浦和フットボール通信

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浦和フットボール交信 – Vol.8~「仙台戦でのサポーターの意思表示」~椛沢 佑一

椛沢佑一浦和フットボール交信 Vol.8
「仙台戦でのサポーターの意思表示」
椛沢 佑一(浦和フットボール通信編集長)

ワールドカップ中断前、最後の試合となったベガルタ仙台戦は、シュート28本を放ったものの数字ほどの脅威を仙台に与えることなく痛み分けの結果に終わった。これで前半戦は6勝4分2敗の勝ち点20の4位。試合後は一部サポーターから厳しい声やペットボトルが飛ぶ状況となった。この件について今回の交信を行ないたい。

■サポーターの意思表示を模索してきた歴史。
ベガルタ仙台戦、終了後にペットボトルが飛び、厳しい声が飛んだ。その背景には、仙台戦の試合内容からゴールに向かうプレー、絶対にゴールを決めて勝負を決めるんだという気持ちが見えず、ただチャンスを作るパスゲームに終始したレッズのプレーぶりがあった。加えて直近の磐田戦、清水戦、横浜FM戦でも同じ印象を感じていた伏線もあって、こんな調子ではシーズン前に目標を立てたACL出場権の獲得は到底出来ない!という気持ちの意志表示であったと思う。中にはサポーターより悔しいはずの選手達の挨拶にきた時の表情から、その悔しさが見えなかったのが悔しかったという声も聞いた。だからと言ってペットボトルを投げた行為については正当化できるものではないが……。
レッズがJ2降格、J2時代を戦っていた、99年、2000年も不甲斐ないレッズに対してペットボトルが幾度も投げ込まれた。クラブとサポーターが話し合いの場を持ち、より良い相互の意思表示のあり方の模索する作業は、この時以来継続されている。多くのクラブはスタジアムへのペットボトルを持ち込み禁止することで問題を解決させようとしたが、レッズはサポーターの応援のために必要な水を禁止させることなくサポーターと膝を付き合わせて話し合うことで根本的に問題を解決する道を選んだのだ。それ以降ペットボトルがピッチに投げ込まれることは少なくなった。10年が経って、このようなクラブとサポーターの築き上げたものがお互いに薄れていることも間違いない。これは昔を知るサポーター、クラブの人間が伝え継いでいき、スタンド内での自浄努力をしていくことが必要なのだと思う。

■叱咤激励の下のレッズは強くなってきた。
ペットボトル投げ込みはNO!という話で終わってしまっては問題の根本的解決にはならない。その背景にあった気持ちも重要なことであると思う。浦和レッズはサポーターの叱咤激励の下にチームを勝利に導いてきた歴史があるからだ。ミスターレッズといわれた福田正博も不甲斐ない試合を受けてのサポーターからの強烈なブーイングを浴びても、その後の試合でゴールを決めて勝利を決めて、どうだ!というアピールをサポーターに向けてしていた。岡野雅行選手も最新号の浦和フットボール通信の特集インタビューで「レッズサポーターには鍛えられて育ったと思っている。チームを愛するからこその厳しい言葉だったということも理解していた」とコメントしている。厳しい環境の中で逞しく育っていく。その背景にはチームへの愛情がある。そんなサポーターとチームの反骨精神の中でのコミュニケートも近年では見ることが少なくなっているのかもしれない。
今回の件で、投げ込んだサポーターは事態の重さを認識して自ら入場を自粛。そしてサポーター側から選手に対して謝罪を行ったという。もちろんペットボトルを投げ込んだことには弁解の余地がない。ただ、投げ込んだ背景にあったサポーター側の思いも感じて、選手達はプレーをして欲しいと。中にはなぜ良いサッカーをしているのにペットボトルを投げられたんだと思っていた選手もいたそうだが、その話を聞いて、選手達は握手を求めてきたという。サポーター側は意を汲んでくれた選手達が今後戦ってくれることを信じなければいけないし、選手達はその約束と信頼に対してピッチで表現しなければいけないと思う。お互いの信頼関係を築き、このような事態を招く歴史には是非とも終止符を打ちたい。

■クラブとサポーターが合致した目標設定はACL出場権の獲得。
仙台戦で起きたことは、チーム全てを否定して起こった行動ではない。チームが向かう方向性、そしてそれが完成するまでの難しさも理解し、内容が徐々に向上していることも理解はしていながら、さらにその上を目指すための勝利への執念。ゴールに向かい、勝負を決めるための気持ちをもっと求めたということだと思う。それは今年、内容と共に結果を求めるシーズンであるからこそのサポーター側からの意思表示であったと思う。ただ良いフットボールをするだけで良いシーズンであれば、現状のままで良いだろう。だがレッズは今年ACL出場権を掲げて戦っているのだ。しかし、ここで監督解任を求める動きになってしまうようでは、クラブの土台作りを全て放棄することになる。それはすべきではないと思うし、それを求めるサポーターは少ないと思う。豊田さんも前回のコラムの中で、「我らレッズサポーターはこれらの事例を自らの経験と照合し、クラブとの意思を通わせるパイプを粘り強く維持して行かなくてはならない。そしてクラブは……たとえ受動的であってもかまわない。レッズサポーターとホーム浦和からのアプローチに真摯に耳を傾ける姿勢を持ち続けて欲しい。その努力の積み重ねこそがいまある浦和レッズの源であり、クラブの「土台」に他ならないと私は思う。」と語っている。まさに、このコミュニケーションを図りながら、クラブの目標を常に確認し合いながら、目標を目指していく。少しでもクラブからその姿勢が見えなければ、それは受け容れられないという姿勢をサポーターは伝えなければならないと思う。そしてクラブとサポーターが一体になって目標に向かっていくことが浦和を強くするための力になる。浦和レッズは、目標に向かって道を進んでいる段階である。「ただ応援をして喜ぶだけ」のスタンスは、強いチームにのみ許される。弱いチームを強くするためには、サポーターもしっかりとチームを見つめて行動をしなくてはならない。久しぶりの駒場スタジアムで、また悔しい試合を見させられて、逆に昔の反骨精神が煽られた気がする。選手達も意地を見せて、ゴールを気持ちで奪う姿勢をみせて、サポーターを納得させて欲しい。

【浦和フットボール通信より】
5月15日の「仙台戦後における一部サポーターのトラブル」発生以来、『浦和フットボール通信』にも観戦したサポーターの方々からの証言、各方面の浦和レッズ支持者の方々からのご意見等さまざまな情報をいただきました。ただ「クラブサイドと該当サポーターとの事実確認が進行中」との情報を得た経緯があり、問題の重要性やネット上での反響を考慮。一定の公式発表がなされるまでは当コラムの更新停止を行なった次第です。読者の皆さまにはご了承の上、今後ともご愛読のほどよろしくお願い申し上げます。
浦和フットボール通信社代表 村田要

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