浦和フットボール通信

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第2回URAWA TOWN MEETINGレポート(1)

レッズサポーターを前に橋本光夫・浦和レッズ代表が公開インタビューを行って話題を集めたURAWA TOWN MEETING。その第2回が5月9日(水)夜、「Cafe砂時計」にて開催された。今回テーマは、レッズ戦の観客動員減少、ホーム浦和の応援熱の低下などを受けた「浦和の街、スタジアムが盛り上がるためには?」―――。

誕生から20周年を迎えたクラブ、サポートするサポーターとホームタウンの意識共有を図ったミーティングのコメント詳細を2号連載でお届けする。

■ゲスト:畑中隆一事業本部長、須藤伸樹運営部部長、丸山大輔マーチャンダイジング部課長、相良純真(URAWA POINT) ■司会:椛沢佑一(浦和フットボール通信)

畑中本部長:浦和タウンミーティングにお招き頂きありがとうございます。この企画は浦和レッズが20周年を機に、ファン・サポーターのみなさんとの絆を更に深めていこうと考える中で、浦和フットボール通信さんのお力を借りして実現できた会です。浦和レッズは今年20周年を迎え、「REDS020th」というテーマのもとに活動しています。「020 th」はただの20周年ではなく、これを通過点と考え、これからもレッズは100年、そこから先の情況も踏まえてファン・サポーターとの絆づくりをして行くという意志を表しています。

具体的にはスタジアムを赤く染める活動。従来はサポーター主導で行われてきたその活動をクラブも積極的に頑張っていこうとか、街中で浦和区を始めとしたエリアにバナーを掲出するなどして、街、スタジアムでレッズを身近に感じてもらおうということを意識しています。そしてそれは、ファン・サポーターと共に活動するということを重要視していて、それが浦和レッズというクラブの原点だと思います。昨年からサポーターの皆さんから意見を求める「iDEA For REDS!」という企画で、皆さんから頂いた意見をスタジアムやクラブの活動として活かしていこうと取組んでいます。この会の第1回では橋本代表からクラブの報告、今年の活動を紹介させて頂きましたが、今回はテーマを「スタジアム、街」という照準に絞り、皆さんと様々な意見を交換して行きたいと思います。今日いただいたご意見を参考に、次の取組みに活かしていきたいと考えています。どうぞ宜しくお願いします。

椛沢:ご紹介頂いたとおり、第2回テーマは「浦和の街、スタジアムが盛り上がるためには?」です。より快適な埼玉スタジアムを実現するために、改善したい部分や周辺の環境作りの施策についてお話いただきたい。またアクセス問題、ファン・サポーターの足を浦和の市街地に呼び戻し、盛り上げるためにはどのような方策が必要か。また浦和の街に存在するオフィシャルショップ「RED VOLTAGE」の在り方、オフィシャルグッズについての意見も募集します。では早速、最初のテーマですが、今季、浦和レッズは埼玉スタジアムでの環境整備の施策について具体的にどのようなことを取り組んでいるのかをお話しいただきます。

須藤:今年はレッズ誕生から20周年ということで、様々な取り組みをスタートさせています。まず、レッズはしっかりと歴史を積み重ねてここまで来れたという思いがある。そこで今季はスタジアムに93年からこれまでのシーズンの歴史を振り返るパネルを掲出させてもらい、歴史を紹介しています。「iDEA for REDS!」でも意見を頂いているのですが、クラブとしては、ファミリー層をもっと増やしていきたい。来場者の平均年齢は1年に1歳弱くらい増えてきており、J開幕に20歳だった人が40歳になっている状況。若いファンに来ていただかないとレッズの将来へも不安があります。そこで昨年からメインのアッパーで始めて好評をいただいているテーブルシートの隣に「ファミリーシート」を新設しました。そのファミリーシートを新設したこともあり、メインのアッパーでは喫煙所を廃止し、ペデストリアンデッキ上に移動しました。今年Jリーグが、フジゼロックススーパーカップで、全面禁煙を試行しています。Jリーグは、UEFAの大会やワールドカップ、ヨーロッパ選手権は全面禁煙になっているという実例をあげて今回実施しました。ただし、クラブとしては、そのようなスポットの大会では可能かとは思いますが、年間20試合を開催する中で、全ゲームを禁煙にできるかは簡単ではないと考えています。タバコを吸う方もいますから、段階を踏んで進めていければと……。コンコースには、埼玉スタジアムと協力してハイテーブルや食事ができる椅子などを置いたり、車椅子の利用者向けにもテーブルを用意したりしています。

