浦和フットボール通信

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<ハイライト動画付き>【河合貴子の試合レビュー】明治安田生命J1リーグ1stステージ第4節vsベルマーレ湘南<槙野、西川、柏木、遠藤、武藤、李コメントあり>(2016/3/21)

今日のポイント!!「コンパクトに戦えた陰に阿部選手あり」

浦和も湘南もDFラインを高く保ち、コンパクトにして攻守の切り替えが早く拮抗した展開となった前半だった。

槙野智章選手が「前半、理想は0-0だった。チュン君の思いが伝わったシュートが入ったので良かった」と話していた。李忠成選手の思いっきりの良さが出たシュートが決まり、浦和は後半を楽に闘えたことは事実だ。

だが、良い攻撃は良い守備から生まれる。槙野選手は「ラインが高く設定出来て、押し上げが3m~5m高く出来た。クリアーした後に良いラインが出来ていた」と自信を持って話していた。

このDFラインを高く保つことが出来たのは、ボランチの阿部勇樹選手のポジショニングと優れたバランス感覚であった。

西川周作選手は「危険なところを潰してくれた。真ん中のラインの選手がしっかりとプレーすれば、守備はぶれないし、崩れない」と話し、2点目を決めた興梠慎三選手は「阿部ちゃんが利いていた。ボランチ2枚があれだけ良かったら、今日みたいな試合が出来る」と大絶賛していた。

興梠選手のゴールをアシストした柏木陽介選手がゴール前まで顔を出すことが出来るもの阿部選手がしっかりとしたリスクマネジメントをしているからである。

柏木選手も「湘南がプレッシャーが来る中で、落ち着いてプレーが出来た。90分通して闘い、力を出し切れた。俺と阿部さんと航で良い起点が出来た」と話していた。もちろん、前線からの追い込みがなければDFラインを押し上げることはできないが、ピッチの中央の縦ラインの関係が非常に良く守備が出来て、コンパクトになっていたために、攻守の切り替えがより一層早く出来て勝利へと結びつける攻撃が生まれたのだ。

湘南にスキルの違いを見せつけて快勝!!


寒暖差が激しい1日となり、午前中の好天気と裏腹に試合中は春雨となった3月20日。浦和は、今シーズン開幕して0勝2分け1敗と未勝利の湘南のホームに乗り込んでの一戦であった。ACL広州恒大戦から中3日と過密日程の影響から、コンディション面で不利な状況に置かれていた。試合開始前のロッカールームで槙野智章選手は「ガンバもFC東京もACLでアウェイから戻って来た時に運動量が落ちていた。自分たちは、それがないように運動量と闘うことだ」とチームメイトに話してピッチに向かった。

浦和のキックオフで始まった試合は、お互いにDFラインを押し上げて前線からプレスを掛けて激しいボールの奪い合いとなった。

初めての古巣対決となった遠藤航選手は「やり難さはなかった。むしろみんなの特徴は分かっているので予測は付けやすかった。気持ちの高まりで空回りしてしまうことはあるかも知れないが、出来るだけ落ち着いて、変な欲を出せずにと言うか、変なことを考え過ぎずに自分の出来ることをしっかり遣ることを考えてプレーしていた」と前節の福岡戦に続いて3DFの真ん中で落ち着いたプレーを見せていた。

武藤雄樹選手は「試合の立ち上がりだけ、相手DFがガツガツ来ていた。相手がうちのDFにプレッシャーを掛けて来たときに、はっきり裏を狙っていった。前半の途中からスペースがあった」と話していたように、徐々に浦和が主導権を握り始めた。

しかし、激しい湘南のプレスにラストパスやシュートがブロックされ、DF裏に抜け出しても僅かにタイミングが合わなかったりと決定的なチャンスが作れないでいた。

湘南も走力を生かして縦に早い攻撃を見せる中、13分に湘南のFKのこぼれ球から李忠成選手が抜け出してカウンターの決定的なチャンスを迎えるかと思いきや、その前に湘南のファール判定をレフリーはアドバンテージを取らずに止めてしまった。この判定に納得がいかないミシャ監督は、ベンチから飛び出して猛抗議をするシーンもあった。

湘南の前線からのプレスによって生まれた中盤のスペースを浦和は巧みに使い、セカンドボールもしかりと広って幅広く逆サイドに展開したり、外と中を連動した動きで湘南のゴールへと襲い掛かっていった。

