをミシャは切りました。これが逆効果だったと思います。ベタ引きに守りに入ると、仙台がより圧力をかけて、最終的にはロスタイムの同点ゴールを奪われる結果となってしまいました。このチームは守りに入って守れるチームではない。選手の中には前からプレッシャーをかける選択を取ったほうが良かったのではないかという声もあったようですが、私も前からプレッシャーをかけて、仙台を押し返すようなサッカーをして欲しかったと思います。勝てば首位に立つという状況の中で、どこかで気持ちが守りに入った部分があるのだと思いますが、残り3試合、攻めの気持ちを貫いて欲しい。それ以外の部分で、勝つのは正直厳しいのではないでしょうか。

豊田:優勝を争う位置にありながら、ミシャはいまだに自軍の勝ちきるパターンを確立できていないと思います。夏場の終盤、FC東京戦や甲府戦にも見られたベンチとイレブンの意思統一が乱れる気配がいまだに払拭できていない部分は気になるというか、最後のアキレス腱になってしまう気がする。でも、見るからに寒気に包まれたアウェイのスタンドを埋める赤い波には、かつて苦しい時代を闘い続けてきたレッズサポーター独特のオーラがあったなあ。これ無くしてはURAWAのタイトル争いはあり得ない、と改めて実感しましたよ。参戦組からは消極的な采配や勝負弱さを嘆く声も当然聞かれましたが、ゆえに私は悲観していません。リーグ戦の残り3試合、この「レッズの切り札」を遺憾なく発揮できる埼スタ・ホーム戦を2ゲーム残している。首位に立つタイミングは先送りになったが、最後に頂点を掴むにはおあつらえ向きな位置に残った……とも言えるのではないでしょうか。

椛沢:残り3試合は、クラブ、チーム、サポーターも含めたクラブの総合力が問われると思います。我々サポーターは、チームを後押しする最大限の雰囲気作りをする。チームが恐れずに戦う雰囲気を無理矢理にでも作る。頂点を掴む努力は、浦和に関わる全ての人間がしないといけません。残り試合、サポーターも戦い抜きましょう。

豊田:ここはサポーターの魅せどころというか、どんな結末に至ろうと最終局面を楽しもうではありませんか。そして「頂点のリーグ戦は、コレがあるから世界で愛され続けているのだよ」というエンディングの醍醐味を満天下に示せたらと思います。

椛沢:ぜひそうありたいです。この31節にはジュビロ磐田のJ2降格も決定しましたね。黄金時代を築いたジュビロが初の降格となります。経営体制を固める中でチーム強化という部分では、育成が御座なりになり長期的視点がなくなった末の結果だとか、監督がコロコロを変わり、継続性が作れなかったなど、様々なクラブ内部での問題があったのではないかと地元メディアも報じています。明日は我が身というか、最近同じような状況を経験している我々としても他人事とは思えない出来事でもあります。豊田さんは黄金期のジュビロの取材を経験していますので、思うところもあるのではないでしょうか。

豊田:2000年当時、アジアのクラブタイトルを総ナメにしたジュビロのクラブ体制を見聞させてもらった身としては、この降格は本当に寂しい……。当時の荒田忠典代表以下、世界に通用するクラブづくりに努力を捧げていたクラブスタッフの方たちの悔しさも如何ばかりかと拝察します。不思議なことに、こういう事態になって改めて磐田広報の方々からかけられた言葉が甦るんですよ。

椛沢:どんな言葉でしょう。

豊田:「レッズがジュビロに追いつく日は必ず来る。遠からず来る」と。当時の私には慰めとしか思えない部分も大きかったのですが(苦笑)事実、彼らの言う通りになりました。そしてそのポイントは「監督交代」とか「補強」とかの月並みな処方箋ではなかった。磐田に圧倒されていたレッズには、ブッフバルトや伸二、エメルソン、トゥットも所属していたのですから……。要はクラブとホームタウンの「双方を繋ぐ意識と体制整備」なのです。だから磐田の凋落ぶりは編集長の指摘通り、とても他人事とは思えない。私たちもこのポイントのケアを注意深く続けて行かなくてはなりません。

椛沢:関わる全ての人が、目指す方向を一致させて、そこに向かって努力する力というものの重要さを、我々もこの数年間で感じてきました。何かをハリボテ的に増強しても本当の強さは作れない。そこが崩れると簡単に瓦解をしてしまう怖さも体験しているので、磐田はそんな側面もあったのではないかと感じてしまいますね。さて、今週はAマッチデーでリーグ戦はお休み。来週のホーム川崎戦までつかの間の中断期間に入ります。今週末の日曜日には埼玉スタジアムで、高校サッカー埼玉県大会の決勝が行われます。決勝は、武南を破って決勝の舞台に上り詰めた、市立浦和高校と、昨年の優勝校、正智深谷高校との一戦となります。伝統の市立浦和か、新興勢力の正智深谷か、非常に楽しみな一戦になります。

豊田:市立浦和は西武台、武南と、全国に名を馳せた強豪私立に競り勝ってのファイナル進出です。両ゲームとも観戦しましたが、高校サッカー特有のチャレンジャースタンスを上手くゲームに生かしている印象を受けました。しかし決勝はさすがに雰囲気は変わるし、相手の正智深谷は場なれもしている。本当に興味深い一戦になりそうです。

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