浦和フットボール通信

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河合貴子のレッズ魂ここにあり!「答えはピッチの中で~原口元気選手」(10/4)

J開幕から浦和レッズを追いかけ、ケーブルテレビのパーソナティなどで活躍をしている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。

全てを払拭するプレーをピッチの中で魅せろ。

選手交代には、色んな意味合いが込められている。負傷交代は致し方ないにしても、それは戦術的役割が大きい。例えば、1点差で緊迫した状況で勝っている場合、アディショナルタイムでの選手交代は、残り数分を選手交代で時間を稼ぎ、守備的な選手を入れて守りを固めるが、ゲームの流れが良ければ、選手交代を行わない事もある。定められた90分の中で、選手交代枠は僅かに3人である。ゲームの流れを読んで、勝つための最善の策を選択するのが監督の采配であり、手腕が問われるところだ。選手交代を告げた時ミーシャ監督は、ピッチを去る選手に対して必ず、握手をしたり、ハグをしたり、頭をなでたり、時には背中を優しく叩いたりして、労をねぎらう。選手の立場になってみると、やっぱり最後の笛が鳴るまでピッチに立っていたい気持ちは当然強い。だが、気持ちを抑え戦術を理解して納得してベンチに下がる選手もいるが、納得出来ない選手もいる。

9月29日に行われた柏戦で、ミーシャ監督は、本来のプレーと比べ精彩を欠いた原口元気選手を前半27分にポポ選手と交代させた。早い時間の交代に原口選手は、不満を露わにした。相手のしつこいマークを避ける事も出来ず、ボールが足元に収まらない状況を、プレーしている原口選手自信が一番良く分かっていたと思う。そんな厳しい状況下でも、絶対に打開してゴールチャンスを自分が物にするんだ!と闘争心を持っていたに違いない。勝つために自分がチームに貢献したいという気持ちが人一倍強い原口選手だから、自分の不甲斐ない交代に込み上げて来る気持ちを抑える事が出来なかったのだろう。そう思うと、決して褒められた態度ではなかったが、原口選手がとった態度は理解出来るし、逆にしょぼくれてベンチに下がる姿も正直見たくなかったと思う。ただ、怒りの矛先を周囲に向けるのでは無く、精彩を欠いた自分自身に向けるべきだった。

逆転ゴールが決まった瞬間に、歓喜の輪の中に原口選手の姿が無かった。素直に喜べない姿を見た時は、淋しさを感じてしまった。更に、試合後のサポーターへの挨拶もせず、ロッカールームに戻ってしまったのは、若さ故なのかも知れないが、どんなメンタル的な状況でも最後の挨拶だけはしっかりとするべきであった。それが、私は一番哀しくて、心が痛くなってしまった。

かつて選手交代で不満を露わにしたのは、永井雄一郎選手やワシントン選手達などがいた。『勝つために貢献したい!ゴールを決めたい!』どの選手も気持ちは同じなのである。2007年3月7日ACL ペルシク・ケディリ戦で、ワシントン選手がユニホームを脱ぎ棄てた時も、当時のオジェック監督は「私は試合の流れを見ていたから、ワシントンがどんな行動をとったか?知らない」と不問にした。ミーシャ監督も、試合後の記者会見でバイエルンのトラパトーニ監督がクリンスマン選手を交代させた時の話を持ち出して「試合を集中して見ていた」と話して不問にした。当時、冷静になったワシントン選手は、目に涙をためて謝罪をした。原口選手も冷静になった時に、様々な思いが駆け巡っていただろう。

10月2日の午前練習後、ミーシャ監督は原口選手を呼び止め、握手をして、優しく抱き寄せて話をした。ミーシャ監督は、本当に選手の気持ちを良く分かっているのだ。ミーシャ監督に「もう、原口選手は大丈夫ですね!お二人の姿を見て、心が温かくなりました」と話しかけると、満面な笑みを湛えて「広島時代に陽介(柏木選手)も同じ事があったよ!誰でも通る道だよ。元気はいままでそう言う経験がなかったんだ。これでまた、ステップアップする」と嬉しそうに話してくれた。

原口選手に声をかけると、「何も言う事は無いです。次の試合でやるだけです!」と言葉は少ないが、原口選手の全ての思いが伝わって来た。不甲斐ない自分のプレー、そして気持ちを露わにした態度、その後の自省の念。その全てを払拭するプレーをピッチの中で魅せる筈だ。謝罪の言葉よりも、何よりも、答えはピッチの中にある。

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