浦和フットボール通信

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レッズジュニアアカデミープログラムとFC浦和のその後

昨年から始まった「浦和レッズジュニアアカデミープログラム」。浦和のサッカー少年団でボールを蹴っている子供たちが浦和レッズの環境で指導を受けるという試みだ。その成果と、非公式の大会では未だ全国レベルのチームを破っている浦和少年団選抜チームの「FC浦和」の復活に向けての動きはあるのか。さいたま市浦和サッカー少年団指導者協議会 技術委員会副委員長で、浦和レッズジュニアアカデミーにも関わる町田隆治さんにお話をお伺いした。(浦和フットボール通信編集部)

町田隆治(まちだ・たかはる) プロフィール
1964年旧浦和市生まれ。日大豊山高校、本太クラブ(埼玉県社会人リーグ)でFWとして活躍。浦和別所サッカー少年団、浦和トレセン、埼玉県南部トレセン、FC浦和コーチを歴任後、2008年にFC浦和監督に就任し、同チームを6年ぶり4回目の全国制覇に導いた。現在は、さいたま市浦和サッカー少年団指導者協議会 技術委員会副委員長、浦和別所サッカー少年団ではヘッドコーチを務める。日本サッカー協会公認C級コーチ。

【浦和レッズジュニアアカデミーの活動の成果】

UF:昨年、浦和レッズと浦和指導者協議会がタッグを組んで、浦和の少年団の子供たちがレッズでの指導を受ける「レッズジュニアアカデミー」の活動を行ったわけですが、初年度の成果などについて教えていただけますでしょうか。

町田:昨年の5月10日から始まって12月まで、1年間の活動を行いました。趣旨としては、大原のピッチで子供たちにプレーをしてもらう機会を与えようということで、トップチームが実際に使っている大原のフルピッチを使ってゲームをやらせてもらうことが出来ました。トッププロがやっているところでプレーが出来て、もしかすると選手が練習をしているという環境の中で刺激もあったでしょうし、ゼリコ・ペトロヴィッチ前監督がたまに来て一緒にボールを蹴ってくれたりして、子供たちにとっては良い刺激になったと思います。
レッズジュニアアカデミー活動の元々のきっかけは、現在、FC浦和が全国大会に出る活動をしていない中で、子供たちにレベルの高い環境を与えること。そして長年考えられていた、浦和レッズと浦和の指導者協議会がタッグを組んでやっていけるかの足がかりだと思います。初年度としては良い活動になったのだと思います。今季もアカデミーの活動は継続する話にはなっています。
メンバーについては、浦和指導者協議会が中心となって、浦和トレセンからメンバーを選考しています。もちろん我々が選んだ者以外で気に入った子がいれば、レッズから選んで下さいという話はしていますが、レッズの方々が36少年団からスカウティングする時間があまりなかったというのが事実だと思います。夏と秋に参加する人間を追加したりもして、この活動を子供たちもみんな知っていて行きたいと思っているので、参加するために頑張ろうという刺激にもなっていると思います。最終的には、80名の子供たちが参加したことになります。浦和レッズジュニアアカデミーで、GKだけでも選抜をして安藤コーチが協力をしてくれてGKだけのトレーニングもしてもらいました。そこからナショナルトレセン関東に行く子供が出ています。

UF:元プロ選手であるコーチに指導をしてもらうことでの刺激もあったのでしょうね。

町田:土橋コーチと内舘コーチがメインで指導をしてくれて、子供たちは彼らの現役時代を知らないのですが、レッズの選手だったということをなんとなくわかっていて、プロの指導者であるということで、感じることがあって、目に光るものはあったと思います。

UF:トレーニングでは浦和の指導者の方も一緒に参加されていたそうですが、指導者同士の刺激もあったのでしょうか。

町田:正直、U12という年代を教えているのは我々のほうが長いので、浦和レッズ側の刺激の方が多かったかもしれません。実際に、土橋さんはU12の指導者A級のライセンスを取りに行ったりしていていました。そうなっていくと立場も逆転していくのかなと思います。

UF:FC浦和が活動停止している中で、この活動が浦和の子供たちの刺激になっているということでしょうか。FC浦和というトップレベルの存在がなくなったことで才能の秀出が起きているという話もお聞きします。

町田:Jリーグの下部組織が身近になってきている中で、ジュニアチームに関しては、浦和レッズはまだチームを作っていないわけですから、地元の才能が流出をしていく可能性があります。私がFC浦和の監督をしていた3年くらい前と、今でも父兄達の感覚も変わってきているようです。まずは子供たちをJの下部組織に入れたいと思う父兄が多いようです。実際に、全国優勝をした柏レイソルジュニアにも浦和の子が3人います。10番の子は尾間木にいた子ですからね。柏は距離的にも近いので流出をしやすい。ヴェルディにも行っている子もいますね。まだ大宮アルディージャに行ってしまうのはさいたま市内ですから、しょうがない部分がありますが、Jの下部組織には才能が集まりやすいのは事実ですね。もちろん行ける子はJの下部組織に行けると良いと思いますが、私は古いと言われるかもしれないですけど、地元、浦和でサッカーをやってもらいたいという思いがあります。本来は、そこで頑張ったらFC浦和という存在があるという組織図があると良いと思っています。

