浦和フットボール通信

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河合貴子のレッズ魂ここにあり!「最後の笛が鳴るまで」

J開幕から浦和レッズを追いかけ、ケーブルテレビのパーソナティなどで活躍をしている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。

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山岸の執念のゴールが教えてくれたもの

すくい上げた水のように、淡く、はかなく、手から零れて消えて行く『優勝』と言う二文字。それでも、手の平に残った僅かな水滴を見つめて「ゼロではない」と両手を強く握って、折れそうな心を奮い立たせて顔を洗った。自力優勝が消えた翌朝のことだった。

11月22日、G大阪との頂上決戦に敗れ、ホームで優勝を決めることが出来なかったが、勝ち点2差で首位に立っていた。浦和が優位であることには、その時点では変わらなかった。

正確には、鳥栖戦試合終了の10秒前までは・・・。

アディショナルタイム、藤田直之選手の左CKから小林久晃選手のヘディングシュートがゴールに吸い込まれた。「何が起こるか分からない」フットボールの恐さと現実を突きつけられた瞬間であった。

あと1歩の所で勝ち点3を逃し、G大阪に首位を明け渡すこととなった。最終戦までもつれ込んだ『優勝』争いは、G大阪、浦和、鹿島の三つ巴となった。

だが、世間一般的な下馬評は、悔しいが今シーズンホームで未勝利の徳島と対するG大阪が優位と言われている。

何事も諦めることは、簡単なことである。しかし、諦めた時点で全てが終わる。諦めた時点で試合は終わるのだ。諦めずに勝利を目指して闘い、ピッチで夢を繋いだ男がいた。今年6月に浦和から山形へレンタル移籍した山岸範宏選手である。

J2プレーオフの磐田対山形戦のアディショナルタイムで、山形を愛する人々の魂が籠ったヘディングシュートを決め、J1昇格への夢を繋ぎとめた。山岸選手が、浦和に在籍した時ですらあんな凄いヘディングシュートは、見たことがなかった。

勝利に拘り、J1にチームを昇格させるための執念のゴールであった。最後の望みを掛けた山岸選手にフットボールの神様が、微笑んでいた。

梅崎司選手は「何が起こるか分からないのが、フットボール。鳥栖戦の逆だってある。ギシさん(山岸選手)が、この間の試合で見せてくれた。まだ、優勝だって分からない。ただ、自分たちが力を出し切らないと始まらない。後悔をしないように出し切りたい。1年間、ずっと僕らの背中を押してくれたサポーターに、最高の結果が出れば、最高の恩返しになる。エキサイティングで痺れるプレーを見せる義務がある。恥じないように、熱く楽しいプレーを魅せたい。まずは、僕たち、自分たちを信じて行く」とラストゲームへの思いを語った。

そして、那須大亮選手は「僕自身は、鳥栖戦が終わった瞬間に、気持ちが切り替わっていた。可能性がある限りね。現に何かが起こったこともある」と2003年に奇跡の逆転優勝を横浜FM時代に経験したことを話してくれた。「当時、マリノスは他力でしか優勝の道はなかった。磐田との直接対決で、とにかく勝たなければいけない状況で、前半に退場者が出て10人、しかも0-1で負けていた。逆に鹿島が2-0で勝っていた。あの時、チームが最後まで諦めない気持ちで遣れていた。直接対決でモチベーションが高かったけど、0-1でゲームを捨てていたら、ああいう(横浜FM)結果にならなかった」と振り返った。横浜FMの奇跡と言われた逆転優勝は、最終節まで縺れ込んだ首位の磐田勝ち点26、2位鹿島勝ち点24、3位横浜FM勝ち点23、4位市原勝ち点23(現ジェフユナイテッド市原・千葉)で勝敗にもよるが得失点差も影響する混戦模様の中から生まれたのだ。

試合開始早々に失点した横浜FMは、前半15分にGK榎本哲也選手が、一発退場となり厳しい状況へと追い込まれていた。しかし後半5分、CKから久保竜彦選手のヘディングシュートのこぼれ球をマルキーニョス選手が押し込み同点に追い着き、1人少ない中でも逆転のチャンスを狙っていたのだ。「鹿島が2-0で勝っていた」と那須選手が言っていた鹿島の対戦相手は、もちろん浦和である。浦和には、ホームの埼玉スタジアムで鹿島の優勝は見たくない意地があった。

思い起せば、全てはアディショナルタイムであった。鹿島の結果にもよるが、横浜FMが『優勝』を手にするためには、勝利しかなかった。アディショナルタイムは3分。横浜FMは、最後の望みを掛けていた。前線に放り込んだロングボールを久保選手がDFと競り合いながらのヘディングシュートが、GKの頭上を越えてゴールに吸い込まれて逆転。その時点で2位の鹿島は、2-1と浦和にリードしてむかえたアディショナルタイムは3分。このままで試合が終われば、鹿島の『優勝』が決まっていた。だが、そうさせなかったのは、浦和の意地である。永井雄一郎選手がドリブルで右サイドを抉り、ゴールライン際から折り返したクロスに、エメルソン選手が渾身のヘディングシュート!!鹿島の選手たちが、埼玉スタジアムのピッチに崩れ落ちたのだ。その瞬間に横浜FMのセカンドステージ優勝が決まり、J1完全制覇となったのだ。

横浜FMの奇跡の優勝は、もちろん1人少ない中でも諦めずに勝利を目指して闘った横浜FMの選手と横浜FMを愛する人々がいただけでなく、最終戦のホームで他所のクラブの優勝を見たくない思いで勝利を目指して闘った浦和の選手と浦和を愛する人々の総合効果で生じた奇跡であった。

奇跡の優勝を経験した那須選手は「残り1秒、何が起こるか分からないのが、フットボール。最後までタイトルを目指してやる」と話した。

キャプテン阿部勇樹選手は「何かを起こすために、しっかりと勝つ」と誓った。

12月6日、最後の笛が鳴るまで、諦めない!!闘う男たちが、浦和にはいる。

 

Q. 膝のお皿(膝蓋骨)の脱臼について教えて下さい。

A. お皿の(膝蓋骨)の脱臼は、若い女性に多く発症します。脱臼には、幾つかの素因があります。X脚で関節が柔らかい人が、お皿が脱臼しやすいと言われています。ジャンプの着地の瞬間に足首が外に向いて、膝が内側に入るとお皿は外側に引っ張られようとします。その瞬間に、お皿が大腿骨の外側に脱臼します。良く「膝が抜けた」と言って来院される方が多いですが、その多くは膝蓋骨脱臼です。お皿を脱臼するとお皿を安定化する靭帯が膝の内側にあり、内側側副靭帯の付着部に近いため、膝蓋骨脱臼を内側側副靱帯損傷と誤って診断される場合があります。

川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。

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