浦和フットボール通信

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河合貴子のレッズ魂ここにあり!「聖地での洗礼」(9/14)

J開幕から浦和レッズを追いかけ、ケーブルテレビのパーソナティなどで活躍をしている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。

駒場での厳しい野次に思う。

いつ頃からだろうか?”駒場運動公園陸上競技場”が「聖地」と呼ばれる様になったのは・・・。93年にJリーグが開幕して、2001年に埼玉スタジアムが出来るまでの間、浦和の数々の歴史を刻んで来た。J2降格、J1昇格、Jリーグステージ初優勝。滝の様な紙吹雪や出島と呼ばれる一角にアウェーサポーターを押し込み、その一角以外は全て真っ赤に染まった。サポーターの歌声は風に乗って、浦和駅まで届き、喜びも、悲しみも、”駒場スタジアム”は全てを包みこんでくれて来た。「我々のホーム」と言う思いは、埼玉スタジアムと同じであるが、この場所から浦和が始まった歴史を思うと、やはり特別な場所なのだ。それは、”浦和駒場スタジアム”と名前が変わっても、スタジアムに対する思いは変わる事がなかった。

聖地である”浦和駒場スタジアム”で、約2年ぶりとなった公式戦、天皇杯 ヴォルカ鹿児島戦が9月8日に行われた。試合が始まると、日頃から慣れている埼玉スタジアムとは違う雰囲気に、選手達は戸惑いを隠せない様に感じた。前半9分、カウンターからヴォルカ鹿児島に先制点を許してしまい、圧倒的にボールは支配するものの、単純なミスで自分達のリズムが作れないでいた。アマチュアのチームであるヴォルカ鹿児島には、勝って当たり前と思う気持ちが強く、「失点をするとは浦和のプライドが許さない、3年前の天皇杯 松本山雅戦を忘れたのか?!」等とそんな不穏な空気がスタジアムを包み込んだ。不穏な空気が流れる中、2-1でヴォルカ鹿児島を下した。試合後、梅崎司選手は「恥ずかしいプレーをした。1発勝負で負けたら終わり・・・。次のステージに進めて良かった」田中達也選手は「天皇杯、愛媛とか松本とか過去にあったからね・・・。勝てた事は大きいと思う」と胸を撫で下ろした。

安堵の表情を浮かべる選手達が多い中、永田充選手は違っていた。「ゲームの入りで、みんなが前掛りになっている所で、僕がボールを持ちだして、陽介に預けて、そこで相手に不運な取られ方をしてしまって、陽介に悪かった。もう少し、持ち出さずに落ち着いてプレーをすれば良かった。あのプレーからスタジアムが変な空気になってしまって・・・。野次が凄いですね・・・。良いプレーをしたら、乗せてくれるけど・・・。”駒場”ではメンタル的に強くないとプレーが出来ないですね」と自分のワンプレーが切っ掛けとなってスタジアムの雰囲気を変えてしまった事に対して、反省をしていた。選手のプレーひとつでスタジアムの雰囲気がガラっと変わってしまうのは、観客席との間にトラックがあるものの、ピッチとの距離が近く、観客席の声がピッチに届く”駒場スタジアム”独特のもので、それはある意味聖地での洗礼の様なものであると感じてしまった。良いプレーをすれば、歓声が上がり、選手も調子を上げて行く事が出来る。しかし、観ている人達が納得のいかないプレーであれば、それがブーイングとなり選手にプレッシャーとなって伸し掛かってくる。

しかし、今回の試合中に観客席から聞こえて来た声は、残念な事に応援と言えるものではなかった。フットボールにはミスは付きものである。大切なのはミスした後である。それなのに「お前ら練習してんのか?」「プロだろ?」「走れよ!」「何やってんだよ!」と聞いていて哀しくなってしまう罵声が選手達に浴びせられていた。濱田水輝選手は「あの試合内容では、ブーイングは当たり前だと思った。試合に集中していても、聞こえてしまう。リズムが狂ってはダメだと思っていたが、雰囲気が悪くって・・・。悪い時は、もっとやらなきゃってパワーに変えるぐらい強くならないと」と話してくれた。しかし、選手も人間である。罵声よりも「頑張れ!」の一言がパワーになる筈である。宇賀神友弥選手は「観ている人達もイライラしていたと思うが、ワンプレー、ワンプレーで罵声が聞こえて・・・。自分達もイライラしてくるのを我慢して、勝つ為にやっている。一緒に我慢して声で後押しをして欲しい気持ちがあった」と正直に話してくれた。

以前、オジェック監督が「選手を育てる応援をして欲しい。勝たせる応援をして欲しい」と野次に対して警告を発した事を思いだした。試合中に選手のプレーに対して野次や文句を言いたくなってしまう時があるのは、理解出来る。だが、試合中はどんなに苦しい時でも、罵声を浴びせる前に、一緒に闘って欲しい。
リーグ戦残り10試合(9月15日現在)となった今、優勝を目指して共に闘うと言う事が、どう言う事であるのか・・・。忘れかけていた事を聖地「駒場スタジアム」が思い出させてくれた。

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