浦和フットボール通信

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河合貴子のレッズ魂ここにあり!「脱浦和攻略」

J開幕から浦和レッズを追いかけている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。

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他のチームが仕掛けてくる浦和攻略法を上回るチーム力を付けたい

浦和レッズは、2ndステージが開幕してから、1勝2分け2敗と今ひとつ波に乗れずに14位と低迷している。1stステージの快進撃が、まるで陽炎のようである。

2ndステージの開幕戦となった松本戦は、マンツーマンとフリーのDFを置いて8DFのような形で守備を固めて来たが、それでも浦和の攻守に渡る熟練されたコンビネーションで主導権を握り勝利を収めた。

「シャドーにボールが入った時に、相手DF陣が『フリックしてくるぞぉ~』ってしゃべっていた。浦和を研究されていて、一番嫌なところを分析されていた。退いたチームには、昨年は引き分けていた。勝ち点3を取れたことは、今年の強みだ。どこのチームも浦和を倒そうと分析してくる。だから、分析してくるチームに対して、崩せるサッカーをしたいと思った」と松本戦後に興梠慎三選手は話していた。

続く中3日で迎えたアウェイ2連戦の山形戦は、移動の疲れと暑さで運動量が低下してセカンドボールも拾えずに浦和らしいパスサッカーが見られなかったが、なんとか引き分けで終わることが出来た。柏木陽介選手は「今シーズン、最悪の試合だった」と振り返っていた。

選手たちのコンディションが悪い中でも引き分けで終わった山形戦以外の試合を考えると、広島も名古屋も甲府も決して勝てない相手では無かった。だが、浦和は勝ち点3を手に入れることが出来なかったのだ。

引き分けで終わった甲府戦後に西川周作選手は「闘い方が似ている。浦和にボールを持たせて、カウンターを狙っている。自分たちがボールを持っている時の攻から守に変わった時に、もったいない失点をしている」と話していたように、対戦相手は前線からプレスを掛けずに、ゴール前の守備を固め、浦和の楔のパスを狙ったり、浦和のCKからの零れ球に素早く反応してカウンターを仕掛けてくる。

相手がボールを奪いに来ないのだから、浦和のボール保持率は当然高くなる。浦和がサイドから揺さぶりを掛けても動じず、まるで浦和が攻め疲れするのを待ち構えているようである。浦和の選手たちは「我慢強く闘う」と良く言うが、相手チームも浦和に主導権を握られながらも本当に我慢強く守備して、浦和がミスをするのを我慢強く待ち、そして一瞬の隙を見逃さない。そこには、攻守の『我慢くらべ』の図式があった。

例え、浦和に先制されても1失点は、射程圏内であり闘い方を変えない。その間に浦和が追加点を取れれば話は変わって、相手は前に出て来ざるを得ない。そうなれば、浦和の戦術が嵌り思うツボになる。だが、浦和は、追加点が獲れずに『我慢くらべ』に疲れてしまう。

圧倒的なチャンスを活かせずに敗戦を喫した広島戦直後の記者会見でミシャ監督は「サッカーですので、チャンスを多く作りながら決められずに、相手の少ないチャンスに屈することもある。勝利した広島よりも、先の見通しはポジティブだ」と話した。この発言は決して負け惜しみでは無い。

後日、ミシャ監督は「試合には負けたが、我々のサッカーの敗戦だとは思っていない。日本のサッカーが負けてしまった夜だった」と広島戦を振り返り話したのだ。退いて守りを固めてカウンターを狙うフットボールには、結果は伴うかも知れないが、そこからチームが発展出来るものが無いからこそ、ミシャ監督は発言したのだ。だが、チームの熟成度や選手のスキルを考えると、浦和に勝つためにはどのチームも同じ選択をする可能性が高い。真っ向勝負を挑んでくるチームは、限られているだろう。堅守のサッカーを否定するつもりは無い。勝つためには、大切な手段なのだ。相手チームは、対浦和戦だから、敢えて闘い方を変えて浦和を攻略して来たのだ。全てのチームが、どんな試合でも堅守速攻ならば、ミシャ監督の言うことも一理あるが、「日本のサッカーが負けた」とは思えない。悔しいが、浦和攻略法に負けたのだ。

