浦和フットボール通信

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【河合貴子の試合レビュー】2016プレナスなでしこリーグ1部・第1節 vs日テレ・ベレーザ<栗島、北川、筏井、塩越、池田、吉田監督コメントあり>(2016/3/28)

今日のポイント!「栗島選手は、今日の試合の影の功労者でありMVPだ」

前半のプレスの掛け方は、見事であった。90分はもたないと誰もが感じていた。前半の前線から嵌め込む守備と後半のブロックを形成する守備を使い分けていた。

特に、栗島朱里選手と猶本光選手のバランスと距離感が素晴らしかった。仙台に移籍してしまった岸川奈津希選手とは違い、栗島選手の持ち味が出るようにボランチ2枚を並べるポジショニングに吉田監督は変えた。その監督の期待に見事に栗島選手は応えたのだ。

「バランスを意識して、距離感を大事にした。でも、後半の早い時間にギュンという感じで足が攣って動けなくなってしまった。体力と気持ちはあったが、足が・・・。水をいっぱい飲んだのに、バナナも食べました。なのに足が攣ってしまった」と悔しがっていた。

栗島選手は、2014年の左足前十字靱帯損傷、半月板、内側足副靱帯損傷と大怪我を負って苦しんだ。怪我が完治してからも思ったプレーが出来ずにいた。苦しんできた怪我を負ったのは、味の素フィールド西が丘の日テレ戦であった。約2年におよぶ年月を重ねて、その同じピッチで輝きを放ったプレーを見せた。引き分けで終わった試合であるが、浦和が素晴らしい見ごたえのある守備が出来たのは、中盤で良いバランス、良い距離感を保ちプレーしていた栗島選手のお陰である。栗島選手は、今日の試合の影の功労者でありMVPだと思う。

遂に!なでしこリーグ開幕!


春の訪れと共に、待ちに待ったなでしこリーグが開幕をした。浦和レッズレディースは、開幕戦をアウェイの味の素フィールド西が丘で迎えた。対戦相手は、連覇を目指す昨シーズンの女王である日テレ・ベレーザである。

開幕戦のスターティングイレブンには、GK池田、DF乗松、長船、高畑、北川、MF柴田、栗島、猶本、筏井、FW吉良、後藤が名を連ねた。対する日テレは、石清水梓選手を中心となりボランチに阪口夢穂選手たちベテラン勢ががっちりとDFを固め、前線にはU-20日本女子代表候補の籾木結花選手や長谷川唯選手たち若手が豊富な運動量とテクニックで挑んで来た。

日テレのキックオフで始まった試合は、開始早々ボールを保持して繋いでくる日テレに対し、前線から積極的にプレスを掛けて嵌め込む守備から数的優位でボールを浦和が奪う守備を見せていった。

吉田監督は「前半を飛ばして、後半はもたないのは分かっていたが、前半を飛ばしていく戦略だった」と打ち明けた。その言葉通り、選手たちは豊富な運動量で良い守備から攻守の切り替え早くゲームを支配していった。

そして7分、柴田華絵選手がドリブルで攻撃のスイッチを入れて相手DFを引き付けると、吉良知夏選手からオーバーラップして来た乗松瑠華選手へ、乗松選手のクロスをファーサイドで後藤三知選手が冷静に決めて浦和が先制点を叩き出した。

早い段階で失点した日テレは、DFラインを高く保ちコンパクトにしてレッズ陣内へと攻め込んできた。浦和の激しい守備はボールや人に対しても1歩早く崩されてもゴール前で高畑志帆選手と長船加奈選手の二人のセンターバックが身体を張ってシュートブロックをしてゴールを許さなかった。

栗島朱里選手は「ビビらないでもっと繋いでやれば良かった。1点早く決められて、追加点を奪えば相手はシュンっとなったのに・・・」と悔しそうに話しながら「サイドバックが攻撃の起点になれるようにルカ(乗松選手)もヒカル(北川選手)も上がれるように、上がったところのカバーを意識した」と話した。

