浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトークVol.87(5/10)

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:先週末はGW連戦の締めを飾る、ジュビロ磐田戦でした。GW2回目の新東名高速道路を使っての遠征となりました。GW最終日ということで大渋滞が予想されましたが、往復共に渋滞はなく、快適なドライブでした。この日は不安定な気候で、関東では竜巻が起きていましたが、エコパスタジアムでも開門前にヒョウが降り、入場後も一時、強い雨が降り注ぎサポーターはアウェイの洗礼を受けましたが、幸い試合開始時には雨も止みました。試合は、前節、マリノス戦をフラッシュバックするかのような展開になりました。高い位置からプレッシャーをかけてきたジュビロに対して、ボールが回らずリズムが奪えないまま、前半25分に先制点を許します。その後もリズムを掴めず、前半が終了します。後半からエンジンをかけ直したレッズが、前がかりになってリズムを掴み、槙野が2試合連続の同点弾、そしてサポーターがハーフタイムからチャントを歌いゴールを求めた原口が今季初ゴールを決めて逆転しました。これで試合が締められれば最高の展開でしたが、すぐさま同点ゴールを決められてドロー決着となりました。

豊田:槙野がセットプレーから得点してムードメークし、原口元気の待望のゴールで逆転する……。押し切れれば、文句ないアウェー戦3ポイントだったはずです。それだけにリード後に時間も空けずに食らった失点は痛かった。テクニックを駆使して枠に収めた原口のコントロールショットの残像を、いましばらく楽しみたかった。

椛沢:原口のゴールは、相手ディフェンダーに囲まれながらゴールを決めたいという気持ちがこもったシュート意識の高さが生んだゴールに見えました。サポーターも望んだ原口のゴールがあっただけに勝ちたかったと悔しさを噛み締めた試合後の雰囲気でした。まだステップアップをする時期ですから、このような試合を経験しながら、勝ちきれる強さを身につけていけば良いのかと思います。

豊田:それでも上位チームとのアウェー戦で点の取り合いのゲームができています。支持者としては現地に駆けつけなくてはという意欲も沸くというものでしょう。さて、開幕から2ヶ月が過ぎて、編集長と河合さんの2度目の月刊ライブディスカッションです。

椛沢:ミシャは、「ボールも人も心も動かしている」と河合さんのコメントがありました。心は選手はもちろんのこと、サポーターもチームを応援したいと思わせる試合が徐々に出来ているのではないかとのことでした。

豊田:開幕後のレッズの戦いぶりを見たサポーターの方々から「監督によってチームはこうも変わるものなのか」という感想を聞かされることが多くなりました。監督はもちろんですが、その指揮官を迎えるクラブの体制完備とサポーターも含めた意識共有が大切なことも、われわれURAWAの支持者サイドに深く浸透しているという証しでしょう。長年Jを見ていると、レッズに限らず監督交代や補強選手の話題くらいでは、どのチームも上位争いに定着する地力など蓄えられないことは明白ですから。その意味で長期政権で上位を占めてきたガンバ大阪や鹿島アントラーズの失速は、よそ事とは思えないクラブの継承力の大切さを示していると思います。

椛沢:昨年、どん底を見たことで、一からやり直さなければいけないんだという気概がクラブもサポーターも持てたと思います。そこに新しい監督がやってきて、確かなレールを引いてくれている。このことが組み合わさって現在の状況があるのではないかと思います。目指すべき道、向かう方向を一致させて進むことの強さということは、豊田さんのおっしゃる通り、他のクラブを見ても感じるところがありますね。好調の要因は、もちろん監督の手腕も大きいのですが、それだけでは成し得ないのではないかと思っています。

豊田:私見ながら、今年の清水エスパルスのチームづくりには注目してしまうのです。2008年正月の高校選手権で久方ぶりにファイナリストとなって静岡のファンを熱狂させた藤枝東高校の両エースだった村松大輔選手と河合陽介選手をしっかりレギュラーにまで育て上げ、前線では国立での決勝の相手・流経大柏の得点王だった大前元紀選手をストライカーに定着させている。ピッチ上で彼らを見守るベテラン役として伸二と高原のコンビも呼び戻している……。ううーん、悔しいのですが、仕事仲間のエスパルスサポーターたちはリーグ2位(5月6日現在)につける前から「けっこう今年は、地元が本気で結束するかもよ」と浮かれていましたよ(苦笑)。彼らに聞かされて気がついたのですが、清水は森孝慈さんが率いた日本代表CFだった碓井博幸さんの子息(碓井健平選手)とかもしっかり獲得して育てています。何というか、サッカーどころで20年目を迎えるクラブとしてのメッセージを感じるんですね、こういうチーム作りには。

椛沢:地域密着のクラブで一番分かりやすいのは、その地域から輩出されてくる選手がピッチで輝くことですよね。サッカーどころのクラブであれば、それはなお色濃いことだと思います。以前、静岡を取材した時は、Jクラブよりも地元の高校サッカーの方が地元色があり、人気があるというお話を聞きましたが、その高校サッカー出身の選手がエスパルスに集結してくるとなると、その流れをそのままJクラブに持ってこれるのかなと思いますね。レッズももっとこの地域から出てきた選手がピッチで輝いてくれると、地元が盛り上がってくるのかと思います。

豊田:一方、一部地元メディアにはミシャ監督と槙野のセットでの獲得を、高い手腕として評する論説が載りました。私個人としては当面の成果としては納得するけど、「評価」とするには不満な部分があります。サポーターレベルでも話題にのぼっていますが、現状を安易に評価するのなら、レッズはミシャ以降もまたぞろ他クラブ指揮官と主力選手をセットで買い取ってチームを作るのか?という疑問にぶつかります。なぜ今までレッズ固有の蓄積が出来なかったのかをこの機会にホームもサポーターも腰を据えて議論すべきでしょうね。それが無ければ、私たちのレッズが「レッズ020」のメッセージを掲げる意味も薄れてしまうと考えます。

椛沢:ただ強くあればいいというだけで終わって欲しくないですね。ミシャの下で、チームを安定化させながら、先を見据えたクラブ、チーム作りをしてもらいたいと思います。その意味においても、昨日開催した「URAWA TOWN MEETING」のイベントは、ファン・サポーター、街と浦和レッズが相互交流する場として有意義な場になっていくのではないかと思います。昨晩も遅くまでクラブと参加者がレッズについて、街について話をする会となりました。今後もこの会は継続をさせていき、サポーターとクラブの意思疎通の場を作っていきたいと思います。

豊田:パネリストで出席してくれた相良君もコメントしていましたが、浦和レッズを創るのはクラブであるとともに私たち自身ですから。雨の中、タウンミーティングにまで赴いてくれたサポーターの皆さんも、スタンドだけでは充足できない思いを背負っての行動ということと思う。タウンミーティングの今後の展開にも期待したいです。

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