浦和フットボール通信

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浦和への伝言2016 大原ノート – vol.18 田島ヶ原

浦和一女高OGのおふたりが、駒場~大原~浦和美園を巡る郷土の自然や史跡を楽しく散策します。

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さくら草について書かなくては、と思っていたのですが、書くからには画像が欲しい。そうなると咲いているときに取材に行って、それから記事をアップすると…皆さんが興味を持って下さったときにはもう最盛期をすぎてしまいます。そんなこんなで毎年機会を逃してしまったのですが、今年は咲く前の景色でもいいかなと考えて書くことにしました。そんなこともあろうかと黒木カメラマンが昨年撮影した画像もあるそうです。

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行ってきました、田島ヶ原。広々と気持ちはよいけれど風が冷たい! 駐車場から自生地に向かうとさっそくシロバナタンポポがお出迎え。現地でいただいたパンフレットによると早春の田島ヶ原ではさくら草だけでなくノウルシ、アマナ、シロバナタンポポなどの花を見ることができるそうです。さくら草もちらほらと濃いピンクの花を付けています。アマナというユリ科の白い小さな花は初めてみました。アップで見るととても素敵です。自生地保護の柵の内と外では植物が全く違います。

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さくら草は埼玉県の花、そしてさいたま市の花でもあります。昔から荒川沿いにたくさん自生していた、まさにこの土地ならではの野草です。うららかな春の日、荒川土手に出かけた人々を楽しませたことでしょう。今は田島ヶ原の自生地が天然記念物に指定されていることからもわかる通り、他で自生しているさくら草を見ることはほとんどできません。でも、可憐な花は愛されて、江戸時代から園芸品種として栽培され続けているそうです。

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ところが、この桜草、“桜”の名前が付くのは形だけではないのだなと納得する点がもう一つあります。咲いている期間が短いのです。現在ただいま、我が家の西洋さくら草は去年の秋から冬を越してずっと咲き続けています。でも、日本さくら草は春だけです。日本人の好みなのかもしれませんね。

西洋でもさくら草、プリムラははかなさの象徴とみられていたそうです。花言葉を検索してみると「初恋」「あこがれ」「青春の歓びと悲しみ」「若い時代と苦悩」などなど、やはり早春の初々しさとはかなさを連想させる言葉が多いですね。少しポジティブなところでは、「自然の美しさを失わない」「清らか」「無邪気」「青春」「少年時代の希望」など。ギリシャ神話では花の女神フローラが、恋人のニンフを失って悲しみのあまり死んでしまった息子をこの花に変えたということだそうです。しかし、ギリシャ神話では美青年が早春の花になってしまう確率が高いように思うのは私の記憶だけでしょうか。水仙(ナルキッソス)、ヒヤシンス、アネモネ、ここにさくら草も加わりました。ギリシャでは美青年って、早春の花のようにパッと咲いてパッと散ってしまうイメージなのでしょうか。

ついでに記憶の中から女性が変身した植物を思い出してみると月桂樹、向日葵、あとは、ロータス(蓮)。う~ん、けっこう力強さを感じる種類が多いような。

そういうわけで今年田島ヶ原に出かける方は、可憐な早春の花に美青年の面影を探してみてくださいね。もちろん希少な自生地の環境を見守り支えてくださっている皆さんに感謝しつつ。「田島ヶ原サクラソウ自生地を守る会」というボランティア団体の方がテントにいらっしゃいました。入会者募集だそうです!

たくさんのサイトにたくさんの花言葉があるので、正しいかどうかは確認のしようがありませんが、私が気に入ったのは「長続きする愛情」「運命を拓く」。江戸時代から長く愛され続けたさくら草、冬枯れの大地から他に先駆けて咲く可憐な花にふさわしいと思いませんか。そして、これなら某赤いチームのエンブレムに採用されてもおかしくない花言葉とも思えます。

さくら草まつりは4月の第3日曜日だそうです。今年の日程は下記に。でも、ボランティアの皆さんによると、さくら草まつりには最盛期を過ぎてしまうので早めがお勧めだそうです。さくら草以外のかわいい花たちにも会えます。桜も咲き始めています。桜とさくら草、ダブルのお花見なんて贅沢ができそうです。休日は混みます。公共交通機関でお越しください。

さくら草まつり
http://www.stib.jp/event/data/sakurasou.html

田島ヶ原サクラソウ自生地を守る会
http://genki365.net/gnks13/mypage/index.php?gid=G0000368

文/百瀬浜路(ももせ・はまじ)
東京都生まれ。埼玉大学附属中学、浦和一女高、多摩美術大学卒業後、(株)世界文化社に入社。保育園、幼稚園のための教材企画、教材絵本、保育図書の編集に携わる。ワンダーブック等の副編集長などを経て、同社ワンダー事業本部保育教材部副参与。2015年1月をもって退職。保育総合研究会会員。蕨市在住。

写真/黒木葉子(くろき・ようこ)
川口市生まれ。埼玉大学附属中学、浦和一女高、千葉大学工学部写真光学科卒業。大学在学中から研究テーマとしていた撮影技術を生かしフォトグラファー、イラストレーターとして活躍。セツ・モードセミナー勤務を経て、現在フリーランス。川口市在。

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