浦和フットボール通信

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河合貴子のレッズ魂ここにあり!「断ち切りたい悪夢」

J開幕から浦和レッズを追いかけている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。

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「桃栗3年、浦和は5年」と言える年になるように、邁進していくしかない

今年は、暖冬で穏やかな新年となった。しかし、浦和にとって2015シーズンラストゲーム、そして2016年の新年を飾るファーストゲームは、虚しく、切なく、悲しく、居た堪れない試合となり、心が温まる穏やかな新年とはならなかった。新年を迎えた喜びの挨拶が、傷ついた心を逆なでしていく。

広島時代に天皇杯の決勝で敗者となった経験を持つ西川周作選手は「元日に負けると、本当に最悪なんだ。まるで悪夢だよ」と元日決戦となるG大阪戦を前に二度とその悪夢を見たくない思いをこめて話していた。

浦和にとって、第95回天皇杯決勝を迎えるまで、悪夢を見たことは無かった。だから、G大阪に1-2で惜敗するまでは敗者の気持ちを知らなかった。ナビスコ杯の決勝で敗者になった時の悔しさとは、まるで違う悔しさであった。

決戦の相手が、今まで煮え湯を飲まされて来たG大阪だったこともあるが・・・。新しい年を迎えて敗者になると、未だに気持ちの整理がなかなか出来ない。西川選手が話していた悪夢が、浦和を愛する人々の心を闇の中へと突き落とした。

阿部勇樹選手は「新年早々、笑えなかった。申し訳ない。結果が出せず・・・。最高の始まりにならなかった」と悔しさを噛みしめて、こぼれ落ちそうな涙を我慢して味の素スタジアムを後にした。心が引き裂かれたように辛い。

天皇杯決勝から1週間を過ぎて、少しだけ冷静になり取材ノートを開いてみた。G大阪が天皇杯を高良に掲げる姿をじっと目に焼き付けていた選手たちは、ロッカールームに引き上げるとみんなで話し合っていた。

興梠慎三選手は「何で勝てないんだろって、ロッカーでみんなで話したが、分からない。サポーターも応援してくれて、自分たちもやった。勝負所で弱い。何でだろう・・・」と居た堪れない様子で話していた。

森脇良太選手も「何でなんだろう?何で・・・。何でこっちのシュートが入らないんだ。何で、あと1本!ここまで良い形で点が獲れていたのに、最後は獲れない。何でか、答えが出ない」と動揺していた。

取材ノートには、敗者となってしまった選手たちの戸惑いや悔しさ、憤り、そして悲しさで溢れていた。もう既に過去になってしまったことなのに、取材ノートを読み返すだけでも辛く重苦しい。気持ちの整理が出来ないのは、私だけだろうか・・・。

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2015シーズン、G大阪とは5度目の対戦となった天皇杯決勝である。当然、お互い手の内は分かっていた。浦和が放ったシュートは20本に対し、G大阪が放ったシュートは9本である。後半だけみても、浦和は13本のシュートに対し、G大阪はたったの5本であった。決定力の差だけの問題ではない。

東口順昭選手のスーパーセーブもあったが、シュートコースを限定させる守備やシュートコースを消す身体を張った徹底した守備によって、浦和が得意とするフリックを入れた攻撃は厳しいものとなってしまった。当たり前のことだが、ボールポゼッションをしていてもシュートを撃たない限り何も起こらない。

浦和は、シュートは、放っていった。GKと1対1の局面のシーンでシュートを外したとなれば、決定力の問題になってくる。大切なのは、ゴールを狙える距離と角度、スペースを如何に作りシュートまで持って行くかだ。この3つが揃わなければ、シュートを放ったとしてもゴールを決めるのは至難の業となってしまう。

攻撃において最も重要なことは、如何にシュートが撃てる局面を作り出してゴールを決めるかである。その局面を作り出すためには、ドリブル突破で相手DFを剥がしたり、ワンツーやスルー、ポストプレー、カットインなどのコンビネーションプレーで相手DF陣を崩す。もちろん、ラストパスの精度が重要であるが、ゴールに向かって縦や斜めに走り込むオフザボールの動きも大切だ。

浦和は、コンビネーションでG大阪のDF陣を崩しに掛かった。コンビネーションで局面が作れないと、一度最終ラインまでボールを戻し、G大阪の守備を前へ掛りにさせて再び崩しを試みた。それは、G大阪戦で何度も観て来た光景であった。

天皇杯の決勝を前にミシャ監督は「負けたゲームでも内容の悪いゲームをしたと思っていない」と過去のG大阪との対戦を振り返り話していた。確かに、ボールの支配率やシュート数などはG大阪を上回っているが、それを「内容が悪くなかった」とは言い切れないことをミシャ監督は、敗戦から分かっていた筈である。同じことをやっていては、何度対戦しても結果は同じである。本当に内容が悪くなかったら、勝者になっていた筈である。

言い方が少し乱暴になってしまうが、G大阪の戦術に嵌り、G大阪の手の中でボールを持たされ踊らされていた。それを打ち破るだけの策を打てなかったのだ。

浦和がG大阪の壁を打ち破るには戦術を変えるかコンビネーションの質を上げるしかないのだ。ミシャ監督は、フットボールにおけるフィロソフィーを簡単に方向転換する監督ではない。ならば、コンビネーションの質を上げていくしかない。

那須大亮選手は「一言で表しづらいが、決め切る力、守り切る力をもっと磨かないといけない」。阿部勇樹選手は「攻撃も精度を含めて上げていく。守備も良くなってきている。前から嵌めこむ守備とブロックを形成する守備と使い分けをしっかりとする。継続していかないといけない」と百戦錬磨の経験を踏まえて話していた。コンビネーションの質を上げるには、継続しかないのだ。

「石の上にも3年」と言うことわざがあるが、浦和にとってミシャ監督共に3年の月日はとっくに過ぎている。「桃栗3年柿8年」どんなものにも相応の年数が掛かり、手間暇かけて大切に育てて実がなる。継続をしていくことが、如何に大切なのか分かる。「桃栗3年柿8年」この歌には続きがあるのをご存じだろうか?!凄く長い歌なので省略すると「柚子の大馬鹿18年、林檎ニコニコ25年、女房の不作は60年、亭主の不作はこれまた一生、あ~こりゃこりゃ」と続くのだ。

2016シーズンで、ミシャ監督体制は5年目となる。今シーズン、浦和が栄光の実を実らすことが出来なければ遺伝的に異なる接ぎ木を迫られることとなるだろう。悪夢を断ち切る勝負の年になることをミシャ監督を初めとする誰も感じているはずである。

阿部選手は「1年後に、昨年の浦和は最高だったと言う年にしたい」と誓った。「桃栗3年、浦和は5年」と言える年になるように、邁進していくしかないのだ。

Q.精神的な疲労について教えて下さい。

A.運動をし過ぎることにより精神的に疲れると、身体の中のホルモンのバランスが崩れて筋肉の回復を遅らせてしまいます。オーバーユース症候群中には、精神的疲労もあります。意欲が落ちれば、ホルモンの分泌が悪くなりパフォーマンスが落ちてしまいます。軽いトレーニングをしながら、リフレッシュすることが大切です。トレーナーさんたちが、メニューを作り食事管理し、乳酸値を図ったりケアーをしていきます。40℃ぐらいのお風呂にゆっくりと浸かりリラックスして疲れを取ると良いでしょう。

川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。
http://www.kawakubo-clinic.jp/

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