浦和フットボール通信

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【河合貴子の試合レビュー】「後半のようなアグレッシブな闘いを今後の試合にも生かしていきたい」2015AFCチャンピオンズリーグ・グループリーグ第4節・北京国安戦<柏木、平川、石原、槙野、那須、武藤、李、ミシャ監督コメントあり>(2015/4/9)

序盤は北京にゲームを支配される。柏木「前半、相手が前に出て来て戸惑った所もあった。」

真冬の寒さに逆戻りした4月8日。実に5年ぶりとなる4月の雪にさいたま市は、早朝から見舞われた。雪はやがて雨に変わり、キックオフ前には止んだものの、選手たちの白い息が寒さを物語っていた。

ACL3連敗と予選突破の崖っぷちに立たされている浦和は、ACL3連勝中と波に乗る北京国安をホームに迎えての対戦となった。Jリーグ松本戦から中3日、次節の川崎戦も中3日で控えていることを考慮しながら浦和は、キャプテン阿部勇樹選手をベンチスタートし柏木陽介選手がキャプテンマークを付けた。

柏木選手は「浦和のキャプテンマークをつけることは、特別なことだ。つけさせてもらう喜びと責任を持ってプレーした」と試合後に話した。

北京のキックオフで始まった試合は、立ち上がりから北京にゲームを試合されてしまった。北京は、DFラインを高く保ちコンパクトにして、選手同志の距離間も良く、しっかりとパスを繋いで来た。浦和は我慢しながらチャンスを覗い、9分橋本和選手のクロスにニアで李忠成選手が詰めるも撃てず、17分には武藤雄樹選手がドリブルで切り込みゴールを狙うが相手DFが身体を張って阻止。ワントップの李選手へ楔のパスも通らず、ボールも収まらず、自分たちのリズムが作れなかった。

柏木選手は「前半、相手が前に出て来て戸惑った所もあった。北京は、運動量も多く、球際が強くて、嫌らしくて、やりづらかった。前半、サイドにボールが流れた時に、受け切れずワンタッチが多すぎた。前線でボールを収められたら良かったと思う。両ワイドが上がって行った時にリスクマネジメントが厳しくなってしまった」と前半を振り返った。

平川忠亮選手は「チュンに(李選手)ボールが入った時に、ボールが収まらず、サポートが必要だった。相手のボールサイドにスライドする守備で中も外も中途半端のポジションになってしまった。前半は、ボールを奪ってもDFが押し上げ切れなかった」と悔しそうに話した。

浦和のリズムが作れない中、25分自陣でボールを奪われるとエルトン選手が一気にドリブルで持ち込み決定的なチャンスを西川周作選手が冷静に対処して事なきを得た。

石原直樹選手は「決定的なピンチがあったが、防いだのでチャンスが来ると思った」と虎視眈々とチャンスの機会を覗っていた。そのチャンスは、29分橋本和選手のクロスをニアで石原選手は狙っていた。しかし、足元にボールが入り過ぎてしまった。数少ないチャンスを生かせず、33分ソン選手の右CKを中央でシュ選手がヘディングで逸らしたところをユー選手に決められてしまい北京が先制。絶対に負けられない浦和は、この失点を期に主導権を握り始めるが前半は0-1で折り返した。

ミシャ監督「後半のサッカーが理想とするサッカーだった」

後半の最初から平川忠亮選手に代わり関根貴大選手を投入。「ミシャ監督から仕掛けろ!って言われてピッチに入った。相手は、ブロックを作っていたが、1対1で勝負するよりもパスワークで崩せたのは良かった。最後の所で中に入って行く選手のタイミングが合わず・・・。流れの中で点を決めるチャンスはあったのに・・・」と関根選手は唇を噛んだ。

ミシャ監督も「失点してから、ボールを動かし主導権を握り返した。チャンスは作れたが、ラストパスの精度が悪かった。私は浦和の監督で冷静に見られないのかも知れないが、後半は理想とするサッカーだった。後半の45分間は、非常に高いテンポのサッカーを見せられた。どの選手が攻撃の選手で、守備の選手なのか分からないぐらいバリエーションの多い攻撃が見せられ、沢山のチャンスが見せられた」と自画自賛するほど浦和はアグレッシブに闘った。

