浦和フットボール通信

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河合貴子のレッズ魂ここにあり!「力強く、しなやかに~伊藤涼太郎選手」

J開幕から浦和レッズを追いかけている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。

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「試合出て、浦和を勝利に導くゴールを俺が決める」心に秘めた思い

Jリーグファーストステージで終盤に失速した浦和は、4試合ノーゴールと梅雨空のように暗雲が立ちこめている。その暗雲を吹き飛ばすように、ここ最近の練習のミニゲームで気迫を見せる選手がいた。伊藤涼太郎選手だ。ボランチかトップ下に入り、隙さえあれば豪快なシュートを放ち主力組のゴールを脅かしている。

居残り練習を終えた選手が、一人また一人とロッカールームーへと引き上げて行く。だいたい最後まで居残ってランニングをしているのは、武藤雄樹選手と青木拓矢選手、もしくは宇賀神友弥選手、梅崎司選手である。

関根貴大選手や高木俊幸選手などと一緒にシュート練習を終えた伊藤選手は、ボールの数を数えて片付けたり、クーラーボックスを運び飲み残しのドリンクを捨て、慣れた手つきでペットボトルから飲み口を外して洗浄し、そして素早くペットボトルを潰す。

練習の後片付けは、新人選手の役目である。新人の福島春樹選手と手分けして後片付けをするのが、伊藤選手の日課となっている。

ある日、日課となっている後片付けを終えた伊藤選手は、スパイクを脱ぐとストッキングのままでリフティングボールを手に誰もいないピッチへと飛び出していった。ボールと芝の感触を確かめるように重心の低いドリブルをして、軽やかなリフティングを始めたのだ。

リフティングボールは、通常使用しているサッカーボールよりも小さく、ボールの中心である芯を捉えるのが難しい。ボールの大きさからすると重さもあり、良く弾むので柔らかいボールタッチが求められる。ボールの中心を蹴る感覚を意識するとキックの精度や飛距離の練習にも繋がる。

伊藤選手は、リフティングやドリブルだけでなくリフティングからボレーで大きく蹴り出したりと誰もいないピッチを縦横無尽に飛び回っていた。たった一人の孤独な練習なのに「この広いピッチは俺の物だ」と言う感じで実に楽しそうであった。

「何故、サッカーボールじゃなくて難しいリフティングボールなの?」と伊藤選手に尋ねると「こっち(リフティングボール)の方が、上手くいった時に楽しいじゃないですか?!リフティングボールは、難しいが、イメージしたことや芯を捉えたり出来たときに喜びを感じる」と愛おしそうにリフティングボールを見つめた。

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Jリーグ開幕戦となった柏戦で初めてベンチ入りを果たした期待の新人だが、その後はベンチ入りすら出来ない状況が続いていた。練習のミニゲームでも、人数やポジションの関係でゲームに参加することさえない日々もあった。

ミニゲームのメンバーに入ると伊藤選手は目を爛々と輝かせ、対峙する大先輩の阿部勇樹選手や柏木陽介選手に臆することなくガッツと身体を寄せていく。

入団当初は線の細く当たり負けしていた身体は、ここ数ヶ月でガッチリとして来た。フィジカルが強くなったように見え、Jリーガーの風格が出てきたように感じて本当に頼もしい。

ただ、若さ故に調子に波がありミニゲームを見ていてもベンチ入りするかどうかが何となく分かる。4月24日の川崎戦でベンチ入りし、29日の名古屋戦で途中出場であったが公式戦デビューを飾った。そして5月3日ACL浦項戦でベンチ入りしたものの、ずっとベンチ外になっている。

最後にベンチ入りしてから約1ヶ月半過ぎてしまった中で、プロの厳しさと共に人と同じでは駄目だということを感じていたのだろう。

居残り練習を終えて伊藤選手は「高校の時よりもボールを触る時間が少なく、フィジカルは強くなったが、しなやかさが減った」と滴り落ちる汗を手で拭いながら話した。

確かに、高校サッカーの強豪校と言われるチームは、朝練から始まり授業が終ると約2~3時間は練習する。シーズン中の浦和の練習時間は、アップからクールダウンまで試合の日程などを考えると約1~1時間半だ。浦和の練習時間は短いが、かなり密度の濃い練習が集中して行われている。

選手たちは、練習が終わると、頭から水を被ったように全身汗だくで疲れ切った表情をしている。だが、高校サッカー部の練習量になれている伊藤選手にとっては、物足りなさがあったのだ。

更に、試合からも遠ざかっている危機感もある。ボールを触った練習をしなければ、キックの精度は上がらないし、しなやかな切れのあるドリブルも鈍る。

伊藤選手の持ち味は、重心の低いスピードに乗ったドリブルと絶妙なタイミングで繰り出すパスだ。だから、伊藤選手はリフティングボールを沢山触ることで、柔らかいボールタッチとキックの正確性、飛距離を求めていったのだ。

出来なかったことが出来た喜びを噛み締めて、伊藤選手はリフティングボールと楽しそうに向き合っていた。そして、「試合出て、浦和を勝利に導くゴールを俺が決める」心に秘めた思いを乗せて大きく蹴り出したリフティングボールは、力強く、しなやかに弧を描いて青々したピッチを飛んで行った。

川久保整形外科がリニューアル開院しました。平成28年5月6日(金)より新クリニックにて診療を開始しています。MRIなど最新施設を備えて、より良い環境の下での医療とサービスをご提供していきます。http://www.kawakubo-clinic.jp/

川久保整形外科

川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。http://www.kawakubo-clinic.jp/

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