浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトーク Vol.172 (1/10)

チームの未来をどう描いていくかを考える

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椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:あけましておめでとうございます。本年も宜しくお願い致します。

豊田:市立浦和高校の駒場敗戦の悔しさを引きずっている豊田です。今年もよろしくお願いします。編集長、高校選手権の全力取材、ご苦労様でした。

椛沢:市立浦和の敗戦、残念でした。「攻めて勝つ」を標榜して戦い、2回戦は初芝橋本を3-2で破り、3回戦の富山第一戦で、2-3で敗れてしまいました。富山第一戦では前半で3点をリードされる苦しい展開でしたが、2点を返して諦めないで戦う姿勢を最後まで見せてくれました。市高のホーム『駒場』はすごい盛り上がりで、試合後も選手達の奮闘に労いの拍手が起きていました。正月からサッカーの素晴らしさを感じることが出来た取材でした。詳しいレポートはWEBにてご覧頂ければと思います。
さて、年が明けて浦和レッズの始動も15日からと新しいチームのスタートが迫ってきました。選手の加入情報なども続々と発表されており、広島から日本代表GKの西川周作選手の獲得が発表されました。そして、現在イングランドプレミアリーグに所属する李忠成選手も獲得間近という報道がされています。代表クラスの選手補強ではあるのですが、ここまでの『広島化』については賛否両論巻き起こっているかと思います。

豊田:代表への公開インタビューまで担当させてもらったメディアの責任として印象を言いますが、補強に関するビジョンとコネクションの基本軸に大きな偏りを感じます。それに対するクラブの説明責任も曖昧と思う。それも当然でしょうね。年末年始に取材にかかわる方たちにも会いましたが、「ミシャ次第でチームも未来も決まって行く体制なのか」という疑問の声が聞かれました。新年早々からこういうエピソードはあまり言いたくないのですが(苦笑)。

椛沢:そのタウンミーティングでは、橋本代表はこの件については、将来的にユース、学校を卒業して入団する生え抜き選手で固めるチームを作ることが理想としながら、現在指揮を採るミシャ監督のサポートを如何にするかと考えた時の選択として現在の補強を行っているという話をされていました。ミシャが抜けたら、現有戦力を活かせるのかというテーマもあえて提示しましたが、ミシャでの継続ということについてクラブは、覚悟は持っているような所もあると感じました。その先の継続性については、重要課題としながら、まだ模索中というところが正直な所ではないでしょうか。

豊田:模索中との回答を得たことは事実であり、レッズの未来指針である件の3本柱を復唱してもらったことは来場の皆さんと聞いた通りです。しかしそのテーマに対して組織内にどのような改革を行うかについては、残念ながら具体案はほとんど回答が得られなかったというのが実情ではないでしょうか。詳細は本誌WEB版のタウンミーティング・レポートを読んでいただきたいのですが、従来はそういった舞台設定さえ『トークオントゥギャザー』しか存在しなかったわけですし。

椛沢:ミシャ監督に信頼を置いて継続的なチーム作りを行っている段階という状況は理解が出来ましたが、その先のクラブとしてどのようなビジョンを持ってサッカーを継続させていくのかということに関しては、まだまだ不安な部分があります。トップチームの強化だけに関わらず、アカデミー年代からの育成において、どのようなビジョンを持ってチームを作っていくのか、これをある程度は、示すことが出来なければ、現状に対して信任を受けることが出来ないのではないでしょうか。
さらにスタメン固定化と言われる中で、若手選手は続々と他チームへのレンタルが発表されました。昨年からレンタルで活躍している岡本拓也選手は長崎にレンタル延長。野崎雅也選手は福岡へ。大谷幸輝選手は北九州へ。小島秀仁選手は徳島へ。そして千葉にレンタルしていた高橋峻希選手は、神戸へ完全移籍となりました。高円宮優勝メンバーの一人が、チームを去ることになりました。これはなんとも言えない悲しみを受けます。

豊田:高橋峻希君をはじめとするユースメンバーが高円宮制覇を果たした2008年は、トップチームがアジアを制覇した翌年です。アジア王者のイレブンはロブソン・ポンテやワシントンを軸にはしていた。ゆえに「ここは彼らレベルの補強が必要」という意見も分かるのですが、何より見落とせないのは当時のフォーメーション要所には鈴木啓太、長谷部誠、堀之内聖といった「レッズが育てた人材」がキッチリと配備されていたことです。こういうクラブとしての重要なキャリア部分を、現体制の幹部はどうとらえ、どう扱う方針なのかということでしょう。

椛沢:クラブのキャラクターを作る軸となる選手は、自前の選手が育ってくる。これはスター選手を揃える、ヨーロッパのビッククラブでも、そのような考えがあると聞きます。その意味では2006年は大型補強をしつつも軸となる選手はオリジナルの選手で、良いバランスを保てていました。現状の歪みは、それ以降のフィンケ体制頓挫の反動が来ているのが現状なのかという感じを受けます。フィンケ監督は、若手を重用してチーム作りを推し進めたものの、道半ばにして退任。ゼリコ・ペトロヴィッチ監督でドン底まで落ちたチーム状況から、チームの再整備、勝つことにシフトしたチームが、ミシャ体制なのではないかと思います。ミシャが目指すサッカーを推し進めるための選手を揃えることはチーム作りとしてはセオリーだとは思います。しかしレッズオリジナリティを奪いながらのチーム作りは、勝たなければ認められない状況を作り出しているような気もします。結果を目指しながら、その裏で揺ぎ無いレッズのサッカー哲学を作ることが大事なのかもしれません。

豊田:そのシナリオを実践して行くためには、サポーターや支持者への理解を得る筋道を橋本代表以下の幹部は拓かなくてはならない責任を負うと思います。唱えられている「3年計画」が結実しなかった場合のダメージは小さくないのですから。とりわけジュニア発足以来のアカデミーへの注目が高まっている現在、地元指導者との連携部分は早々に「具体策の提示」が急務でしょう。山田直輝君と同じく地元少年団OBで世代別日本代表のレギュラーでもあった峻希君の完全移籍は、大きな意味を持ってURAWAに波及しているということです。その意味で、本誌が主催する次回のタウンミーティングは大切な催しとなると思います。

椛沢:次回のタウンミーティングでは、この辺りのレッズの育成について、地元の育成指導者を交えた、交流の場を設定したいと思います。

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