浦和フットボール通信

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河合貴子のレッズ魂ここにあり!「男の誓い~駒井善成選手」

J開幕から浦和レッズを追いかけている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。

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泣き崩れた駒井に駆け寄り、掛けたキャプテン阿部の言葉

PKスポットにゆっくりと向かう足取りは、堪えきれないほどの緊張感に包まれていた。

ボールをセットして、気持ちを落ち着かせるように「ふぅ」と吐いた息も張り詰めた心臓の鼓動に打ち消されてしまっているようであった。

「絶対に決める」「決めなければならない」。その思いが身体全体にのし掛かっていた。

GKの逆を突くイメージで細かくステップを踏んだ渾身のPKは、自分の思い描いたボール軌道ではなかった。ボールの行方を確認した駒井善成選手の頬が、涙で濡れていた。PKを決められなかった自責の念は、男の涙となって流れ落ちた。

PK戦へと縺れこんだACLラウンド16のソウル戦は、5人目まで蹴る順番が決まっていた。しかし、5人目以降はセンターサークルの中で選手が名乗り出てPKスポットへ向かったのだ。

120分の死闘を闘い抜いた選手たちの足は、既に限界に達していた。8人目に駒井選手が手を上げた。途中出場した駒井選手にはPKを決める余力が充分に漲っていたのだ。だが、結果は決めきることが出来なかった。

「ソウル戦のPK、緊張していた。普段は緊張する方じゃないんだけど・・・。緊張が身体にきていた」と駒井選手は遠く見つめて話した。

「僕が外して、裏切ってしまった。今日の結果は僕のせいだ。GKの逆を取れなかった。甘さを実感した。緊張してGKに合わせてしまった」

決めきることが出来なかったPKのシーンを駒井選手は心に刻むように話していた。ACLラウンド16のソウル戦の敗戦は、PKを決められなかった駒井選手の責任ではない。ホームのソウル戦であと1ゴール決まっていたら・・・。アウェイで1ゴール決まっていたら・・・。延長のアディショナルタイムを守り切ることが出来ていれば・・・。思い起こせば、あの時、あのシュートが・・・と切りがない。

敗戦は、監督を始めとするチーム全体の責任なのだ。5月25日のソウル戦から時が流れた。

「未だにPKのシーン、あの試合は観ないですねぇ」と駒井選手は苦笑いした。そして、その心の思いを覆い隠すように笑顔を見せ「5月は終わった。これから大事な5連戦が始まる。あの悔しさ、あのままでは終わらせない。国内タイトルを獲って、またACLに挑みたい。自分の失敗から逃げずに成長に繋げるんだ」と前を向いた。駒井選手の心に刻まれ思いは決して癒えることはない。だが、駒井選手の心を駆り立て奮起させたのは阿部勇樹選手であった。

PKを止められた駒井選手のことを責める者はいない。むしろ、その勇気に誰もが感謝と敬意を表していた。浦和のACLラウンド16の敗退を告げる悲しい笛が鳴り響いた瞬間、ピッチに思わず泣き崩れた駒井選手に駆け寄り、助け起こしたのはキャプテンの阿部選手であった。

「『このままでは、本当の意味で負けた気になる。生かすために成長だ』阿部さんに言われた。キャプテンについて行く。阿部さんにシャーレを掲げてもらうんだ」と駒井選手は力強く話した。

来年のACL出場権を巡り、浦和の新たな闘いが始まった。先ずは、Jリーグファーストステージ制覇である。ファーストステージ、浦和に残された試合は5試合。6月11日のホーム鹿島戦を皮切りに、15日にはG大阪戦、18日には広島戦とアウェイ2連戦となり、ホームに戻り22日にはFC東京戦、25日はファーストステージ最終節となる神戸戦と過密日程となる。

14節を終了して、首位を走る川崎は9勝4分け1敗で勝ち点31、2位の鹿島が9勝3分け2敗で勝ち点30、2試合少ない浦和は、8勝3分け1敗勝ち点27で3位である。

ファーストステージを征するためには、鹿島との直接対決に負ける訳にいかない。

駒井選手は「この6月は、本当に大事なんだ」と身を引き締め「ポジティブに切り替えて、まずは練習を始めチャレンジしていくことが大事だ。学べるチャンスは沢山ある」と失敗を恐れずにチャレンジしていく姿勢を見せた。

あの日流した男の涙が、「自分の失敗から逃げずに成長する」「国内タイトルを獲る」「来年、ACLの舞台に立つ」「阿部さんにシャーレを掲げてもらう」男の誓いとなった。

川久保整形外科がリニューアル開院しました。平成28年5月6日(金)より新クリニックにて診療を開始しています。MRIなど最新施設を備えて、より良い環境の下での医療とサービスをご提供していきます。http://www.kawakubo-clinic.jp/

川久保整形外科

川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。http://www.kawakubo-clinic.jp/

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