浦和フットボール通信

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【河合貴子の大原なう】天皇杯準決勝 vs柏レイソル戦<阿部、ズラタン、関根、武藤、柏木、那須、梅崎、李コメントあり(2015/12/29)

今日のポイント!「決勝を見据えての勝利」

ゲームを支配しながら、自分たちのリズムを崩さず、ゴール前を固めた柏の堅い守備に苦戦をした。90分で決着をつけたかったところだが、必要以上のリスクを冒さない闘いで選手たちは、良く我慢強く闘ったと思う。

吉田監督は「浦和は、当たり前ですが、タフなフィジカルを持っていて、完成された戦術を持った強くて、賢く、上手いチームだった」と脱帽していた。

柏の鋭いカウンターに対しても最後のところで那須選手をはじめ、槙野選手も森脇選手も良く身体を張っていた。柏木選手の負傷で急遽ピッチに入った青木選手もバランスを良く考えていたと思う。

阿部勇樹選手は「難しい試合になると思っていた。我慢して闘い、勢いのついている人が獲ってくれて、チームとして勢いが出る。失点0も良かった」と安堵の表情を浮かべながらも「続けてやって行くことは、簡単なようで一番難しい」と話した。共通理解の下でこの難しいことを選手たちは良くやっていた。

1発勝負の天皇杯で先の決勝まで見据えて興梠選手と李選手を温存させ、勝負に挑んだミシャ監督の采配は、延長まで2人を温存させるとは正直思っていなかった。後半の途中からでも温存した2人を投入して90分で決着つける闘いをしても良かったのではないかとまで思ってしまう。

だが、きっちりと結果を出して決勝へと駒を進めることが出来たのは、本当に良かった。選手たちは120分間、集中を切らさずに、我慢強く、最後まで諦めずに良く闘ったと思う。決勝を見据えて闘ったのであれば、しっかりと決勝でその成果を見せ付けたいところだ。

柏木の怪我は微妙な所

今年最後の公式戦となった第95回天皇杯全日本サッカー選手権大会・準決勝が、12月29日、味の素スタジアムにて浦和対柏の熱い一戦が13時キックオフで行なわれた。

中2日で試合が続く中、大阪で90分闘った浦和と仙台で退場者が出て120分闘った柏と大きなコンディションの違いがあった。柏は、準々決勝仙台戦で累積カードによって退場し出場停止となった秋野央樹選手代わりに中谷進之介選手をアンカーで起用し、疲労を考慮して中川選手に代えて茨田陽生選手、出場停止明けの鈴木大輔選手など3選手を入れかけて臨んできた。

浦和は、中2日の決勝進出を視野に入れて興梠慎三選手と李忠成選手を温存し、ズラタン選手と梅崎司選手を起用して挑んだ。

浦和のキックオフで始まった試合は、立ち上がりから浦和がゲームを支配していった。3分には関根貴大選手のドリブル突破からクロスをニアで武藤雄樹選手がシュートを放ってきた。

吉田達磨監督は「レッズのワイド、中盤に下りて来る選手を見切れないところがあるから5DFで行こう」と話し、アンカーの中谷選手がDFラインに入って5DFとし、2ブロックでゴール前を固めて来た。

ズラタン選手は「ハードなゲームだった。沢山のチャンスが作れたと思うが、前線のコンビネーションでチャンスを作るのは難しかった。だが、粘り強く闘ったし、柏には仕事をさせずに良い試合だった。守備では、行くところと行かないところを日々の練習で意識してきた。相手がブロックを退いてくるのは想定していた。プレスをかけるところで、早い段階でもいけたし、自分たちがブロックを退いたときに、オプションとしてロングボールを使うことも出来た」と話した。

主導権を握りながらも崩しきれない浦和は、関根選手が果敢にドリブルで仕掛けてクロスを入れていった。関根選手は「自分の中でリズムを持ってやりたいと思った。それを積極的に意識して、上手い判断で出来た。前半に良い形でチャンスを作れていた。しっかりと焦れずに闘えて、我慢してやれていた。それが、今日の結果に繋がった」と嬉しそうに話した。

