浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトーク Vol.110 拡大版(10/18)

日本代表の欧州遠征で感じたこと。浦和タウンミーティングで感じたURAWA育成の未来

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:先週末は国際Aマッチデーということでリーグ戦はお休みでした。日本代表は、アジア予選の裏で欧州遠征を行い、フランスそしてブラジルと対戦をしました。フランス戦は、皆さんご存知の通り、フランスに押し込まれる展開を耐え続けて、試合終了間際にフランスのコーナーキックからカウンターを発動させて、今野がドリブルで駆け上がり、右サイドを全力疾走していた長友にパス。さらにセンターにいた香川にグラウンダーのクロスを挙げてゴールを決めて1-0で勝利しました。試合内容としてはフランスに押し込まれる時間が続く苦しいものでしたが、今までのような力の差を感じなかったのも事実ですね。

豊田:日本代表の対フランス戦履歴は本当にいろんなエピソードが含まれており、思い入れは深いです。初対戦の時代から考えれば隔世の感がある。あれはキリンカップ(94年・東京国立競技場)でのゲームでしたが、日本サッカー界がまだドーハ・ショックから立ち直れていなかった時代でした。監督はハンス・オフトのあとを継ぐ外国人監督だったパウロ・ファルカン氏。相手のフランスも98年の開催国でありながら、地元パリで行なった欧州予選最終戦ロスタイムにブルガリアに決勝弾を叩き込まれて沈没していた。アメリカ大会の本大会に出場できておらず、「悲劇の主人公」同士の対戦という趣きがありました。ただ、フランスの先発は掛け値なしの豪華ラインナップ。あのジダンが脇役で、王様はユナイテッドで快進撃を始めていたエリック・カントナ。前線にはトヨタカップで国立を体験済みだったACミランの“怪盗”ジャンピエール・パパンがいた。実力差は大きかったな。カントナに良いように振り回されて1-4の完敗。「ヨーロッパではこのチームでもワールドカップに出られないんだ」という国立客席のマニアたちのため息を覚えています。

椛沢:エリック・カントナはあの襟を立ててプレーする佇まいからしてカッコ良かったですよね。 現代のサッカー選手ではなかなか感じることができないオーラのある選手でした。その時のフランス戦では、現在はテレビなどでサッカー解説をする小倉隆史さんが左足の強烈なシュートを決めたというのもよく覚えています。

豊田:11年前、中田英寿を中心にしたトルシエ・ジャパンが同じサンドニで対戦したゲームもショッキングでしたね。テレビ観戦でも鮮明でしたが、豪雨のコンディションの中でイレブン全員のボディバランスが哀しいほど違う。まともにボールキープができたのもシュートが打てたのもヒデだけ、という現実を思い知らされた試合だった。

椛沢:当時ヨーロッパでプレーしていたのは中田選手だけでしたね。今回の対戦では海外リーグで活躍する選手たちの経験値が上がり、フランス相手にも物怖じしなくなったこともあって、代表の選手が堂々とプレーをしていたように見えました。相手をリスペクトし過ぎて引きすぎたという見方もあるようですが、逆にフランスが日本に対して下に見ているところがあって、恐れなしに、前半から試合を決めてやろうと前掛かりに来られたことで、押し込まれた展開になったこともあるんじゃないかと思います。世界に対して日本は嘗めてかかれないと思わせていくことも勝負していく上では必要だと思います。

豊田:日本のレベルアップに対し、フランス代表は全盛期に比べて全般的に小粒になった印象があります。とはいえ完全アウェーのパリで、W杯優勝国に完封で勝ちきった意味は大きい。やはりヨーロッパリーグでレギュラー級として出場しているメンバーには、場慣れというか「落ち着き」を感じました。

椛沢:ブラジル戦は、逆に世界のトップレベルとの差を見せつけられた試合でした。自国開催に向けて強化しているブラジルは強かったですね。一番ブラジルの強さを感じたのは試合巧者ぶり。これはブラジルのサッカーの歴史が積み上げたものが各選手に受け継がれているんでしょうね。局面では差ほど力の差を感じないのに、ここぞ!の場面でやられて失点をしてしまう。ネイマールを中心とした若い世代も台頭をしてきて、チームとしてグループを作って戦っているブラジルは本大会に向けて良いチームになって行きそうでした。

