浦和フットボール通信

MENU

河合貴子のレッズ魂ここにあり!「浦和のハリネズミ(前編)」

J開幕から浦和レッズを追いかけている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。

TAK_1821

広島戦の敗戦は胸が締め付けられるほど切なかった。

悲しかった。胸が締め付けられるほど切なかった。6月18日アウェイで広島に2-4で破れ、浦和の1stステージ制覇が完全に消滅した。

悲しかったのは、何も1stステージ制覇が出来なかったからだけでは無かった。

ミシャ監督体制になり、浦和は広島から主力の選手たちを引き抜き戦力アップしてきた。一般の企業であれば、ライバル会社からのヘッドハンティングだ。何人もヘッドハンティングされてしまった企業は、業務が成り立たなくなり当然のように衰退していく。

だが、広島は違っていた。2014年に西川周作選手が浦和に移籍した年だけ優勝を逃しだけで、ミシャ監督の後に広島を率いた森保一監督は2012年からの4年間で3回もリーグ制覇の栄光に輝いているのだ。だからこそ、浦和のプライドを掛けて絶対に負けたくない相手であった。

この試合、歯がゆい思いしながらテレビ観戦をしていた。早い時間に失点したが、前線から激しくプレッシャーをかけて2-1と逆転して前半を折り返した。

しかし、後半に悪夢の3失点をした。過密日程で選手のコンディションの差があるからと言っても、やりきれない思いが募った。

1点を追う森保監督は、アップしていた佐藤寿人選手を呼んだ。その時、スタジアムの空気が明らかに変わったことが、テレビの画面を通して手に取るように分かった。

61分に森崎和幸選手から佐藤寿人選手がピッチに入ると、広島を愛する人々からの大歓声が沸き起こり、ベテランのエースストライカーに対する揺らぎ無い信頼が試合の流れを変えた。

正直、厚い信頼で結ばれている広島を愛する人々と佐藤選手、そして佐藤選手をピッチへと送り込んだ森保監督が、羨ましかった。

今の浦和に、ここまでスタジアムの雰囲気を変えられる選手がいるだろうか・・・。その瞬間、敗北感が胸を締め付けた。まだ、この時点では浦和がリードしているのに、切なくて、悲しくて、思わず涙がこぼれた。

森保監督は「2-1とリードされてからの展開で、寿人を交代で出したときに、ファン・サポーターのみなさんが、スタジアムの雰囲気を変えてくれた。寿人もここまでなかなか出場機会が少ない中でも、良い準備をしてくれて、チームのためにハードワークしてくれました。ピッチとスタンドが一体となって、今日の勝利を掴み獲れた」と試合後の記者会見で話していた。

佐藤選手は試合の流れを変えるだけでなくゴールまで決めて、見事に監督と広島を愛する人々の信頼に応えたのだ。

佐藤選手は、広島出身の選手ではない。もともとは、埼玉の春日部だった。だが、ジェフユナイテッド市原ジュニアユース入団を機に、千葉へと家族揃って移り住んだ。広島に移籍してきたのは、市原、セレッソ大阪、仙台と渡り歩いた2005年のことであった。そこからピッチで結果を残して、広島を愛する人々に信頼される選手へとなっていったのだ。信頼を勝ち得るのに、広島出身の選手じゃないからなど全く関係ないのだ。

監督もクラブを愛する人々も選手を信頼し、ピッチに送り込まれた選手は信頼に応えているからこそ、試合の流れが変わる雰囲気が生まれる。

采配する監督、選手、チームを愛する人々の信頼の調和が取れていなければならない。今の浦和の現状を見ていると、本当に悲しくなる。

敗戦を喫した広島戦後に、スタジアムを選手バスが出発することが出来なかった。

ミシャ監督は「厳しい状況でチームは連敗しているが、バスがスタジアムから出られない状況に価するプレーを続けてきた訳ではない。結果に対する責任は私にある」と話していた。結果に対する責任は、現場を指揮する監督にあるには当然のことである。

バスが出発出来ない状況に陥った気持ちも分かる。だが、厳しい連戦の中で浦和に戻り水曜日にはFC東京戦が控えていた。1st制覇の夢が途絶えたが、本当に浦和が目指すところは「真の日本一」である。年間1位に向けて、選手をより良いコンディションで次の試合へと向かわせる配慮が欲しいと思った。

ミシャ監督には「結果に対する責任は私にある。年間1位を獲るために、次のFC東京戦に向けてバスを出して欲しかった」と発言して欲しかった。FC東京戦では、気迫の籠もった逆転勝利を飾ったが、追い打ちを掛けるように、悲しい出来事であった。

厳しい日程の中で1stステージの終盤に失速し、鹿島が最終的に1stステージ制覇をした。

ACL出場により過密日程だったから、監督がメンバーを固定していたから、浦和を研究されて退いた相手を崩し切れなかったから、セットプレーで点がほとんど獲れなかったから・・・。

1stステージ制覇出来なかった数々の要因が上げられるが、その全てが言い訳に聞こえてしまう。

<後編に続く>

川久保整形外科がリニューアル開院しました。平成28年5月6日(金)より新クリニックにて診療を開始しています。MRIなど最新施設を備えて、より良い環境の下での医療とサービスをご提供していきます。http://www.kawakubo-clinic.jp/

川久保整形外科

川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。http://www.kawakubo-clinic.jp/

パートナーサイト

ページ先頭へ