浦和フットボール通信

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河合貴子のレッズ魂ここにあり!「ピッチで闘う責任を背負って~阿部勇樹選手」

J開幕から浦和レッズを追いかけている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。

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100試合フル出場を達成する道のりは、並大抵の努力ではなし得ない

ベガルタ仙台戦で、100試合フル出場の偉業を成し遂げた阿部勇樹選手。試合後に「これでサッカーを辞めるわけじゃないんだから・・・」と少し照られながら阿部選手は笑い「退場したのが、清水戦だったと思う。100試合?数え間違いじゃない?!」と戯けて見せた。

フィールドプレーヤーとして、広島の水本裕貴選手の137試合、元広島の服部公太選手の126試合に次ぐJ1史上3人目であった。

ピッチに選手が立ち続けると言うことは、そう簡単なものではない。戦術にあったプレーが出来る技術はもちろんのこと、イエローカードの累積や一発退場となるレッドカードをもらわないプレーをすることも大切な要因であるが、一番恐いのは怪我である。

今シーズンの開幕戦となった柏戦の終了間際、競り合いの中で相手の肘が顔面を直撃した阿部選手はその場に倒れ込んだ。口元周辺から流血し、手にした白いタオルは真っ赤に染まっていた。

2-1とリードはしているものの交代枠も既に使い果たした状況の中で、柏の鋭い攻撃の一発で同点に追いつかれる危機感が襲い掛かった。

アディショナルタイムは6分。口の中まで切った傷は深く、流血は止まらない。メディカルスタッフは、応急処置を施して阿部選手の口を塞ぐような形で鼻から顎に掛けて首の後ろ側までぐるぐる巻きにしたのだ。

確認をする第4審判が、阿部選手のパンツに血が付いていることを指摘すると、その場に置いてあった飲み水を手に阿部選手は自ら必死に洗い流した。

1分、1秒でも早くピッチに戻りたい阿部選手の思いが伝わって来て胸が熱くなった。

残り数分を残された10人で守り抜く選択も出来たはずである。それでも阿部選手は、ピッチへと戻っていった。どんなに息苦しかったことだろうか・・・。ピッチに戻った阿部選手は、鬼気迫る姿で最後の笛が鳴るまで闘い続けた。

フル出場を続ける中で、接触からの流血や打撲で治療を受けるたびに阿部選手は立ち上がり、何度も何度もピッチへと戻り闘い続けた。打撲や流血する切り傷の痛さでプレー出来ないと判断して、選手交代をすることは良くある話である。

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阿部選手は「痛みに強い」という表現が的確かどうかは分からない。「阿部ちゃんがね、痛いって言ったらそれはもう終わりを意味する。プレー出来ない怪我だと覚悟する」とメディカルスタッフが以前話してくれたことがあった。

阿部選手は、痛みを我慢することが出来るメンタル的な強さを持っているのは事実である。

阿部選手は「チームが勝つために、自分が出来ることをやれば良い。チームの勝利が全てなので、それ以外のことは考えない。それは、この先も変わらない」と口癖のように言う。ピッチで闘う者の責任があるから、何度でも立ち上がり阿部選手は闘い続けるのだ。

そして、骨折や肉離れ、靱帯損傷など大きな怪我に繋がらないプレースタイルも阿部選手が100試合フル出場を果たした要因の1つである。視野を広く保ちゲームの流れを読み、ポジショニングや判断力に優れている。そのため、大きな怪我に繋がるような無理な体勢でインターセプトやビルドアップをしなくて良い。また、何よりも身体のケアーに気を遣っている。

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疲労の蓄積は、大きな怪我を呼び戦線離脱を余儀なくされる。ACLとJリーグを闘う過密日程が続く中、阿部選手は「中3日や中2日は、別にどうってことない。中1日の経験しているから恐くない」とニヤリと笑った。

だが、試合前日練習などコンディションによって別メニューで調整する姿を見かける。また、「試合後のケアーのやり方を変えた。2年前か3年前ぐらいからかなぁ・・・。試合が終った後に水風呂に入るようにしている。大原は、夜7時の試合後でも、12時まで開けてくれる。自分に合う合わないがあると思うし、いろんなやり方があると思う。合うと思ったことをやれば良い。楽しみながらやりたい」と話した。

試合後の水風呂は、神経の興奮を抑え、過度の筋肉痛やむくみを和らげる効果があり、疲労を回復する効果があると言われている。

試合後、阿部選手は水風呂に入るためにわざわざ練習場に出向き、90分闘った身体を癒やしていたのだ。また、「どんなものを食べているのか?!」と競技は違うが同じアスリートとしての興味から、テニス界で圧倒的な強さを見せつけるノバク・ジョコビッチ選手の『ジョコビッチの生まれ変わる食事』著著を阿部選手は手にした。

闘うための身体つくりに、とことん探求し続けていたのだ。100試合フル出場を達成する道のりには、並大抵の努力ではなし得ないことを裏付けていた。

そして、「メディカルのトレーナーさんや家族の支えで助けてもらっている。そういう人たちへ感謝をしないといけないけど、試合に出て勝利することが恩返しだと思う。まだまだ恩返しが足りない」と身を引き締めて話した。

2013年5月11日埼玉スタジアムの鹿島戦から始まった阿部選手のフル出場の記録は、ここで終わりではない。「チームが勝つことが大事!もっともっと走る!」と照れながらまたニヤリと笑った。

阿部選手は、この先もずっと勝利を目指し闘う責任を背負って、ピッチに立ち続けていく。

Q. 足首の捻挫で骨挫傷を起こした場合、どうすれば良いのでしょうか?

A. 怪我した当初は、アイシングして固定は必要です。後は、安静にして自然回復を待ちます。ただ、捻挫は靱帯を損傷していることです。ですから、上から下に圧力が強いところで捻ると靱帯が切れて、骨の中でダメージを受けます。単なる捻挫ではなく、骨挫傷している可能性はあります。また、骨挫傷になると軟骨損傷する可能性も約10%あります。軟骨が損傷して剥がれ落ち、ネズミ(遊離体)となってしまいます。しっかりと検査をして適切な治療が必要です。

川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。http://www.kawakubo-clinic.jp/

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