浦和フットボール通信

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河合貴子のレッズ魂ここにあり!「風雲異端児 ~駒井善成選手」

J開幕から浦和レッズを追いかけている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。

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駒井選手のようなタイプは初めてであった。今まで浦和では見たことが無い

身体の重心を低く保ち、顔をしっかりと上げてピッチの中央から勇敢に突き進む。駒井善成選手の目は、ゴールを確実に捉えている。

駒井選手は、厳しいポジション争いの中で「俺を使って見ろ!」と闘志に燃える目をしている。京都から浦和にやって来た男は、闘いの場を求めていた。

駒井選手は、小学校4年生のころから京都の下部組織で育って来た。豊富な運動量と切れ味鋭いドリブルで「天才ドリブラー」「J2最強のドリブラー」と京都で名を馳せた。

駒井選手がボールを持つと、一瞬にして相手DFが置き去りになり、例え囲まれていたとしても柔らかい足首を器用に使いテクニックで打開していく。観ていると実に軽快で、気持ちが良い。だが、天才は一日して成らず努力から身に付けたことが、駒井選手の居残り練習をする姿が物語っていた。

練習が終わると駒井選手は、居残りシュート練習に必ずと言って良いぐらい汗をかく。そして、終わるとドリブルのテクニックに磨きを掛ける姿があった。

ある時は、タッチライン沿い追い込まれたシーンを想定して、またある時はヒールを巧みに使い方向を変えてDFを欺くフェイントを魅せる。相手DFがいなくても、観ているとそこにDFの姿がイメージ出来る。

ある日の駒井選手の居残り練習で、我が目を疑った。横から来るパスに対して、つま先トラップでL字を描くように直角にボールコントロールして、実に正確につま先でドリブルを始めたのだ。居残り練習を一緒にやっていた李忠成選手や武藤雄樹選手と対峙しながら、動きを先読みして、ボールの勢いを殺したりつま先ドリブルでボールを運ぶリズムを変えていた。

駒井選手は「インサイドトラップで方向を変えるよりも、つま先トラップの方が身体の向きからしても素早く前に運べる。メッシもネイマールもやっていた」と目を輝かせていた。確かに、横からくるボールに対し半身になってインサイドトラップするよりは、つま先トラップの方がその先の展開に素早く移れる。

だが、つま先トラップはボールの中心を捉えるのは難しい。少しでもズレると直角には曲がらない。インサイドトラップの方が正確である。つま先トラップには、相当なテクニックが必要になってくる。

もちろん、味方の横パスのスピードや方向、タイミングも鍵となるが、駒井選手は味方の横パスに上手く合わせてDFの意表を突くトラップからの変幻自在なドリブルを魅せた。

今まで浦和には、足首の柔らかさでボールが吸い付くようなドリブルを魅せた永井雄一郎選手や重心を低くして果敢に相手DFに仕掛けるドリブルを魅せる田中達也選手、パワーとテクニックを巧みに生かしたドリブルを魅せるエメルソン選手、ドリブルでカットインしてゴールを狙う原口元気選手など様々なドルブラーたちがいた。

だが、駒井選手のようなタイプは初めてであった。今まで浦和では見たことが無い、風雲異端児ドリブラーだ。居残り練習をする駒井選手の姿を観るたびに、楽しくて心が躍った。

そのテクニックで駒井選手は、ボランチ、シャドーもワイドも出来る。「ユースのころからいろんなポジションをやって来た。京都時代のボランチのプレーを観ていなかったら、ミシャさんは僕を欲しいと思わなかっただろう」と駒井選手は言った。

京都時代にボランチを任された駒井選手は「京都の時に、ボールが来なくて苦労した。集めるのに大変だった。ボールを引き出して、引き出して、頭を使いながらやっていた」と苦労した分、状況判断が身に付きドリブルだけでなく、パスの展開力を付けていったのだ。

3つのポジションをこなせる駒井選手は「器用貧乏にはなりたくない!」とはっきりとした口調で話した。

「ポジションによって理想のプレースタイルは違う。ボランチだったら、イニエスタ。パスがあると見せてクッと中に入って行く。前だったら、メッシ。ポジションでスタイルを変える」と自信たっぷりに笑った。

「バルサが好きなの?!」と尋ねると「特にバルサ好きではない。リヴァプールのジェラードが好きだった。リヴァプール一筋でやって来た熱いところが好きだ!あっアーセナルも好き」と駒井選手をサッカー好きの子供のように瞳が輝いた。

元イングランド代表のスティーブン・ジェラード選手は、中盤のポジションであればどこでもこなせて、リヴァプールで16シーズン活躍しクラブ史上3人目となる700試合出場を果たした偉大な選手である。

理想のプレースタイルと憧れの選手は、どうやら違うようだ。駒井選手と話していると面白い。その人間性が風雲異端児ドリブラーに繋がっているように感じた。

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浦和の心臓部であるボランチは、阿部勇樹選手と柏木陽介選手が任されている。青木拓矢選手も担ってきた。他にもU-23日本代表でボランチのポジションを任せる遠藤航選手や那須大亮選手もボランチが出来る。それぞれの特徴を生かしたボランチのスタイルが観られる。

浦和に移籍して数か月しか経ってない駒井選手は、まだ本来の能力が発揮出来ずにいる。「浦和はスタイルが確立している。判断の速さをやっていかないと駄目だ。技術より判断だ。常に周りを見て次の展開を考える。判断が良くなれば、技術が生きる」と判断力を磨いている。

浦和のコンビネーションサッカーに慣れるのには、まだまだ時間が掛かるのは致し方ないことだ。だが、ボランチのポジションから、ゴールに向かう直線的なドリブルは実に面白い。いや、ワイドでもシャドーでも良い、浦和の風雲異端児ドリブラー駒井選手が、ピッチと言う名の戦場で旋風を巻き起こす。

Q. 膝の軟骨について教えて下さい。

A. 関節の表面には必ず軟骨があり、上の大腿骨と下の頸骨にそれぞれ軟骨が4ミリづつ付いています。更に、骨と骨との間のクッションに半月板があります。半月板も軟骨の一種です。軟骨は、繊維軟骨、弾性軟骨、硝子軟骨と軟骨組織に違いがあります。半月板は、繊維軟骨なので遊離体にはなりません。また、膝のお皿の裏にも軟骨はあります。何処の軟骨が剥がれて落ちたのか、剥がれた状況が問題になってきます。

川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。http://www.kawakubo-clinic.jp/

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