浦和フットボール通信

MENU

ペトロヴィッチ監督体制が5年半で終わりを告げる【河合貴子のレッズ魂ここにあり!】

J開幕から浦和レッズを追いかけている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。

KAZ_8040

浦和愛し、サポートする人々のために

本当に最後まで自分のスタイルを貫いた監督だった。ただ、昨シーズンのJ1リーグで一番の勝ち点を叩きだし自信に満ちた不適な笑みを浮かべる監督の姿は、今シーズンは見る影もなかった。結果が伴わなければ、全ては現場の監督の責任である。志半ばでペトロヴィッチ監督が、札幌戦を最後に浦和を去った。

ペトロヴィッチ監督体制になり、5年半の月日が流れていた。2012年から浦和で指揮を執ったペトロビッチ監督は、リーグ優勝、ACL優勝の黄金の時代からJ2降格の危機に陥った何とも情けない浦和を優勝争いできるチームへと育て上げたのは言うまでもない。

その手法は、ペトロヴィッチ監督の独特なものであった。浦和に所属している選手を上手く起用して、浦和が勝つためにどういうサッカーをすれば良いのか思考するのではなく、監督の目指すサッカーをするために必要な選手を補強してチームを作り上げた。

それ故に、監督は自分が選んだ選手を信頼し、選手も監督を信頼し、深い絆で結ばれていったのだ。その反面で浦和から離れることを余儀なくされてしまった選手たちや試合出場機会を求めて浦和をあとにした選手たちもいた。ある意味、プロの世界では致し方ない。

しかし、その一方で選手たちには練習中にミスを恐れることよりもチャレンジする姿勢を求め、サッカーを楽しむことや出来なかったことが出来るようになる喜びを感じさせていった。そして、選手たちとトコトン向き合い。選手たちの声に耳を傾けていたのも事実である。選手たちに自信を植え付けていったのだ。

そこまでしてペトロヴィッチ監督は優勝争いできるチームに育て上げた。2015年には、無敗でファーストステージ優勝を飾り、昨シーズンはYBCルヴァンカップ優勝とセカンドステージ優勝を手にした。昨シーズンの年間首位の勝ち点をペトロヴィッチ監督は「モラルウイナー」と言ったが、「チャンピオン」では決してなかった。

この5年間で浦和が目指す『真の日本一』には、一度もなれなかったのだ。優勝争いしているリーグ終盤の失速。あと一歩で掴み獲れる栄光が、陽炎のように消え去るのをこの5年間で味わった。

その度に、優勝と言うプレッシャーに押しつぶされているのは、ペトロヴィッチ監督なのかも知れないと思うほどであった。浦和を率いる重圧は、並大抵のものではなかったはずだ。だから、今シーズン失点を重ね始めると、その重圧に苦しみ、チームの立て直しを図るために模索して苦しみながらペトロヴィッチ監督自らの手で悪い流れを悪化させてしまったように思える。

ペトロヴィッチ監督の最後の試合になってしまった札幌戦。槙野智章選手の退場により数的不利な状況になり、しかも1点のビハインドを負う苦しい中でペトロヴィッチ監督は、普通では考えられない交代枠3選手を全て使って勝負にでたのだ。

退場した時点か、もしくはハーフタイムに1枠を使いバランスを整え、試合の流れをみながら攻撃的な選手を入れて一発逆転を狙うの定石だ。だが、ペトロヴィッチ監督は定石を撃ち破る奇策にでた。まさか、那須大亮選手が後半開始直後にハムストリングの肉離れになるとは・・・。

勝負の世界で『もしも』はないが、もしも那須選手が怪我をしなったらこの奇策は成功して、ペトロヴィッチ監督は称賛されていたかも知れない。監督にとって、不運だった。しかし、奇策が成功していたとしてもそれは単なる延命でしかなく、いずれにしても浦和を去らなければならない予兆はあった。

この5年半の間に、主力となる選手たちの年齢と共に衰えていく現実。日本代表から帰ってきた槙野選手などベストのパフォーマンスとは言えない状態であった。さらに、他のクラブから研究されつくしたペトロヴィッチ監督のサッカーだ。毎年、少しずつ変化をもたらして上澄みをしてきた。今シーズンは、相手陣内でプレーする超攻撃的サッカーを掲げたが、リスクマネジメントがより難しくなりカウンターからの失点でチームは崩れていたのだ。

札幌戦の敗戦を受けて、クラブ幹部の話し合いは深夜2時まで行われた。大宮戦の敗戦から12試合で3勝1分け8敗。淵田代表は「改善の兆しが見られない」と英断を下したのだ。

そして、淵田代表は「ミシャさんのサッカーを基本的に継続していきたい。それに対して修正すべきところは修正していく。そういうことができるのは堀さんだと思う」と堀新監督に浦和を任すことにした。

ペトロヴィッチ監督が作り上げた一種特殊なスタイルを継続できるのは、現時点は堀新監督しかいない。6年前のJ2降格の危機に晒されたときは堀監督代行であったが、今回は監督としてチームの立て直しを図る。

全ての責任をペトロヴィッチ監督に負わすことになってしまったが、当然このようなチーム状況になってしまった責任を淵田代表も山道強化本部長も感じているはずだ。

堀新監督をクラブとしてどのようにサポートしていき、チームを優勝へと導いていくのか・・・。その責任をしっかりと果たしていくだろう。

監督の首をすげ替えただけでは、全く意味がないのだ。浦和を愛し、サポートしていく人々にために、そして志半ばで浦和を去ったペトロヴィッチ監督のためにも襟を正していかなければならない。そうすれば、きっと輝かしい浦和の未来が見えてくるはずだ。

Q. よく足の付け根の違和感など選手が言いますが、肉離れなんでしょうか?

A. 国立科学スポーツセンターの奥脇先生が、肉離れを3つに分類してリハビリ期間の目安にしています。1型は、出血箇所が見られる程度の軽い症状です。2型は、筋肉の損傷はあるが完全断裂や付着が離れていない中度の症状。3型は、筋肉の断裂や腱断裂、付着が離れているかなり、引き抜けているなど重い症状です。違和感程度でも無理をしないで安静にしたほうが良いでしょう。

川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。

川久保整形外科がリニューアル開院しました。平成28年5月6日(金)より新クリニックにて診療を開始しています。MRIなど最新施設を備えて、より良い環境の下での医療とサービスをご提供していきます。http://www.kawakubo-clinic.jp/

パートナーサイト

ページ先頭へ