浦和フットボール通信

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【河合貴子の試合レビュー】「鬼門仙台に魔物が潜むのか。試合運びに課題が残る試合。」Jリーグ1stステージ第11節vsベガルタ仙台<那須、阿部、ズラタン、興梠、関根、ミシャ監督コメントあり>(2015/5/11)

今日のワンポイント「2点リードしてからの試合運び」

今日のワンポイントは、やはり3-1と2点リードした後の試合運びである。
興梠選手は「3-1で2点差がありながら、3-4にされるのはあり得ない。このスタジアムで痛い目に遭って来ているのに・・・。(浦和に)3点目が入った時に気の緩みがあった」と話していた。

フットボールにおいて、メンタルは重要な要素である。メンタル的な強さで引き分けに最後持ち込めたことは良かったと思うが、本当にもったいない試合であった。相手がカウンター狙いでロングボールを入れてくることで、DFラインが下がってしまい中盤にスペース生まれてしまった。クリアーしてもセカンドボールが拾えずにいた。「点は獲るが、点は獲られる。浦和のやり方ではない。相手の闘い方に付きあってしまった。コンパクトさがうちの生命線だったのに・・・。」と那須選手は語っていた。

那須選手が話していた通り、浦和の生命線はコンパクトである。DFラインの押し上げが難しい状況であるならば、前線が下がって守備を固めるのも手である。もしくは、前線から激しいプレスを掛けて、相手にロングボールを蹴らさないようにしてDFラインを上げられるやり方もある。チーム全体が試合の流れを読んで、自分たちのペースで試合をコントロール出来ればこんな結果にならなかった。

阿部選手は「これからロングボールを多用してくる前線に強い選手がいるチームとの対戦がある。繰り返さないことが大事」と身を引き締めるように話した。仙台戦の教訓をこの先の試合で活かして欲しい。仙台戦の代償として失った勝ち点2は、大きな価値あるものに変わるはずだ。

鬼門を打ち破る難しさがあった仙台戦

新緑眩しい杜の都仙台は、やはり浦和にとっては鬼門であった。

春半ばで気温16.2℃と肌寒いユアテックスタジアムは、赤く染まっていた。浦和インターから東北道をひた走り約3時間半、新幹線に乗り込み約2時間20分、浦和を愛する人々は6年ぶりの勝利を信じて仙台にやって来たが・・・。

試合後のミシャ監督は「非常にストレスのあったゲームだった。試合の前から分かっていたが、アウェイの仙台は鬼門である。相性の悪い地である」と苦み走った表情で話した。ストレスを感じたのは、何もミシャ監督1人ではなかった。

コイントスで勝った阿部勇樹選手は、仙台サポーターを背負って闘うピッチを選択し、仙台のキックオフで始まった。最初のチャンスを活かしたのは、仙台であった。8分、柏木陽介選手のボールをキム・ミンテ選手が奪うと素早く野沢拓也選手へパスを送り、そのままゴール前へと走り込んで行った。野沢選手は、左サイドからクロスを中に送ると、オフサイドポジションにいた選手の頭上を越えて、キム・ミンテ選手の下へと渡り右足ボレーシュートが決まり先制点を許してしまった。

1点を追うこととなった浦和は、11分には宇賀神友弥選手がドリブルで中に切れ込み梅崎司選手へ、梅崎選手は気転を効かせて走り込んで来た関根貴大選手へパスを出し、関根選手がシュート気味のクロスを入れるも中に飛び込む選手には合わず、14分には、梅崎選手の落としを宇賀神選手が狙うも決まらず苦しい展開となっていった。

逆に、退いて守るゆとりが出て来た仙台は、セカンドボールを拾いカウンターを狙って来た。ミシャ監督は「前半は、主導権を握れたが、ボールの動かし方が遅く、同サイドばかりだった。もっと早く、逆サイドを突くべきであった。失点してからも落ち着いていた。前半の最後に追い付けたのは良かった」と前半を振り返った。

ズラタン接触プレーで鼻骨骨折

浦和は、バイタルエリアまで運ぶものの、ペナルティーエリア付近には仙台の選手が8人も待ち構えなかなか決定的なチャンスは作れなかったが、我慢強く攻め続けていた。35分、宇賀神選手からズラタン選手へ、そしてDFの裏に抜け出した武藤選手へとダイレクトパスが繋がると、武藤選手の折り返しを梅崎選手がシュート!しかし、六反勇治選手に止められてしまった。その時、ゴールを狙い飛び込んで行ったズラタン選手が相手DFと接触して鼻骨骨折をしてしまった。

