浦和フットボール通信

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<ハイライト動画付き>【河合貴子の試合レビュー】怪我をおして闘った那須「足がどうなってもチームに結果が出れば良いと思った」Jリーグ2ndステージ第16節vs川崎<那須、岡本、興梠、西川、柏木、梅崎コメントあり>(2015/11/8)

今日のポイント「交代カードの使い方」

前半主導権を握る中で、川崎を突き放し前半で試合を決定付けることが出来たはずであった。そのことが、本当に悔やまれる。

ミシャ監督は記者会見で「我々が前半に、試合を決定付けるような得点をして、リードをしていれば、後半に相手に押し込まれながらも、少し余裕を持って試合を運べた。今後、選手たちとゲームの展開や進め方を話していきたい」と語った。

後半に入って苦しい展開を打開しようとミシャ監督は、梅崎司選手と青木拓矢選手を入れて攻撃の活性化を図った。そして、最後の切り札に前線で高さを生かしてポストプレーから攻撃の起点になっていたズラタン選手に代えて高木選手を投入した。

だが、最初の交代の選択肢は足に違和感を抱えて中断期間に行なわれた練習試合を回避していた那須大亮選手であった。既に、ボランチの阿部勇樹選手を3DFに下げていた状況だったため、この交代が認められていたら阿部選手と槙野智章選手をセンターバックとして、両サイドバックの宇賀神友弥選手と梅崎司選手が高いポジションをとる変形的な4DFとなり、センターバックの槙野選手がオーバーラップを掛けたらボランチの青木選手がDFラインに入ったり、サイドバックの1枚が守備に戻り3DFと流動的なシステムで対応したと思われる。

しかし、高木選手が交代の準備をしていた時に試合の流れが浦和に傾き始めた。非常に難しい選択だった。

何としてでも勝ち点3欲しい状況に追い込まれ、右のストッパーを任せられた那須選手は、サイド攻撃に参加して攻守の切り替えでも負担がかかってしまい。右足ハムストリングを気にする仕草をみせた。

那須選手は「怪我、何とも言えない。気にしていた部分。後半は、カウンター合戦みたいになった。悔いが残るけどポジティブに考える。自分のアクシデントがあったが、最低限のことが出来た。足がどうなってもチームに結果が出れば良いと思った。1人いなくなるのは、厳しいし、最後まで闘ってやり切ろうと思った。途中、ウメが下がって来てくれた。負けなかったことは、チームが良くなっている」と話していた。

75分の高木選手の交代をズラタン選手でなく、ミシャ監督が最初に考えた那須選手であったら、試合はどうなっていたのだろうか?!どういう結果になっていたかは、分からない。

ただ、ひとつだけはっきりと言えることは、那須選手の怪我が悪化することは無かったはずだ。最終戦で広島が湘南に負け、浦和が神戸に勝てば年間首位の座を奪い獲ることが出来る。今日の勝ち点1が、最終戦に望みを繋げる貴重な勝ち点1となったことは否めない。最後の試合となる神戸戦まで、あと2週間。那須選手の怪我が軽いことを祈る。

最終戦に望みを繋ぐ貴重な勝ち点

射し込む日差しを遮るように、埼玉スタジアムの上空を薄い雲が覆った11月7日。年間首位の座を狙う浦和は、川崎をホームに迎えた。選手入場と共に、バックスタンドには浦和カラーの赤・白・黒の大旗が現れ、ゴール裏には大きなダイヤの形が躍動し、スタジアム全体が浦和カラーに染められていた。

累積により出場停止となった森脇良太選手に代わり、右のストッパーを岡本拓也選手が務めた。岡本選手は、実に7月29日甲府戦以来の公式戦出場となった。一方、得点源である大久保嘉人選手を出場停止で欠いた川崎は、船山貴之選手と小林悠選手のツートップとし、トップ下に中村憲剛選手を起用してきた。

