浦和フットボール通信

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【This WEEK】週刊フットボールトークVol.70(1/11)

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:2012年最初のフットボールトークになります。遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願い致します。年末年始は、高校サッカー選手権、浦和東高校を追いかけて取材をしていました。結果は、浦和東は2回戦敗退と残念な結果でした。浦和東を破った大分高校は“国立”まで勝ち進み旋風を起こしました。国立までの道のりは本当に僅差だったのではないかなと思います。

豊田:初戦は埼スタ客席から、2回戦はテレビでの観戦でした。初戦は大晦日というのに浦和美園駅からの人の流れが途切れず、当日券売り場は試合開始に間に合わないファンの行列。そんなわけで私も入場できたのが前半25分を過ぎた頃でした。やはりサッカー好きの人たちの姿はURAWA名物です。ただ選手権に限って言えば、かつての大宮サッカー場時代の観客層に比べて若いママたちの子ども連れの姿が目立つようになった。レッズのレプリカ姿のファミリーもちらほら見かけましたが、次世代育成には大きな意味を持つこの層にはフットボールの醍醐味を満喫して欲しいと感じましたね。

椛沢:地元の高校を応援しようとサッカー好きが集まってレッズ戦とは一味違う埼スタの雰囲気でしたね。2回戦の試合は、お正月ということもあって応援の数も少なかったので少し寂しい気もしました。その意味では高校サッカーも街中からフラっと行ける駒場開催の方が盛り上がるかもしれませんね。

豊田:浦和東高校の戦いぶりも印象に残りました。2回戦敗退という結果は、野崎監督はもちろん何より選手にとって厳しい現実と思います。が、現状での県内サッカー事情を知らしめる試合結果だったと思う。2試合を通しての課題はやはり決定力。それもゲームコントロールの焦点になる序盤の勝負どころと思います。FWの菊池将太と星子直哉は連携も良く、特に菊池は初戦の那覇西戦でハットトリックも決めましたが、2戦ともキックオフ直後の得点機を逃したことは悔やまれる。一発勝負の全国大会を勝ちあがるためには、そこは必須と思います。両君ともに本来はあれを決める能力があるのだし、チーム全体のパフォーマンスも非常にバランスが取れた好チームであっただけに……。

椛沢:野崎監督も「なぜだか県大会決勝で見せたプレーが出来なかった」と悔やんでいましたが、自分達のサッカーを貫くという部分が強く、相手への対応という部分が足りなかったのかなという印象も受けました。このバランスは、サッカーは難しいところです。ノックアウト方式の選手権は、決める所で決めるという勝負強さも重要な要素だと思います。選手権では、その部分が足りなかったのも確かだと思います。今大会の浦和東は非常に組織された素晴らしいチームだったので監督はもちろん選手達ももっと上を目指せたと落胆の表情でした。それでも中学時代はほとんど無名だった選手が3年間徹底的に鍛え上げられて全国にも引けをとらない戦いを見せてくれたのもひとつの可能性を示してくれたのではないかと思います。さて、レッズの話題へと移りますが、年も明けたということで今季への期待も含めて2012の浦和サッカーに繋がる昨年、取材で得た名言集を集めていきたいと思います。まずは豊田さんからピックアップをお願いします。

豊田:まずは『浦和フットボール通信』が掲げたテーマにまつわるものでしょうね。「10年後、どんなレッズでありたいか」。この提唱の起点として行なわれたインタビューでの福田正博さんの言葉です。

★「サッカーは90分だけで表現されるものではない。浦和の選手らしい振舞いとは、ピッチに立つまでの何年かの準備、クラブの中に受け継がれて来た姿勢といった要素が決める」

この内容、今季の浦和レッズの動向と成績に照らして椛沢編集長はどのように聞きますか?

椛沢:昨季は福田さんの言葉には遠く及ばない内容だったと思います。クラブとして大事にしているものは何かということも近年ボヤけてしまっている中で最も停滞したシーズンになってしまいました。ポゼッションだ、カウンターだというサッカーの方法論ではなくて、それこそがクラブが示すべきスタイルなんだと思います。ここが曖昧になっているために、ピッチで起きていることも、ピッチ外で起きていることも色々と残念な問題が起きているように思えます。

豊田:文字通り、ここから10年レンジで取り組まなければならない、その覚悟を固めるべき部分ですね。

椛沢:我々も地元メディアとして、浦和レッズ20周年ということもあり、原点回帰をするような貢献を今シーズンはよりしていきたいと考えています。

豊田:続いては今回の高校サッカーの結果も踏まえて、大山先生の言葉です。

★「地元才能を浦和レッズが獲得すること。埼玉県内の指導者はそれを最大限の敬意を持って優先させています。URAWAを代表するトッププロなのだから、その現状はいつも心に止めておいて欲しい」

ミスターレッズの言葉にも合い通じるのですが、地元を代表する高校指導者の発言ですので。意味するところの重さをURAWAもレッズも認識しなくてはなりません。今回の浦和東・野崎先生の挑戦などを見ていても痛感する問題です。

椛沢:「地域密着」ということを考えると、これは大きな問題だと思います。浦和レッズだけが県内で浮いた存在になってしまっては地域密着とはかけ離れてしまう。昨年末の原口の事件についてもそうですが、レッズの選手、アカデミーの選手は県内の代表であるという当人達の自覚と県内でもそれを見守る体制と、レッズ側にもその才能を送り込んでもらうための県内への還元ということをすることで、埼玉県内全体のレベルアップと共に、その頂点にレッズが存在することが出来るのではないかと思います。この問題についても引き続き取り上げていきたいと思います。

豊田:3つ目は取材自体で聞いたものではないのですが、編集長とのトークに取り上げさせてもらったジャーナリストの木村元彦さんのコメントから。

★「自ら起源を掘り起こさなければ“事実の意味”は味わえない。これはフットボールならではの醍醐味と思います。」

年末に上梓された「争うは本意ならねど」(集英社インターナショナル刊)が例によって事実検証を重ねに重ねた労作。で、私はかつて木村さんがチルコフスキー(旧西ドイツ代表GK:66年ワールドカップ決勝戦でゴールライン上に弾む“疑惑のゴール”を決められ、イングランドに敗退した際の守護神)にインタビューした時のセッティングを例にあげて訊いてみたのです。「半世紀近くも前の老雄に会うためには、どんな情報網を?」って。さしずめ彼くらいの立場になれば現地のメディアなどがサポートに動いているのだろうなと想像していたのですが……。

椛沢:なるほど。実際にはどんな情報ルートを?

豊田:驚いたことに、伝え聞いた街ごとに木村さん自ら電話帳を調べ、電話で会見依頼をしたそうです。

椛沢:それは驚きですね。

豊田:加えて言うには「そういう手順を踏めば、取材対象がおかれている情況を現場でさらに深く理解できる」と……。私的にはこれは木村さんからのサッカーファン、なかんずくレッズ支持者へのメッセージと思うのです。いつの時にも現状に至る道すじを掴んでおけと。

椛沢:なるほど。木村さんのサッカーへの情熱を感じられるエピソードですね。これだけ情報が多い社会だと、逆に表面的なことで片付けてしまうことが多いので、情報を発信する側も受け取る側も、しっかりと物事を深く見ていかなければならないですね。次週は私が取材過程で出会った「名言」を集めてトークを展開したいと思います。

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