椛沢:今季は、雨のホームゲームが多い状況です。雨天でも快適な環境にするための方策はお考えでしょうか。下記のようなご意見をいただいております。

◎雨の日の開門待機中および試合中の状況は劣悪です。ビショビショになった状態でバスもしくは電車で帰宅することは非常に厳しい。

◎今年は雨が多いので、コンコースの環境が良くなるといいなと思います。ベンチを置くのは難しいのでしょうか。シルバー層の方のためだけでも。スタジアムを眺めながらゆっくりできるカフェなどあればうれしいです。

◎スタジアムがファン・サポーターにとって身近に感じられる環境整備が一番大切だと思う。今シーズンの年間シート保有者の来場割合と天候との関係を知りたい。

須藤:今季リーグ戦のホームゲームが全部雨なので、比較できないところもあるのですが(苦笑)雨が降ると全体で着券率が70%台に落ちてしまうのが現状です。今年はホーム全試合レディアを出勤させますと申し上げていたのですが、雨男疑惑が浮上しているので、新潟戦はお休みします(笑)。川崎戦の暴風雨があったり、マリノス戦では美園駅からスタジアムへの歩行者専用道路が冠水したり、クラブだけの力では改善できない部分も多々ありました。タクシー乗り場やバス乗り場を駅にあるような屋根付き乗り場に改築できれば良いのですが、試合で使うのは年に20日程度しかない中で、駐車場に設置は難しいという情況があります。また、毎回設置して片付けてというところも正直、難しいところがあります。雨を凌ぐ場所がないことは認識していますが、改善のアイデアを現状では持ち合せておらず、申し訳ない次第です。コンコースは避難動線にもなっていて、あまり物を置けないことになっています。申し上げたような状況が現状であり、雨天対策はじゅうぶんではないことは認識しております。

須藤伸樹運営部長

椛沢:例えばアッパー席に空席がある状況で、シーズンチケット限定で雨天においてのみ移動を認めるなどの対応は出来るのでは?

須藤:諸条件から見ると、難しい。アッパー席のどこまで濡れるかも分からない情況もあります。雨は縦に降りますので風がなければ屋根の下は濡れない設定のはずですが、風がふくと雨は横から吹き込んでくる。先の試合ではメインアッパーのエリアは全滅になっていました。つまり屋根があっても雨がしのげない状況もあるわけで……。風向きによってメインが濡れる時とバックが濡れる時があり、雨をしのげる場所が時々に変わってきてしまいます。

椛沢:天候による来場者の割合は具体的にどのくらいでしょうか。

須藤:開幕戦は発券枚数に対して、5000弱くらいの動員が不足していました。神戸戦は同じく役8000枚分が来場いただけなかった。横浜戦はゴールデンウィークということもあって、直前の1週間で10000枚近くチケットが伸びました。こういうケースでは着券率は高くなり、3000枚分くらいの不足に留まりました。

椛沢: クラブのビジョンとしてホームの埼玉スタジアムを、どのようなスタジアムにしていきたいのか、指標はありますか。埼玉スタジアムは、県営施設でもあり、関係機関との調整も必要になってくると思いますが、ヨーロッパだとスタジアムにデパートやミュージアムが併設されていて、様々な取り組みがされています。埼玉スタジアムに日常から親しんでもらうためのビジョンはありますか。

須藤:私自身も埼玉スタジアムに勤務していますが、現状では日頃、人がいる感じはしないですね。練習場が近くにあったり、ミュージアムがあったりすると試合日以外にも楽しめるということもあると思うのですが、スタジアムはクラブの所有物ではないので、関係各所との折衝が課題であり関門になっています。スタジアムサイドも環境整備は進めてくれていますが、日頃の環境までは取り組むのは現状では厳しい面がある。日本では野球場は街の中心にあり、皆がそこに集まって来ます。埼玉スタジアムもそのように「人が集う中心」としていきたいという思いがあります。それが理想なのですが、いつ何を……という部分では難しいところがありますね。