川崎のキックオフで始まった試合は、立ち上がりから主導権を握ったのは浦和であった。前線から嵌めこむ守備を見せ、DFラインを高く保ちコンパクトにして仕掛けていった。

それに対して川崎は、両ワイドが下がり5DFを形成。5-2-3の布陣となりトップ下に入った中村選手が積極的にプレスを掛けることで、浦和の縦パスをケアーし中を固めて来た。

岡本選手は「立ち上がりリズムが掴めない感じだったが、途中から自分の持ち味の良い守備が出来た。憲剛さん(中村選手)が嫌らしいところにポジションを取っているので、パスが入ってから奪いに行こうと話していた。比較的、相手のシャドーが中に絞っていたので、攻撃の起点になる動きが何本か出来たけど、もっと合わせたかった」と約3カ月ぶりの公式戦であったが、攻守に渡り手応えを感じていた。

槙野選手は「監督からサイドの高い位置を保つことを試合前から言われていた」と試合後に話していたように、両ストッパーがサイドの高いポジションをとっていた。DFラインを高くしてコンパクトを保った浦和は、ボールを失ってもセカンドボールを拾ったり、すぐにプレスを掛けて高い位置でボールを奪うことが出来ていた。

10分には、こぼれ球を拾った宇賀神友弥選手から逆サイドの関根貴大選手へと展開し、関根選手のクロスにズラタン選手が飛び込むものの僅かに合わず、13分にはズラタン選手が起点となり、興梠慎三選手からエリア内で受けた武藤選手がシュートを放つも川崎の身体を張った堅い守備でゴールを抉じ開けることが出来ずにいた。

20分には、槙野智章選手が武藤選手とのワンツーからミドルシュートを放つも枠を捉えることが出来なかった。主導権を握り、リズムあるパス回しで川崎のゴールを脅かす浦和だが、僅かにタイミングが合わずにシュートを撃てなかったり、クロスが合わなかったりと厳しい状況の中、先制点はとてもシンプルな形で生れた。

28分に小林選手がオフサイドになった間接FKを西川選手が前線のズラタン選手へとビルドアップし、ズラタン選手がヘッドで逸らしたところを興梠選手が、谷口彰悟選手と競り合いながらも身体の強さを見せ付けて抜け出し、GKの動きを見て冷静にループシュート!!あっさりと先制点を叩き出した。

興梠選手は「GKと1対1になって、GKが前に出て来ていたので、コースが無かったところでループだと思った。それが上手く入ってくれて良いゴールだったと思う」満足気な表情を浮かべた。

38分には武藤選手の仕掛けから宇賀神選手へと落としのパスを狙った宇賀神選手のシュートは枠の外と決定的なチャンスを生かせなかった。前半を1-0で浦和がリードしてこのまま折り返せると思った44分、左に流れた中村選手が起点となり大島僚太選手からパスを受けた森谷賢太郎選手が見事な反転から放ったシュートが決まり、前半の終了間際に同点とされてしまった。

西川選手は「前半から攻守の切り替えが早く、前線から守備をしてくれた。前半は、良い闘いが出来ていたのに、最後の失点が勿体無かった」と悔しそうに話し、岡本選手も「反転される前に、縦パスが入ったところで行く行かないの判断を全体で迷った。本当に勿体無かった。もっとはっきりとやれば良かった」と悔やんでも悔やみきれない様子で話した。

前半終了間際のゴールで試合を振り出しに戻した川崎は、船山選手に代えて、田坂祐介選手をピッチに送り込んできた。すると、徐々に試合の流れが川崎へと変わり始めた。

柏木陽介選手は「後半は、間延びしてしまった。前半みたいな試合を続けていかないといけない。前半の最後で遣られたのは痛かった。慎三がシャドーであんなに守備をやることはない。前線に張りついていて、もっとギャップを付く、裏を狙うもらう動きが足りなかった。前線に動きがないぶん、跳ね返されてしまった。もっと流動的に動いて良いと思う。今日は、マジで疲れた」と試合で全力を出し切ったようで、心身ともに疲れ切った表情をしていた。

押し込まれた浦和は、53分に川崎のCKのこぼれ球を拾って、興梠選手がドリブルでカウンターを仕掛けて走り込んだ武藤選手へ、しかし武藤選手のシュートはGK新井章太選手が立ちはだかり阻まれてしまった。