浦和は、パススピードを上げるために練習前にピッチに水を撒く。もちろんホーム埼玉スタジアムでも練習と同じようなピッチコンディションで行なうために水を撒く。アウェイゲームだと、浦和攻略の1つとしてピッチに水を撒かずに芝生の長さも長目に調節するスタジアムもある。だが、浦和の選手たちは、それは想定済みでパススピードを維持するために、普段よりも強めにボールを蹴る意識の下で闘うので、この攻略法は余り意味がないと思う。だが、芝生が荒れてピッチコンディションが凸凹で繋ぐサッカーが出来ないと困る。

一番浦和が困るのは、守備ブロックだ。マンツーマンDFならば、スキルの違いで打開することが出来る。退いてゴール前を捨て身覚悟の守備を固められると、どんな相手でも崩すは難しい。そこを打開するためには、相手DF陣を釣り、スペースを作り、使う動きから相手のDF陣を出し抜くぐらいの早いダイレクトパス回しで崩し、より精度の高いコンビネーションでゴールを決める。強烈なミドルシュートを撃つこと、シュートが決まらなければ必ずセカンドボールを拾い2次、3次攻撃を仕掛ける。CKやFKのセットプレーの精度を高めること、攻守の切り替えを早く、しっかりとしたリスクマネジメントをすることなど文章にすれば簡単であるが、実際にプレーをすると難しい。

クオリティーを上げるためには、突き詰めたトレーニングしかないのだ。当然、選手たちは誠心誠意トレーニングを積んで居る。妥協を許さずに取り組んでいるのは事実だ。「勝ちたい」気持ちも、「闘う」気持ちも選手たちは、持っている。

「内容は悪くなかったが、結果が伴っていない」と言う言葉は聞き飽きた。では、なぜ内容が良いのに、結果が出無いのだろうか・・・。ラストパスの精度やシュートのクオリティーだけの問題ではない。ミシャ監督の下で積み上げて来たものをベースとして、闘い方を相手の出方によっても変えても良い時期に来ていると思う。2ndステージの松本戦では、試合終了間際に選手がピッチ内で的確に判断してベンチからの指示に異議を唱え、相手のカウンターを阻止する布陣を退いた。試合の流れを読む力は、選手たちには付いて来ている。

また、1stステージのG大阪戦では、平川忠亮選手をスタメンで起用して右サイドの守備を強化して挑んだ。ミシャ監督は柔軟な対応が出来るのだから、G大阪戦に限らずに対戦相手によって変幻自在な闘い方を見せて欲しい。柏木選手が「時には、相手にボールを持たすやり方をしても良いと思う」と発言したことを思い出す。

それには、スタメンで出場する選手以外の役割が大きい。那須大亮選手は「ここで、試合期間が空くのは、何かの意味合いがあると思う」と甲府戦後に話していた。この中断期間に日本代表を辞退した柏木選手を除き、東アジア選手権で4選手が浦和を離れた。彼らが帰国するのは8月10日である。その2日後にアウェイの新潟戦がある。時差はそんなに無いとしても、どんなコンディションで戻って来るのか分からない。逆にスタメン以外の選手にとっては、チャンスなのだ。ミシャ監督の中で計算出来る選手が増えれば、変幻自在なバリエーションは増えるはずだ。浦和攻略を打開するチャンスが、この中断期間なのだ。

他のチームが仕掛けてくる浦和攻略法を上回るチーム力を付けたい。2ndステージ開幕ダッシュをかけられなかったが、下を向くのはまだ早い。目標の方向転換など考える時期ではない、充分に2nd優勝と年間順位1位は狙えるはずだ。中断明けとなる新潟戦が面白くなって来た。

だが、面白くするのはミシャ監督の手腕に掛かっている。その手腕を動かす原動力は、選手たちだ。同じやり方では、いつまで経っても脱浦和攻略は出来ず「内容は悪くなかった」と言葉が繰り返されるだけだ。『我慢くらべ』をしているのは、本当は浦和を愛する人々なのかも知れない。

Q. 前十字靱帯を損傷して、治ったあとのパフォーマンスは落ちるのでしょうか?

A. 完全に回復する人もいますが、元のパフォーマンスに戻れるのは、トータル的に復帰率は約80%ぐらいです。レベルの高いプロ選手は、専属のトレーナーさんもいますし復帰は出来ます。ただ、前十字靱帯は作り直す手術をしても正常な前十字ではありません。また、前十字靱帯を損傷すると半月板も傷つけていることがあり、半月板の手術が必要な場合もあります。復帰してから、半月板が痛みだし水が溜まってしまったり、パフォーマンスが落ちます。前十字だけでの怪我ならば良いですが、怪我の状況と合併損傷で復帰率やパフォーマンスが変わってきます。

川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。
http://www.kawakubo-clinic.jp/

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