浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトーク拡大版 Vol.107(9/27)

大敗のガンバ戦で求められる姿勢。海外の育成環境

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:まずは先週末のガンバ戦のお話からしましょうか……。皆さんご存じの通り、ホームで0-5の大敗となりました。日産スタジアムでの勝利で、サポーターもギアを上げて上を目指そうと意気込み、今季最高の46000人のサポーターが期待を持って詰めかけたタイミングだっただけに残念な結果でした。簡単な試合にはならないと思ってはいましたが、さすがに誰も想像しなかった大敗だったのではないでしょうか。

豊田:「大量失点で零封されるゲーム」は、3点差以降の失点はあまりチーム力の参考にはならないと考えているんです。ずっとツギハギのチーム作りが続いた後にミシャに全権を委ねたレッズの経緯からすれば、あり得る負けだったと認めるしかない。目先を変えた交代カードを使って、ロングボールもまじえての撃ち合いに持ち込めば……との意見もききましたが、ミシャの手法からいってもああいう場面を想定しての対策は作っていないでしょうね。そしてクラブ内に目ざすサッカーの意志を示すためには、それが正解とも思います。

椛沢:試合の印象としてはガンバがレッズ対策を完璧にこなしてきたということだと思います。高い位置から永田、阿部を中心にプレッシャーをかけてボールを繋がせてもらえず、レッズの前線の原口、柏木、マルシオにも仕事をさせずに、レッズとしては完璧に抑えこまれてしまった。守備の部分でも穴をつかれて、今季最多の5失点を喫しました。まさに完敗の試合で、この大敗を教訓に修正をするしか方法がないでしょう。横浜で一皮向けてきたかと思ったのですが、まだまだ今のチームは相手が対応してきた時の術が少ない。ガンバ戦で、冷水をぶっかけられたというか、現実を見させられたと言っても良いかもしれません。この試合で目指している道がぶれることはないと思います。地道に改善をしていくしかないですね。

豊田:前半からタテに入れる起点のパスだけを集中的に狙われていました。後方からのチャージも厭わないガンバの気迫に押されるし、そのボールロストが決定的なピンチに直結もするので攻めのフィードが影をひそめた。前半中ごろからはマルシオと柏木が完全に消えてしまいました。原口も含めてボールを引き出す動きに長けているわけでもないので、浦和は前列と後方の間に完全な間延びが発生。その隙間にガンバのフィールドプレーヤーがコンパクトな陣形でぎっしり入り込み、いかにも気持ちよくパス回しをされた、という印象のゲームでした。後半12分からの3分間が山場だったと思います。またしても阿部に抜け出された大ピンチを外してくれて「流れはまだある」と思ったんだけど……。直後の左からのチャンスを梅崎が決め切れず、逆に折り返しの逆襲でとどめの3点目を押し込まれてしまった。埼スタの遠藤は確かに上手いけど(苦笑)組織としての指標を失っている現状はガンバの方がよほど深刻なはず。彼だって必死の思いでこの一戦に臨んだのでしょうから。こういう相手にしっかり引導が渡せない理由は、支持者である私たちも考えなければなりません。

椛沢:負けは負けとして受け入れるべきだと思いますが、個人的にはホームゲーム、そして今季最高の観客動員数の中でプロとして最後まで闘えていなかった選手がいたことが、何よりも残念でした。浦和レッズのエンブレムをつけている以上はそれ相応の責任があるわけですし、選手達が「スタジアムに足を運んで欲しい」と呼びかけている責任もあるわけです。ゲームとしては完敗であることは致し方ないとしても、それでも最後まで闘い抜く姿勢、1点でも取り返そうという気持ちを見せてくれないとスタジアムに足を運んだサポーターに対して何も提供が出来ずに返すことになってしまい、次に足を運ぼうという気持ちにさせられない。“目指している道は間違っていないから、この試合はしょうがない”というだけで片付けず、観客動員数が伸び悩む中で、この危機感はもっとチームは持たないといけない。こういう時だからこそレッズの選手としての姿勢を常に問われます。

豊田:確かに受け容れがたい負け方ですし、そういう意識が徹底されることがレッズの理想です。ただ、編集長には伝えにくい現実もありますね……。4点目以降、ガンバのゴールが決まるたびにバックスタンドの私のシート周辺では、かなりの数の赤いレプリカ姿の人たちから拍手と歓声が上がりました。「続けてもやられるだけだから(ロスタイムは)とらないで」という声も飛んだし、本当にたくさんの人がタイムアップのはるか前に席を立ったことも皆さんご存知の通り。「あるべき熱意が見る側にもない」と言われればそうかも知れないけど、そういう人たちも並みはずれた手間ひまや負担をかけてスタンドに来ているわけです。正直、個人的には同調できる部分の方が強いな。長く見ていれば誰でも分かるけど、「支える気持ち」とか「応援のイメージ」だけではカバーしきれない性癖をレッズは変わらず抱えています。こういう現実にクラブとサポーターが真正面から向き合う気持ちを普段から持ち続けなければレッズの理想は実現しないし、スタジアムの盛り上がりも取り戻せないと思う。逆説的ですが、その意味では「あのゲームが最終節じゃないだけ良かった」というのが自分の実感ですね。