椛沢:運営上のご意見なども来ています。

◎運営に関することは、前回社長、畑中氏含めて何度も言っているが、特に、南入場口にスタンド席割のボードを設置すべき。南のホーム側自由に、アウェイ自由に行きたい方が何度も紛れ込んでいる。場内警備も機能していない、クラブはG大阪戦のあの忌まわしき出来事から何も学んでいない。万が一、いざこざが起きたらどうするのか?ボードを作って人の捌け口をしっかり分けるのが一番手っ取り早いと思う。クラブの危機管理にもつながる。

◎入り口をたくさん作る。そうすれば入場前の待機時間が少なくなり、夏場試合前にバテることもなくなる。

須藤:100%全員を分けることが出来ていないことは理解しています。昨年はR指定席をアウェーサポーターが購入する事例があったのですが、今年は本来の表記であるレッズシートと明記しましたので、ここはレッズ応援席ですとわかりやすくなったと思います。席割などの表記ははっきりしないといけないと色々とご意見を頂いているので、努力していかなければいけない部分でしょう。入り口を増やすためには、荷物チェック、チケットチェックなどがあって、ピーク時に対応できる入り口を増設しなければならないので、事実上難しいところがあります。

椛沢:埼玉スタジアムと街との距離感の問題が依然として残っています。これを縮めていくための方策は、クラブとしてどのようにお考えでしょうか。まずは交通アクセスについてのご意見を多く頂いていますので紹介します。

◎国道463号の路線バスを埼玉スタジアムから駒場スタジアムまで、もっと言えば、南与野から埼玉スタジアムまで、一日に数本でいいので走らせてはいかがでしょうか。浦和の街と美園があまりに遠すぎるのです。

◎埼玉スタジアムと浦和間の交通整備。例えば、駒場スタジアム発着のバスを作って試合前後に浦和の街を歩いてもらう。

◎ともかくバスがつらいです。乗るまでも乗ってからも時間がかかるので。観光バスのように座れて(指定席料金別途でもいいです)、缶ビールとおつまみ付きなんてどうですか? 昼間のゲームなら、駒場スタジアムからのレンタサイクルとか。あとスタジアムでは敵ですが、終わればアウェイサポさんもお客様。浦和の街を楽しんでもらえる交流があっても良いと思います。

◎旧浦和市民(特に新浦和区民)が一番埼スタが遠い、という事実があります。突飛なアイデアとは思いますが、抽選制などでスタジアム内の駐車場を利用できるなどの特典があるといいな、と思います。

◎バスの本数を多くして、試合終了後、スタジアム→浦和駅の専用レーンを設ける。W杯の時に新潟はやっていた。この移動時間が20分なら浦和の街に戻ってくる。

こういったご意見ですが。

須藤:現状は平均で浦和駅からスタジアムまでは30分、35分くらいで到着するようになっています。浦和駅東口発着になり、時間は以前よりは短くなったでしょう。専用レーンはクラブからも提案していて、関係各所にお願いをしている最中。多くの方に協力いただきながらできればと思いますが、困難な問題です。駒場の使用については普段の利用率も高いので、大会などがあると、実際に使うことを検討してもバスを滞留させる状況にないのが現実です。浦和駅から20分くらいで埼玉スタジアムに到着するのが理想ではありますが、交通アクセスの部分は頭が痛いところです。色々な機関の協力を仰がないと出来ない事例が多いですので。

椛沢:バス自体の環境を良くするというご意見については如何でしょうか。

須藤:観光バスにした時にどのくらいの値段だと利用いただけますかね。今、シャトルバスは片道400円です。

参加者:スタジアムに来る人は、交通費は安ければ安い方が良いので、そんなには上げられないと思う。往復1000円くらいが限度ではないか。

須藤:以前、事前予約でさいたま新都心から700円で観光バスを出した時は赤字でした。観光バスは往復2000円くらいないと出来ないのが現状です。

畑中:今はブンデスリーガが世界でも一番集客をしていて良いリーグだと言われていますが、そのブンデスリーガでは市内の交通手段はチケット代に含まれていて、自由に乗れるということになっています。これはクラブが自分達だけのためにやるだけではできなくて、リーグ全体でファン作りのためにやるとか、自治体が一緒になってやろうという動きがあってやらなければ実現出来ないことだと思います。もちろんクラブが課題を克服することが重要なのですが、最終型はリーグや街全体の取り組みの中でやれるのが良い。埼玉県は自転車保有台数が日本で一番だそうで、サイクリングロードの整備をしたり、街の中を自転車で移動しましょうという動きがあるそうです。しかしながら自転車専用道路の整備が完全に出来るかというと、韓国のようにはできなくて、歩道と兼用になってしまう。自転車専用道路ができれば、レンタサイクルを駅に作って、途中の休憩箇所を作っていけるとか、というアイディアも良いと思います。それにはクラブから街への呼びかけや、皆さんからの意見を自治体などに伝えていくこともしていきたいと思います。