ズラタン選手は「何が起きたか、はっきりと覚えていない。武藤にダイレクトにパスを出してから、動き出したまでは覚えている。確か、ウメもゴールを決めるチャンスがあったと思う。意識が朦朧としていて、気が付いたら鼻が折れていた」と試合後に折れた鼻をテーピングで止めていた。そして「フィニッシュに持ち込むアクションをゲームの中で続けて行く必要があった。冷静に気持ちを保ちつつ、試合を運ぶことが大事だった」と悔しそうに話した。

ウイルソン選手が一発を狙うシーンやキム・ミンテ選手がドリブルで持ち上がりシュートを狙うカウンターの脅威に晒されたが、浦和は攻め続けた。44分には、宇賀神選手が強烈なミドルシュートを放つも、六反選手にファインセーブされてしまった。そして45+1分、柏木選手の左CKのこぼれ球を阿部選手がしっかりとボールを押さえてゴールを狙うと、相手DF2人に当りコースが代わり転々とゴールへと吸い込まれていった。仙台が前半に放ったシュートは4本。浦和が攻め続けて放ったシュートは10本であった。浦和は、前半のうちに追い付くことに成功しハーフタイムを迎えた。

興梠、李の投入が功を奏して逆転に成功も

逆転勝利を狙い、負傷したズラタン選手に代えて興梠慎三選手を、梅崎司選手に代えて李忠成選手をピッチに送り込み反撃の狼煙を上げた。興梠選手は「監督に45分から行けるか?と言われて、行ける準備はしていた。後半、うちのペースでやれると思っていた。練習でチュン君(李選手)と同じコンビを組んで来た。チュン君のゴールの形は無かったが、個人的にチュン君が近くにいてくれて助かった」と話した。55分、柏木選手の左CKをニアーで阿部選手が逸らすと興梠選手が頭で押し込み2-1と逆転に成功。

56分、森脇良太選手からのパスを受けた李選手がドリブルで持ち込みゴールを狙うが、身体を張った守備に阻まれてしまった。しかし、そこへ走り込んで来た関根選手がこぼれ球を冷静に拾ってゴールに流し込み3-1とした。

関根選手は「チュン君に感謝。ゴール前に顔を出せば何かが起きると思っていた」と照れながら話したが、直ぐに険しい表情に変わり「自分の中でゴールを獲ったときは、良かったが・・・。2失点目は自分が大きくクリアーすれば良かった。3-2になり焦りがあった。自分の所からカウンターも食らったし、今日の試合でボールを繋げる、蹴る、クリアーの判断が足りなかった」と話した。

那須「悔しさが残る引き分けだった」

浦和が2点リードすると仙台ベンチも動き、58分にウイルソン選手からハモン・ロペス選手に、59分には野沢選手から奥埜博亮選手に代えて来た。すると、60分キム・ミンテ選手のクロスのこぼれ球を菅井直樹選手がヘッドで中へ折り返すと走り込んで来た奥埜選手に決められてしまった。更に65分には、梁勇基選手の左CKをニアーで菅井選手が逸らして渡部博文選手のヘディングシュートが決まり3-3の同点にされてしまった。

浦和は、守備の安定を図るために69分に関根選手に代えて永田充選手を投入した。何とか悪い流れを断ち切り再び主導権を握り反撃に転じたが、80分に梁選手の技ありシュートが決まり3-4にされてしまった。しかし、喜ぶ仙台の隙を突くようにその1分後の81分、武藤選手のクロスを興梠選手が冷静にゴールに叩き込み4-4の同点に追い付いた。85分には、金園英学選手のヘディングシュートを西川周作選手が気迫のファインセーブでゴールを死守して、4-4で試合終了。

試合後、那須大亮選手はペットボトルを悔しそうに握り潰しながら「あっ~!もう~!」とやり切れない気持ちでいた。「ちょっと悔しさが残る引き分けだった。守備陣として、3-1になった時点で積極的にボールコントロールが出来れば良かった。相手のサッカーに付き合ってしまった。相手は、ロングボールからカウンターを狙っていた。間延びさせられてしまった。コンパクトさがうちの生命線だったのに・・・。最後、頑張って同点にしたのは、ポジティブに捉えているが、4失点はDFとして悔しさが残る。今までは、リスクマネジメントが出来ていたが、DFのバランスが取れずにセカンド拾われてしまった」と反省しながらも、もっと何とか出来たはずだと言う自責の念にかられていた。

仙台には魔物がいるのではないかと思ってしまうほど、フットボールの恐ろしさを感じる試合となった。

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