浦和フットボール通信

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河合貴子のレッズ魂ここにあり!「チームを支える絆~平川忠亮選手」

J開幕から浦和レッズを追いかけている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。

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平川活躍の裏にチームを支える絆があった

平川忠亮選手にとって約2カ月ぶりに先発した仙台戦は、そのブランクを感じさせないものがあった。選手としての経験値がなせる業なのか、チームプレーに徹しながら試合の流れを読んで何を自分がすべきなのかしっかりとその役割を把握して、最後の笛が鳴るまで見事に全うした。

仙台戦後、平川選手は安堵の表情を浮かべながら「天野コーチをはじめ、試合に出られない選手のコンディションを上げる準備をしてくれて、コンディションを落とさないメニューを考えてくれた練習に対する熱意に応えたかった。本当に感謝している。年上の部分でやっていく中で、後輩にそれを見せたかった。それが見せられた90分だった」と感謝の言葉と共に、ベテラン選手としてプロの在り方をピッチで示したのだ。

試合から選手が遠ざかると、コンディションや試合勘が大きな問題となってくるのは、否めない。試合勘は、試合を重ねるごとに研ぎ澄まされて行く。平川選手は湘南戦で88分に途中出場は果たしているが、短い時間では試合勘が戻るものではない。だが、平川選手は、6月22日の新潟戦以来の先発出場でも試合勘の衰えを見せるどころか、ずっと試合に起用されていた時と同じように、試合勘は冴えていた。

平川選手は「試合勘って、本当に難しいけど、経験かなぁ?!」と笑った。そして、少し照れた表情しながら「今まで色んな経験をして来たからね。その経験の積み重ねだよ。上手く試合に入れない時や、ゲームの波に乗り切れない時も、上手くいかなくてもプレーをし続けて落ち着かせる。失敗しても慌てない。まわりがレベル高いところでプレーをしていると、走って、闘う、規律を守ってやれば、助けてくれる仲間がいるからね。例え、失敗しても仲間がフォローしてくれる」と話した。

平川選手は、百戦錬磨の経験の中から試合勘をしっかりと持って試合に臨むコツを知っていたのだ。

そして、問題の1つである試合で闘えるコンディションである。平川選手は試合に闘えるコンディションを試合出場の機会ない時に天野賢一コーチの下で取り組む日々を過ごして来たのだ。試合の当日、出場しない選手たちは、残ったメンバーで天野コーチの下で練習が行なわれている。

天野コーチは「日々の準備の1つとして大事にやっている。選手も大事にやってくれているし、チームにとっても大事なことだ。試合に出られない訳だから、試合のようにフィジカル的に負荷を設定してトレーニングをしている。もちろん、試合とは同じにはならない。高い負荷を設定して、選手たちに理解してトレーニングをしてもらっている。また、次の日がオフだったり、練習試合が組まれていたら負荷の掛け方は変わるし、ヒラの年齢と若い選手の状況を把握して負荷を掛ける。人数的にも多くて6人で、GKがいたり、いなかったりもするからゲーム形式は出来ない。ボールを扱うメニューもあるし、ランニングにステップワークを入れたり、試合に出場した時に如何あるべきかを意識している」と試合に出場しない選手のコンディションを維持するためのメニューに細心の気配りをしていた。

天野コーチは、そればかりか「コンディションは、フィジカルだけでなく心のコンディションもある」とメンタルの重要性も教えてくれた。「メンタルが落ちるとフィジカルも落ちる。実は、心と身体は連動している。残った選手メンタルは難しい。目的意識を伝え、必要だと思わせれば、良いトレーニングに繋がる」と天野コーチは話し、選手への声掛けを大切にしていた。「プレーの話しもそうだが、他愛もない話しもしているよ」と選手たちとのコミュニケーションを大切にしていた。

天野コーチは「若手も頑張っている。加賀も啓太もヒラも、彼らに1を要求したら、2~3をやろうとする。ゲームでどう生きるか分かっているから、要求した以上をやろうとする。一流のプロだね。その姿を見て、若手もいろいろと感じる」と試合に帯同出来なかった選手たちのことを誇らしげに話していた。

天野コーチの話しを聞いて、平川選手が仙台戦後に「コンディションを落とさないメニューを考えてくれた練習に対する熱意に応えたかった」と話した意味が良く分かる。平川選手は、天野コーチが試合出場の機会がない自分たちのために誠心誠意取り組んでくれることに恩義を感じて、何としてでも結果を残して天野コーチの労に報いたかったのだ。その話を聞いた天野賢一コーチは「結果を出してくれたヒラにこちらこそ感謝だよ」と仙台戦の平川選手の活躍に嬉しそうに目を細めた。「あれだけキャリアのある選手が、メンバーから外れて、遠征も帯同出来ず残っているのは、苦しいところがあると思う。いつ来るか分からないチャンスのために、練習をする。日々の準備を怠らない結果だと思う。実際に試合で出た。これぞ、プロだ!」と天野コーチは絶賛した。

試合出場機会に恵まれない選手たちを支える天野コーチと約2カ月ぶり先発した平川選手は、深い絆で結ばれていた。深い絆で結ばれているからこそ、それが大きな力となって走り、闘い、ピッチで輝きを放つことが出来るのだ。そして、その平川選手の輝きが、若手の選手たちの希望の輝きとなる。これぞ、チームを支える大切な絆なのだ。平川選手は、仙台戦で90分間通して、チームを支える絆を気迫の籠ったプレーで見せてくれた。

Q. 前十字靱帯を損傷して、治ったあとのパフォーマンスは落ちるのでしょうか?

A. 完全に回復する人もいますが、元のパフォーマンスに戻れるのは、トータル的に復帰率は約80%ぐらいです。レベルの高いプロ選手は、専属のトレーナーさんもいますし復帰は出来ます。ただ、前十字靱帯は作り直す手術をしても正常な前十字ではありません。また、前十字靱帯を損傷すると半月板も傷つけていることがあり、半月板の手術が必要な場合もあります。復帰してから、半月板が痛みだし水が溜まってしまったり、パフォーマンスが落ちます。前十字だけでの怪我ならば良いですが、怪我の状況と合併損傷で復帰率やパフォーマンスが変わってきます。

川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。
http://www.kawakubo-clinic.jp/

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