22分には柏木陽介選手の右CKのこぼれを拾った森脇良太選手から柏木選手へと展開し、柏木選手のクロスのこぼれを阿部勇樹選手が豪快にシュートを放つも決まらず、その直後にも関根選手がドリブルからゴール狙うも決まらず、逆に25分には柏の鋭いカウンターの脅威に晒され、森脇選手が工藤壮人選手をファールで止めて、絶好のポジションでFKを与えてしまった。

FKを蹴るのは、準々決勝・仙台戦でFKでのハットトリックを決めているクリスティアーノ選手であった。クリスティアーノ選手のFKは、浦和の壁をかすめるように当たって軌道が変わりゴール僅か上へと外れていった。

30分、またも関根選手のドリブル突破からのクロスに武藤選手がフリーで合わせるものの決め切れず、浦和のサポーターは大きなため息に包まれてしまった。

武藤選手は「今日も僕達が、ボールを持って試合をした。チャンスがあって、僕が決めていたら90分で試合が終わっていた。相手は、ブロックで守ってカウンターを狙うサッカーだった。崩しきれず、神戸戦の時みたいに流動的に動くと言うよりも、前線のメンバーも違うので待ち構えてしまった。僕がポジションを取って、ゴールを決めるところだった。イージーなシュートミスだ」と悔しそうに話した。

浦和が主導権を握る展開の中でハプニングが起きたのは、39分だった。柏木選手がボールを持ちあがっているところを武富孝介選手がプレスを掛けて奪うと、柏木選手は左膝を抱えてピッチに倒れ込んでしまった。一端は、柏木選手は立ち上がりプレーをしようとしたが、自らピッチの外へ出て青木拓矢選手と交代を余儀なくされてしまった。

試合後、柏木選手は「やる気は満々なんですけど・・・。やりたい気持ちだ」と話した。「当たり負けして膝を持って行かれた感じ?」と尋ねると「そういうことになるかなぁ~」と俯いて「だいたい決勝まで行ったら試合に出られないジンクスが俺にはある。広島の時も累積で出場出来へんかった。自分の中では、行ける最善な準備をする。でも、痛いけど無理して試合に出て、チームに迷惑を掛けるのが一番イヤだ。俺がいなくても、チームは苦しんだが勝った。最後は、身体を張れていたし、ブロックを作るチームにプレスに行くところ、行かないところをはっきりしていた。元旦、試合を上で(観客席)で観ているならば、感じたことをチームに伝えられる」と話していた。柏木選手の怪我は、微妙な感じである。

関根選手は「陽介君がいなくなったことで、ダメージは大きかった。けど、代わりに入った選手がしっかりと役割を果たしてくれた」と話していた。攻守のバランスを上手く取っていた柏木選手の交代により、攻撃のリズムやバランスが変わっていったが、浦和がボールを保持しながらチャンスを覗っていたが、柏の堅い守備を崩すことが出来ずに0-0で前半を折り返した。

ミシャ監督は「我慢しながらプレーをすること」「カウンターに気を付けて切り替えを早くすること」「サイドはどんどん仕掛けていこう」「集中を切らさないこと」とこの4点を指示して選手をピッチへと送り出した。

後半に入ると柏は、前半に比べて中盤にプレスを掛けるようになってきた。吉田監督は「柏木君がいないならば、押さえているだけでなくプレッシャーを掛けていった。レッズがボールを持っている時のリズムをかなり掴みかけていた。スピード感に慣れたり、守備面で問題はなかった」と話した。

浦和が主導権を握る中で、柏も我慢強い守備から虎視眈々とゴールチャンスを狙っていた。60分には武富選手が起点となってクリスティアーノ選手から右サイドを走り込んできたキム・チャンス選手へと鋭いカウンターを見せたが、西川周作選手の判断の良い飛び出しでシュートを撃たさずにいた。

65分には、武藤選手からスルーパスを受けた梅崎選手が、73分にはズラタン選手の落としを槙野選手がゴール右上を狙うが決まらず。76分にも武藤選手のクロスをズラタン選手がヘディングシュートを放つもいずれも決まらず苦しい展開になってしまった。