槙野が同点ゴールを決めるも勝ち越せず。

59分には、テンポの良いパス回しから李選手がドリブルで仕掛けてDFを釣り、フリーになった武藤選手にパスを出し、武藤選手がゴールを狙うも相手GKにしっかりと押さえられてしまった。浦和は更に攻撃的に出るために、65分には橋本選手に代えて高木俊幸選手、72分には石原選手に代えて阿部勇樹選手をピッチに送り込み、槙野智章選手を左ワイドに上げて、阿部選手が左のストッパーに起用。浦和が猛攻を仕掛けると北京は間延びした状況になった。

そして74分、高木選手の右CKを槙野選手がヘディングで叩き込んで同点とした。槙野選手は「セットプレーはうちの強みでもある。タイミングもトシ(高木選手)と話しあった。トシとは、プライベートでも一緒。そういう時間が良かったんだ」と胸を張った。阿吽の呼吸のゴールであった。右のCKを高木選手に任せた柏木選手は「トシのキックの質は良いって感じていた。ゴールから逃げるボールが欲しいって言う話もあったからね」と話した。

逆転を狙い前掛りになった浦和の一瞬の隙を突いて、北京はカウンターからユー選手がヘディングシュートを狙うが左ポストに助けれ、スタジアムは安堵のため息に包まれた。その後も攻め続ける浦和は、81分には高木選手の折り返しのクロスを李選手、85分には関根選手がドリブルで仕掛けるがいずれも北京のゴールネットを揺らすことが出来ずにいた。

「選手が倒れているのに、プレーを続けた」とラン選手が李選手に詰め寄り、相手にしなかった李選手を押し倒し、レッドカードで87分に退場処分。数的優位になった浦和は、空中戦に強い那須大亮選手を前線に上げて攻撃に拍車をかけた。那須選手は「退場したので、監督も前に行けと指示がでていた。横からのセンタリングだったら、決める自信があった。単純なロングボールは難しかった。前線でキープして、起点を作ってサイドからのクロスなら100%勝てた!少ない時間でも決められる自信はあった」と悔しがった。

ラストチャンスとなった槙野選手のクロスを李選手がヘディングで合わせるもゴールの上に逸れ、試合終了の無情の笛が埼玉スタジアムに鳴り響いた。最後まで諦めずに逆転を狙い闘い続けたが、1-1の引き分けとなった。この結果、浦和は自力でのACL予選突破は無くなった。だが、僅かな望みは残されている。「諦めるのはまだ早い!」ロッカールームから出て来た選手たちの目は、輝きを失っていなかった。「残り2試合を全力で勝つ!」闘志に燃えた目をしていた。

今日のポイント

後半に北京の選手たちの足が止まったとは言え、後半のようなアグレッシブな闘い方が前半から出来ていれば、試合の流れをもっと早く自分たちのリズムに出来たのではないだろうか?!槙野選手が左のワイドのポジションなったのは初めてのことであった。だが、Jリーグの試合でも槙野選手がオーバーラップする時に、阿部選手が下がりスペースを埋めて左のストッパーに入るシーンは良く見かける形である。今日はボランチ1枚が下がるのでは無く、ボランチ2枚が中盤にいて攻守のバランスが非常に良かった。

李選手は「後半は浦和らしいサッカーが出来た。サポートにみんなが来るようになってボールが収まり、散らすことが出来た。後半はみんなが闘っていた」と話した。後は、チャンスを生かすラストパスやシュート精度の問題だ。

武藤選手は「ゴール前の精度は課題だ。あと少しのシーンは在った。ゴール前は、僕も含めて危機感を持ってやらないといけない」と話していた。闘う気持ちとゴール前の精度が上がれば、勝利を手繰り寄せられるはずである。この教訓をACLに限らず、全ての試合において生かしていきたい。

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