34分には柏木選手からワンツーで抜け出した関根選手がゴールライン際からクロスを送るも中に詰めた選手と合わず、その1分後には、宇賀神友弥選手にクロスに興梠慎三選手が合わせるもシュートは枠の外。

なかなか湘南ゴールを抉じ開けることが出来ずに焦れる展開の中で、41分にパウリーニョ選手のパスを柏木陽介選手がインターセプトし素早く李忠成選手へと繋ぐと、李選手が思いっきり左足を振り抜きミドルシュートを放った。

アンドレ・バイヤ選手は、強烈なミドルシュートに動ぜず身体を張ってクリアーを試みるが、ヘッドに当たったボールはディフレクトしてゴール右隅へと吸い込まれていった。

先制点を決めた李選手は「身体が凄く切れていて、何の心配もなかった。シュートは撃たないと入らないからね。左足で撃つトラップが上手い感じで出来た。気持ちも身体も乗っている。年末から(天皇杯)の良い雰囲気で来ている。今度は、相手に当てないで決めたい」と苦笑いしながらも嬉しそうであった。

前半に浦和が放ったシュートは3本、湘南が放ったシュートは1本と如何に拮抗したゲームであったかが裏付けられる。

1点をリードしたミシャ監督は、更に追加点を狙い「集中を切らさないこと。バランスを崩さないこと。もっとサイドの1対1で仕掛けていこう」とハーフタイムに指示を出して選手を後半のピッチへと送り出した。

後半、1点のビハインドを背負った湘南は、気持ちを切り替えて立ち上がりから積極的に攻撃を仕掛けてきたが、試合巧者の浦和は落ち着いて湘南の攻撃を往なしていった。

そして浦和は、55分には観ている人々を魅了するコンビネーションとダイレクトプレーで武藤選手のヒールパスを受けた興梠慎三選手が柏木選手に預けて回り込み、再びパスを受けた興梠選手がゴール左へと綺麗に流し込み2-0とリードを広げていった。

アシストした柏木選手は「チュン君がスルーして、僕がトラップミスした分、左にもたらす時間が出来た。慎三が後ろから回って来たので感覚で出した。流動的で気持ちよかった」と笑みを浮かべた。

興梠選手は「武藤から受けて、横を見たらチュン君がいて、スルーしてから上手い具合に前に走ってくれたので、回り込もうと思った。切り替えした瞬間のプレーだった。連動した3人が近くにいたからコンビネーションが生まれる。落ち着いてゴールに流し込むだけだった」と話した。

その後も浦和は反撃の手を緩めることなく、60分には宇賀神選手のクロスをゴール正面で李選手がシュートを放つも決めきることが出来なかった。

圧倒的に浦和にゲームを支配された湘南は、70分に菊池大介選手とパウリーニョ選手を端戸仁選手と石川俊輝選手へと一気に2枚代えを行い、4-3-3とシステム変更を行い手薄だった中盤のスペースを埋める対策を取り反撃の機会を伺ってきた。

これに対して、疲れが見え始めていた武藤選手と宇賀神選手を青木拓矢選手と梅崎司選手へと2枚代えで対抗した。そして79分には、興梠選手に代えてズラタン選手を投入して前線で溜めを作ることを試みていった。

一方、湘南は最後の切り札として高卒ルーキーの神谷優太選手を投入。神谷選手は果敢に仕掛けて見せ場を作るも決められず。湘南に決定的なチャンスを与えることなく、2-0で浦和が完封勝利を収めた。

試合後に遠藤選手は湘南サポーターのところへ、岡本拓也選手は浦和のサポーターのところへ、それぞれが古巣のゴール裏へと深々と頭を下げていた。湘南のサポーターから「航!帰って来てくれ!」と遠藤選手へ悲痛な声が飛び、浦和のサポーターからは「オカタク~来年は戻って来いよ!待ってるぞ!」と岡本選手の活躍を願いレンタル移籍後となる来シーズンの期待の声が飛んでいた。チーム事情によって遠藤選手と岡本選手が置かれている立場の違いを痛感させられたシーンであった。

試合中に振り出した春雨はいつの間にか止み、浦和の快勝に酔いしれる夜が訪れていた。

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