畑中隆一事業本部長

椛沢:環境整備については、もちろん浦和レッズだけの力で改善できる問題ではないので、関係各所の協力が必要になってきますね。その協力体制を作るためにも、よりいっそうクラブが街の中にとけこんだ存在なっていかなければと考えます。

畑中:私は、スタジアムは街づくりの1つの機能だと思っています。実際にクラブでは、浦和美園の街作りの検討会にも参画して、どういう街にしたいかということをお話しさせていただいている。浦和レッズは小さな駒場から大きな埼スタに移動して、たくさんの人の試合を見てもらって、タイトルを取って恩返しをしようと考えたわけですが、強いチームという牽引力もあって皆さんも多少不便でもスタジアムに足を運んでくれた。我々がそういった時に少しあぐらをかいていて、改善できることをやらなかったことも事実で、現在は不自由に感じていた不満が、チームの魅力が落ちた時にさらに不満に感じ、その結果、スタジアムに足を運ぶ気持ちが急激に遠ざかってしまっているのではないかと思っています。我々は「浦和」というホームタウンを大切にしたいので、浦和の街からどういう風にファン・サポーターの皆さんが埼玉スタジアムに行って、浦和に戻ってくるかという流れを作ることが課題だと思っています。根本的にスタジアムから早く戻って来れることは重要課題ですし、駒場で試合をやっていた時は、スタジアムからレッドボルテージと練習場が良い距離感にあって、そこを行き来しながら試合のときにお店に寄ったりすることも出来ました。そこがコミュニティーの場所になっていて、皆さんと話をしたりそることも可能だったのです。今はスタジアムは試合を見て、お店は物を買いに行くだけ、練習場は練習を見に行くだけというように別々になってしまった。そこを改善するためにも、浦和の街と埼玉スタジアムの関係、クラブと駒場スタジアムを含めた浦和の街との関係がポイントになってくると考えています。クラブは街との関係を失ってはいけないし、この街との関わり方は、皆さんとも一緒に考えながら取組んでいきたいと思います。

椛沢:環境以外の部分で、試合時間で街に戻りやすくなるという意見もありますが、試合時間が早い方が良いという意見が多いようです。土曜日も仕事のある方はナイターの方が良いとのことです。

畑中:試合時間に関しては、Jリーグ開幕当初は子供たちにたくさん見て欲しいという思いがありました。当時は学校が完全週休2日ではなかったので、土曜日の午後を試合開始時間のベースにしていたわけです。その後、完全週休2日になると、少年団の大会が土曜日に入ったりして、そうなると子供たちがサッカーを見に来るのは土曜日のナイターの方が見られるとか、それで試合時間に苦労した経緯もあります。それであれば、子供たちの大会を埼玉スタジアムに持ってきて、そのまま試合を見てもらおうとか、ホームタウン、アカデミーの部署が連動して検討していて、次世代を担う子供たちがどうやったら見に来てくれるのかということも今後さらに考えていきたいと考えます。

須藤:試合時間については、クラブが決められるわけではなく、最終的にはテレビ中継の関係で決まります。その中で、埼スタで13時キックオフは運営規模上、準備する時間が難しい状況があり、お断りをしているのが現状です。埼スタでの試合ですと早くて14時キックオフが限度です。

椛沢:スタジアムに街のコンテンツを持ってきてしまって距離を縮めるという意見もきております。

◎王龍がスタジアムグルメに顔を出したが、希望するお店を業種にかかわらず出展させて、南広場で仮想商店街を作る。そういうイベントを何度かやって、店の人とサポーターとのコミュニケーションを図らせる。そういう試みから、一度、店にも足を運んでみようと思わせる仕掛けづくりが大切だと思う。

須藤:この企画は、地産地消という考えで始めています。街のお店の色々なところに出てもらって、クラブと街と近づけるということはやっていきたいと思いますね。

≪以下、次号(5月31日配信予定)に続く≫

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