那須選手は「我慢する闘いで、サイドからは打開できた。相手はカウンターを狙っていたが、上手くバランスが取れていて大ピンチはなかった。いつもならば、剥がしたところで真ん中が割れるが、武富がコースを切って来たし、サイドに出すしかなかった。相手が疲れて来て、必ず中が割れると思った。仕掛けのパスが命取りになるから、最善な注意を払った。また、1本のFKやセットプレーでやられる悔しさがあるから気を付けていた。僕と阿部と青木でGKを使って運んだり、セカンドを拾っていった」と話し、コンパクトを保ちながらも細心の注意を払っていた。

後半終了間際のアディショナルタイムには、クリスティアーノ選手からゴール前に飛び込んだ工藤選手へのパスを槙野選手が身体を張って止めて、柏のビックチャンスの芽を摘んだ。

後半、浦和が放ったシュートは11本であったが、柏のゴールを抉じ開けることが出来ず、試合は15分ハーフの延長戦へと縺れ込んだ。

ここまで温存していた興梠選手と李選手をズラタン選手と宇賀神選手に代えて投入。浦和は、攻撃の活性化した。すると94分、浦和は厚みのある攻撃から梅崎選手のヘッドの落としを李選手が合わせてシュート!しかし、ゴールネットを揺らすことは出来なかった。

101分には李選手のスルーパスに興梠選手がDFの裏を狙うが撃てずにいた。李選手は「ミシャから決勝に向けて、コンディションを整えるためにベンチスタートと言われたが、ここまで出番が引っ張られるとはね」と早くピッチに立ちたかったようだ。そして「ピッチに入って、慎三か僕のどっちらかが決めるだろう?!って言っていた。前掛りでやれているから、バランスを整えることを意識した。最後のフィニッシュやズラタンのヘディングシュートとかチャンスはあったが、決め切れていなかった。丁寧に崩していけば入ると思った」と話した。

武藤選手は「チュン君と慎三君が流動的に動いてくれた」と2人の動きで武藤選手の動きに拍車が掛かっていた。

しかし、チャンスを生かせずに延長前半を0-0で折り返した。

延長後半、ここまで動かなかった柏ベンチが、茨田選手に代えて栗沢遼一選手を投入に中盤の動きを活性化してきた。108分には、豊富な運動量を見せて来た武富選手の足が攣り大津祐樹選手を投入。柏も徐々に攻撃のリズムを作り出してきたが、試合の流れを引き寄せることは出来なかった。

そして、117分。待望のゴールが浦和に生まれた。関根選手がインターセプトして那須選手へと預け、那須選手から逆サイドの梅崎選手へと展開。梅崎選手が相手DF2枚と競りながらクロスを試みたが、DFにブロックされてしまった。しかし、そのこぼれ球にいち早く梅崎選手が反応しクロスを入れるとファーサイドで李選手が頭で合わせて、天皇杯3試合連続ゴールを決めた。

梅崎選手は「相手より上手く反応出来た。タッチとキックの感触が良かった」と笑った。決勝弾を叩き込んだ李選手は本当に嬉しそうに「良かった」と笑い「決めたい思いがあった。相手にくっつき過ぎたら点は獲れない。距離間を持って、スペースを意識した。突っ込んだら獲れるものも獲れない。みんなが諦めないで前線まで運んでくれた。みんなの思いが籠ったゴールだった」ととびっきりな笑顔を見せた。

また、那須選手は「青木が気を利かせて、那須さん上がって下さいって言ってきた。最後、チュンが決めた時も、2枚目の動きが大事で、後ろからの走り込みに止まったDFは弱いからここかで穴を空けてやろうと狙っていた」とニヤリと笑っていた。

試合開始から、主導権を握って攻め続けた浦和が117分に李選手のゴールが決まり、9年ぶりの天皇杯決勝へと駒を進めた。決勝の相手は、チャンピオンシップで煮え湯を飲まされたG大阪となった。柏木選手の怪我の状況も気になるところだが、チーム一丸となって天皇杯を掴み獲る!!

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