UF:少年団は浦和のサッカー文化のひとつだと思いますが、クラブチームとの違いはなんでしょうか。

町田:少年団は親が手伝わないといけないとか、そんな話ばかりが先に出てしまっている所もあります。ただ少年団は、クラブチームに比べて、お金はかからないですからね。クラブチームはお金がかかるけど、全部預けられるという考えもあるでしょうし、やるなら地元でボールを蹴らせたいと少年団に入れる方もいらっしゃいます。浦和の少年団は、40年近い歴史があるので、卒団して自分が親になって子供をいれるという流れも出てきていますから、また変わってくるのかもしれないです。36少年団が活動しているのは、全国でも浦和だけですからすごいことだと思います。

【FC浦和の復活はあるのか】

UF:現在、活動休止している状態のFC浦和の状況ですが、非公式の大会では活躍をされているそうですね。

町田:昨年は震災の影響などで活動は少なかったのですが、日本サッカー協会が主催ではない大会などには参加をしていて、「甲府セリエカップU-11」という大会で優勝したり、「三菱養和チャンピオンシップU-12」では、予選リーグでは、全日本少年サッカー大会で優勝した柏レイソルを3-1で破って3位に入るなどの活躍を見せています。

UF:FC浦和を復活させる流れはあるのでしょうか。

町田:実は技術委員会の中では、FC浦和を復活させようという話は出ています。ただ焦って行うことではなくて、実際に活動させるためには予算やグラウンドの用意などの環境整備、指導者を揃える必要もありますし、活動について理解をしてもらう必要もあります。地方に行った時に、FC浦和というチームがブランドになっているという話も聞きますし、これを根絶してはいけないと思っています。FC浦和がないと、子供たちのトップレベルの環境がなくなってしまいます。それぞれの少年団だけの活動だけですと、Jの下部組織のチームとやる機会もないですし、どうしてもレベルの限界があります。浦和レッズとしても活動をしてもらいたいんだと思います。仮に浦和レッズがジュニアチームを作っても良いと思いますが、今の所、すぐに浦和レッズがジュニアチームを作るという流れにはならなそうです。逆の発想で、浦和の指導者が、浦和レッズのジュニアチームをやるという形でも良いと思いますね。

【息子、町田也真人がジェフ千葉に入団】

UF:浦和には36少年団があって、それぞれの学校でボールを蹴れて楽しめる環境と、更にその上にはトップレベルの環境がある。そんな環境をまた是非実現してもらいたいと思います。その中で、浦和から育った町田也真人君が、ジェフ千葉への入団が決まりました。何を隠そう、町田さんの息子さんですが、Jリーガーになると想像をしていましたか。

町田:本人はJリーガーになることを目指していましたね。大学に入ってからまたレベルが上がったんじゃないかなと思います。自分が感じているのは、人間的な大きさが大学で学ぶことが大きいのではないかと思います。自分の子供を客観的に見るようにしているのですが、ジェフに入団する時のコメントも親に対して感謝のコメントもしてもらって、本当はこそばゆい気持ちもあるんですが、色々な方から良いコメントだと言って頂いて、大学4年間で、サッカーもそうですけど、人間的に学ぶことが大きかったんだと思います。

UF:Jリーガーになる上でのきっかけなどはあったのでしょうか。

町田:夏に天皇杯の予選があって専修大学が準決勝でJFLの横河電機と対戦して6-0で勝ってメディアの方にもかなり取り上げて頂いて、さらに決勝の町田ゼルビア戦でも、うちの子が先制点を獲ったんですけど、PKで負けてしまったのですが、そこでスカウトから評価をして頂いたそうです。千葉のスカウトの担当は元レッズの斉藤和夫さん(浦和南出身)なんです。たまたま浦和同士だったので、私もジェフの施設も見せてもらって、フクアリの隣にユナイテッドパークというクラブハウスがあって、本当に素晴らしい環境でしたよ。大原練習場以上でした。

UF:町田也真人君は、客観的に見て、どんなプレイヤーなのでしょうか。

町田:派手さはないですけど、場面を変えられるプレイヤーなのかと思います。ゴールに直結する感覚があって、背面、後ろをよく感じられている選手かなと思います。客観すぎるかもしれませんが(笑)彼は小さい頃からサッカーが好きでした。経歴を見ても別所少年団(FC浦和)、白幡中学、埼玉栄、専修大学でJには全く関わってないんです。私が言いたいのはその部分で、そんなに焦って、小学校からJに入らなくても最終的に自分がどんなサッカーをやってきたのかだと思います。息子は、レッズの山田直輝君の一個上で、クーバーコーチングで一緒にやっていたのですが、息子はFC浦和では全国大会に出られなくて、直輝君は全国優勝をしたりして、本当に上手い選手だよねという話をしていたのですが、いつか追いつけば良いじゃないかと彼が高校の時に話した記憶がありますね。

UF:浦和のサッカーファンは、ジェフ千葉に入団しても浦和育ちのプレイヤーの活躍を期待していますから、頑張ってもらいたいと思います。

町田:浦和出身として皆さんに期待して頂けるのは本当にありがたいことです。私も浦和が経歴として出る選手として頑張ってもらいたいと思っています。

(さいたま市内にて)

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