浦和陣内に押し込まれる時間が続く中で、虎視眈々と追加点を狙いカウンターを仕掛けるが前線で溜めを作れずにいた。日テレに主導権を握られているようにも見えたが、浦和が前半に放ったシュートは2本、日テレが放ったシュートも2本と如何に浦和の守備が日テレの攻撃を上手く潰していたかが分かる。前半を1-0で浦和がリードで折り返すこととなった。

日テレは、打開策を求めて後半から上辻祐実選手に代えて隅田凛選手を投入してきた。浦和は、前半の前線からの激しいプレスの嵌め込む守備から一転して、ブロックを形成する守備へと切り替えていった。後半も立ち上がりから一進一退の攻防が続く中、55分に筏井選手の溜めから北川ひかる選手がドリブルで駆け上がりシュートを放っていった。

北川選手は「開幕戦と言うことでいろんな気持ちがあって、強い気持ちでやろうと臨んだ。相手にサイドを遣らせない。1-0で折り返して、ブロックを作り守りながら攻撃に行こうと思った。シュートは撃ったけど、もっと撃っても良かった」と話した。

ゲームは徐々に日テレが主導権を握ってコンパクトにしてセカンドボールを広い厚みのある攻撃を見せていった。68分には、浦和デビュー戦となった筏井選手に代えて白木星選手を投入し、後藤選手を2列目に下げて吉良選手と白木選手のツートップへと代えた。

筏井選手は「ボールを持てる相手だったので、狙い通りの守備が出来た。何回かボールを奪って攻撃を試みたが、攻撃に人数を掛けられなかった。これからもう少しコンビネーションを高めていきたい。2点目を獲れたら違っていたと思う。もっと顔を出してあげられたら、サイドバックも上がれる。北川にオーバーラップで攻撃に来てもらってチャンスもあったけど、単発なクロスしか入れられなかった」と悔しさを滲ませていた。

74分、籾木選手が中央から有吉佐織選手へ、有吉選手はゴールライン際までドリブルで切れ込みマイナスのクロスを入れてきた。これを何とかクリアーするもこぼれ球を隅田選手に拾われて同点。日テレに押し込まれて耐え凌いでいた守備が、ついに抉じ開けられてしまった。

76分に浦和は、足が攣って動きが鈍くなった栗島選手に代えて長野風花選手を投入。しかし、勢いづく日テレの攻撃に浦和は劣性に立たされてしまいボール奪っても繋ぐことが出来ずにいた。そして、81分にエリア内で日テレの選手が倒されてあわやPKかと思いきやノーファールの判定。更には、日テレの激しい前線からのプレスに北川選手が接触で倒され負傷。怪我の状態を見極めるのに時間が掛かり、思わず吉田監督が「やれるなら入れ!!」と檄を飛ばすシーンがあった。

北川選手は「膝と膝がぶつかって、厳しい状態だった。交代したくない気持ちがあって焦っていたが、あの声があったからやれた」と吉田監督の声で背中を押されていた。

そして、84分には後藤選手に代えて塩越柚歩選手を投入して攻守を活性化していった。塩越選手は「守も攻も積極的にやれと言われて入った。思いっきり走ることを意識した。交代で入ると相手も味方も疲れているから走ろう!相手のDFラインも高かったからとにかく走った」と豊富な運動量を見せつけていった。

87分には、籾木選手が強烈なシュートを放ってきたが、ここは守護神の池田咲紀子選手がファインセーブでゴールを死守した。池田選手は「撃って来るとは思わず、予想していなかったが外にクリア出来た」と笑顔を見せた。「後半は、みんなバテバテだった。前半は、ボールを動かして来る相手に我慢強く追いかけ奪って、走りきってみんなやれた。後半はブロックをセットしたが、守備が低い位置になることが多くなってしまった」と池田選手は話していた。

最後に決定的なチャンスを作ったのは浦和であった。白木選手からパスを受けたフレッシュな塩越選手が、左サイドをドリブルで駆け上がり、DFとGKの間に狙い澄ましたクロスを送り、柴田選手がシュートを放つも決め切れずに、試合終了を告げる無情のホイッスルがなった。ラストチャンスを生かせずに1-1の痛み分けとなったが、昨シーズンの女王・日テレを相手に、充分に手ごたえを感じることが出来る試合であった。

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