椛沢:レッズに厳しい言い方をすれば、途中で帰らせてしまう試合をしたということだと思います。そのサポーターの想いは十分理解できます。さて、先週までお送りした浦和少年団のVIPインタビューでしたが、この続きとなる浦和タウンミーティングでは、浦和レッズの矢作アカデミーセンター長をお招きしての会を開催して、浦和レッズ、浦和サッカー少年団が膝を交えての話となります。このテーマは今後の浦和の才能育成、地域密着を考える上でも非常に重要なテーマになってくると思います。ご興味がある方は是非ご参加ください。応募も開始しております。(第4回浦和タウンミーティング参加申し込み受け付け
今までの浦和レッズは才能育成環境を作る上では他の地域よりも遅れていることは否めない事実です。その中で、豊田さんは、各国のジュニア年代の地元育成事情についても情報を収集しているとのことですが、少しご紹介して頂けますか。

豊田:長い経緯も抱えているテーマなので、メディア関連の知り合いの方々からも折々に提言を頂いてきました。特に海外で活動されているライターや記者の方々はホームタウン熱や支援体制もじかに感じているから、提言にもパワーがありますね。「浦和はサッカー熱があるし、指導者もいるのだからクラブとの連携はこうしたら?」という濃い内容が含まれています。ヨーロッパが中心なのですが、オランダで小野伸二の活躍を追っていた中田徹さんにはエールディビジの中位チームのスカウト・育成現状をレポートしてもらいました。せまい国土の中でも地元才能を確実にすくい取るため、各クラブが地元と共同で40人体制でスカウト網を作っているそうです。また、イタリア・フィレンツェ在住でご自身の親族も地元プロのジュニアに所属しているというライターの宮崎隆司さんからは、「おなじみの教会教区をベースに成り立っているイタリアのクラブの構図は、区域ごとの少年団教育を続けてきた浦和にとって参考になるケースでは?」との興味ぶかい解説。また、欧州通信でドイツを担当してくれている松尾フース美江子さんからは、かつてレッズが提携関係を結んでいたバイエルン・ミュンヘンのお膝元の地元育成事情をいただいています。現地では私自身も見聞きした情報もあります。詳しくはタウンミーティングやその後の欧州通信などでご紹介して行こうと考えています。

椛沢:以前から話が続いている「駒場開催」の話ですが、タウンミーティングでも登場頂いている、畑中事業本部長に詳しく話を聞いたところ、クラブライセンスの関係でJリーグが認めるホームスタジアムの基準から駒場は外れる可能性が高いけれども、ホームゲームを開催することはそれとは別途、理事会に申請を行えば、可能であるとのことです。クラブとしても駒場開催を戦略的に捉えて、地域密着の拠点としての駒場という意識を持って考えているとのお答えを頂きました。

豊田:くり返されている「ホームタウンの盛り上がり」という問題も、クラブに近しい支持者やメディアの動きを見ているだけでは緊張感が伝わらない部分があると思う。JR浦和駅近隣、北浦和駅近隣、それぞれ浦和レッズの公式戦が駒場で開催される前後両日は、フットボール談義が地元に自然と沸きあがって来るわけです。駒場開催が少ない現状では、大宮のナクスタ開催のダービー・デーがその代用として見られたりしている。これって危機的状況と見るのが当然では? ゲーム前後に会う地元の人々が「世代が変わればアルディージャだったりして」と印象をしゃべる流れは、ホーム浦和全体で覆して行きたいものです。

椛沢:駒場でゲームが開催されることで、街にレッズの話題が提供できるということは、目に見えない効果を生んできたと思います。これは絶やしてはいけないでしょうね。そして、今週末は国立で柏レイソル戦です。大敗の後の試合だけに、気を引き締めて悪い流れを絶たないといけない重要な一戦です。レイソルも上位を虎視眈々と狙う昨年の王者ですから、フルパワーで挑まないと厳しい相手です。中盤の要、鈴木啓太が出場停止で代役となる選手の活躍にも注目が集まるところですが、この難局を浦和レッズ一体となって乗り越えていきましょう。

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