川崎に押し込まれて、セカンドボールも拾えずに厳しい展開とされてしまった浦和は、活性化を図るために岡本選手に代えて青木拓矢選手、関根選手に代えて梅崎司選手と2枚代えを行なった。

岡本選手は「持ち味の激しい守備は出来た。やっぱり出来ると思った。次こそ90分やりたい。甲府戦以降、メンバーに入れず苦しい時期に天野コーチに支えてもらった。有り難い」と支えてくれた天野コーチへの感謝の気持ちを口にした。

浦和は、那須選手を右のストッパーとし、ボランチの阿部選手をDFの真ん中に起用して、青木選手と柏木選手のダブルボランチで攻撃の組み立てを図って行った。

浦和の活性化に対して川崎は、負傷した小林選手に代えて小宮山尊信選手を起用し、車屋紳太郎選手をワイド、中野嘉大選手と田坂選手のツートップで対応してきた。

浦和は、ゲームの流れが変えられず厳しい状況に追い込まれると、ミシャ監督は最後のカードに高木俊幸選手を準備させ、足に不安がある那須選手に代えて攻撃的に出ることを選択した。

だが、交代が認められる前に流れが浦和へと傾き始めたと見ると、ミシャ監督は那須選手の交代を取り止めて、ズラタン選手に代えて高木選手を投入した。

78分には、中村選手がドリブルで切れ込んでスルーパスをエウシーニョ選手へ、エウシーニョ選手がシュートを撃たれたが、流れを掴みかけた浦和に前線への推進力が出始めた。

83分、柏木選手のアーリークロスのこぼれ球を拾った梅崎選手がワントラップから冷静にミドルシュートを放つもクロスバーに直撃!

梅崎選手は「前半もそうですが、チャンスで決めていれば・・・。シュートは練習していた形ですし、枠には入れたかった。悪く無いゲームは出来た。良い部分も沢山出せた。サイドを使うか、真ん中を使うか、ローテーションで上手く使っていけた。勝ち点3は欲しかったけど、残り1戦を全力で勝ちにいく」と身を引き締めた。

何としてでも勝ち点3を獲るために、浦和は攻撃的に仕掛けていく中で85分、那須選手に異変が起きた。FC東京戦後にずっと違和感があった左足ハムストリングが、遂に悲鳴を上げてしまった。だが、交代枠3枚は使い切ってしまっていた。

那須選手は痛みを抱えながらもピッチに立ち続けた。アディショナルタイムは、4分。両チーム共に攻守の切り替えが早くカウンターで攻め急ぐ感じになってしまった。

アディショナルタイムに入り、興梠選手のキープから青木選手へ、青木選手のクロスを高木選手がヘッドで合わせるもミートせず、90+4分にも柏木選手がドリブルで持ち込み高木選手へ、高木選手がゴールを狙うも相手DFに阻まれて決め切れず、タイムアップ。

ラストチャンスを生かせなかった高木選手は「3ポイントに勝ち点をしないといけない試合だった。ビックチャンスも生かし切れず、ヘディングシュートも迷いながらだった。止めてから撃っても良かった。最後に狙ったダイレクトのシュートもDFだった。最後の方は、全体的に切り替えが早く、カウンターになってしまった。スペースを見つけ辛い状況だった」と話し、「最後、全力で臨まないと何も自分たちに生れて来ない。チャンピオンシップに行くにあたって、年間首位を獲ることで違いが出てくる」

柏木選手は「3を取らないといけない試合。チームとしては全力を尽くして闘った。もともと自力は厳しいが、望みを繋いだと考えるしかない。ホームで勝って終わることが大事。年間1位を目指して闘う」と最終節に掛ける思いを話した。

前半終了間際の川崎の同点弾がひびき、後半は運動量も落ちセカンドボールが拾えない展開が続く中でも、最後まで闘う姿勢を見せた選手たちに惜しみない拍手が送られた。年間首位の座を掛けて、最終戦を全力で闘うことを誓い、選手たちは埼玉スタジアムをあとにした。

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