浦和フットボール通信

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河合貴子のレッズ魂ここにあり!「明暗」

J開幕から浦和レッズを追いかけている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。

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浦和は、様々な経験を積み重ねて『心』と『技』は身に付けて来ていると思う。ここから試されるのは『体』である

ワールドカップ連覇に向けて、躍動するなでしこジャパン。準決勝でライオネス・イングランドと対戦し、後半に押し込まれたなでしこジャパンだったが、アディショナルタイムにライオネスEnglandのオウンゴールで決勝進出の切符を手に入れた。

誰もが延長戦を覚悟したその時、勝利の女神は、なでしこJapanに微笑んだのだ。アディショナルタイムは、3分だった。90+2分。ラストチャンス。もしくはCKになり最後のワンプレーの可能性を秘めた川澄奈穂美選手のアーリークロスに大儀見優季選手と岩渕真奈選手は、ゴール前へと走り込んだ。2人のどちらかに渡れば、決定的なチャンスがなでしこJapanに来る。

この決定機にローラ・バセット選手は、必死に戻り右足を伸ばしてクリアーし倒れ込み、ボールの行方を祈るように見ていた。ボールはバセット選手の思いとは裏腹に、クロスバーを直撃して、イングランドゴールへと吸い込まれて行ったのだ。喜び合うなでしこ達、泣き崩れるライオネスたち、ピッチの中で明暗が分かれた瞬間であった。

日本の決勝進出の喜びと共に、改めてフットボールの中に潜む恐ろしさに身ぶるいした。

1stステージを無敗で優勝を飾ることが出来た浦和だが、クロスバーやポストに助けられた試合もあった。一歩間違えれば無敗記録が途絶えてもおかしくない試合はあったのだ。明暗を分けたものは、いったい何であったのだろうか?

試合後のTVインタビューで佐々木則夫監督は「思ったよりも前回からの疲労が、彼女たちに重なっていて、ひとりひとりのプレーの質が今ひとつだったけど、勝とうという思いがゴールにつながった」と話していた。「勝とうという思い」とは最後まで諦めずに闘う姿勢に繋がる。

もし、川澄選手がラストチャンスを狙っていなかったら・・・。大儀見選手と岩渕選手がゴールを狙っていなかったら・・・。あの、オウンゴールは生まれなかっただろう。

だが、「勝とうという思い」は、ライオネス・イングランドの選手も同じだった。だからこそ、バセット選手は必死に戻り、クリアをしたのだ。どんな試合でも「勝とうという思い」はピッチに立つ選手は当然もっている。

いつも試合前に那須大亮選手は「負けて良い試合なんて絶対に無い!僕らは全て勝つためにピッチに立っているし、勝つためにやっているんだ!リーグ戦だが、全て目の前にある試合は、決勝戦のつもりで闘う」と口癖のように言っている。

浦和と対戦するどのチームも、浦和にひと泡ふかしてやろうと高いモチベーションで挑んでくるのは事実だ。「勝とうという思い」が明暗を分けたのでは無い。

バセット選手のクリアが、僅か数cm、クロスバーの上に直撃していたら違う結果になっていたはずだ。浦和だって、神戸戦での小川慶治朗選手のクロスバー直撃シュートやCKからの増川隆洋選手のヘディングシュートがポスト直撃していなければ、神戸で優勝が決まっていなかっただろう。

明暗は、ほんのちょっとした所で分かれるのかも知れない。日本対イングランド戦で、先に足が攣っていたのはライオネスたちだった。なでしこたちは、準々決勝のオーストラリア戦と同じエドモンドでの試合だったために、ライオネスたちと比べて移動の疲れは無かった。

バセット選手が試合終盤でもフィジカルが落ちないタフな選手であったら、川澄選手のアーリークロスをもっと楽な体勢でクリア出来ただろう。物凄いフィジカルがあったら、DFとしてタッチラインにクリアすることを心掛けていただろう。明暗を分ける要因のひとつは、フィジカルだと思えた。

もちろん、選手個人が持つ技術や阿吽の呼吸で生まれるコンビネーションも明暗を分ける大切な要因だ。ゴール前の冷静さも大切だ。そう考えていくと『心技体』が如何に大切なことなのかが、胸に響いて来る。

無敗で1stステージ優勝した浦和だが、振り返れば楽な試合などはなかった。ほんのちょっとしたことで、浦和に流れが来ただけだ。2ndステージは、もっと過酷な状況が浦和を待っている。もうすぐ開幕する2ndステージは、いきなり中3日の3連戦で、しかも松本と山形のアウェイ移動で始まる。アウェイ関西方面の連戦でなかったことは助かったが、暑さも雨も選手たちの体力を奪って行く。

梅雨の時期は、本当に辛い。ミシャ監督が求めるフットボールは、豊富な運動量が生命線となる。また、夏に溜まった疲労は、秋に選手たちに伸し掛かってくる。浦和は、ミシャ監督体制になり秋から失速する傾向がある。浦和は、様々な経験を積み重ねて『心』と『技』は身に付けて来ていると思う。ここから試されるのは『体』である。

練習後に、居残りランニングする選手たちの姿が、明暗を分けるほんのちょっとしたところに繋がっていくと確信した。最後に明暗を分けて泣くのであれば、嬉し涙を流したい。

Q. 非接触型と接触型の靱帯損傷について教えて下さい

A. 膝の怪我の仕方で、接触損傷と非接触損傷があります。交通事故でガーンとダッシュボードなど物にぶつかったり、相手とのコンタクトプレーで怪我してしまうことを接触損傷と言います。非接触損傷は、コンタクトしないでジャンプの着地や方向転換の時に起きてしまう怪我です。前十字靱帯損傷のほとんどが非接触損傷で、後十字靱帯損傷は接触損傷が多いです。GKは、ガーンと膝を着いてしまったり、コンタクトプレーやゴールポストと接触して靱帯を損傷することがあります。前十字と後十字が一緒に切れてしまうのは、相当激しいく接触した場合です。

川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。
http://www.kawakubo-clinic.jp/

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