豊田:まず不思議に感じたのは、カカのどこが不調だというのでしょうか?(苦笑)あのカナリヤの中盤のプレーヤーたちの動きと技術、読みの深さには恐れ入るしかない。特にオスカル(チェルシー)はロンドン五輪の時にも地元イングランドのサッカー好きたちが絶賛していましたが、地味ながらネイマールの上を行く王国のキーマンに見えました。相手を引き付けた上でパスカットをする際、クロスプレーになっても絶対にファールはしない。自分がつぶれてもカウンターに持ち込む繋ぎだけは一貫して完遂する。しかもすぐさま起き上がって猛ダッシュで急所を突いてくる(笑)。これって単純に試合運びとか、プレーのメリハリという言葉では表せないチーム力格差の源だと思いますよ。先制点を決めたパウリーニョら、他の中盤構成員ともよほどのイメージ共有ができていないと不可能なプレーでしょう。守備網にまで戻ったあげく、マイボールとなるや50メートルレベルを全速で走って鋭利な反攻に出る。途中でミスれば致命的な逆カウンターを食らうリスクを全員が背負っても、それを必ずキメて来る。「考えながら走る」のもほどほどにしてくれという感じ……。

椛沢:あのブラジルの迫力あるプレー。ゴールに向かう強い姿勢は、レッズの選手たちもぜひ見習って欲しい姿勢でしたね。

豊田:テレビ画面だとイレブン全体の連動が掴み切れない部分がありましたが、現場観戦した人は素直にうらやましい。勝敗を別にすれば、サッカー好きとして良いものを見たと思いますよ。攻守を切り替えたときのカナリヤの位置取りやダイナミズムを、ぜひとも現場のスピード感やサウンドで体感してみたかったなあ……。しかし6年前のドイツ大会のヴェストファーレンもそうだったけど、ブラジル代表は日本代表相手にはイヤに気持ちよさそうなサッカーをしてくれますね。

椛沢:日本代表としては、そんなトップチームのレベルを体感が出来て、良い経験になったのではないでしょうか。この欧洲遠征を通じて、アジアでの戦いとは別に、ザッケローニ率いる代表が世界に出た時に、どこまで出来るのかという指標を図れるものだったと思いますが、良い部分、悪い部分というのはある程度見ることが出来たのではないかと思います。

豊田:いうまでもなく、その代表メンバーに浦和レッズの現役メンバーが複数入っていて欲しい。

椛沢:その部分はレッズサポーターとしては残念な部分ですね(苦笑)。その浦和の話に戻りますと、先週木曜日に北浦和で第4回浦和タウンミーティングを開催しました。テーマは「レッズジュニア創設と地元の才能育成」についてでした。この模様については詳細サポートを後ほど掲載いたします。会には、レッズから矢作センター長、地元からFC浦和、町田監督と北浦和少年団の吉野監督に登壇頂きまして、レッズジュニア創設に向けての話、レッズと地元がどう才能育成について連携をしていけるかという話をしていただきました。これまで少年育成については、地元に日本屈指の歴史とノウハウがあったわけですが、レッズがそこと連携をすることがなかったわけですけども、ジュニア創設にあたってその気運が高まってきたことは大きなチャンスだと思いますね。それは地元の才能育成に限らず、サッカーの街浦和とレッズが連携するという意味においても大きなエポックを起こせるチャンスだと考えます。レッズがただジュニアチームを作って運営するというものではなく、浦和のサッカー少年団との連携を図ることで、この街のトップカテゴリーにレッズが存在をする三角形を作って、そこに才能を送り込めるシステムをこの街と作っていってもらいたいと思います。

豊田:客席には浦和36団の幹部の方や元少年団選手のご父兄が来られ、熱心にパネリストの方たちのコメントに耳を傾けました。懇親会でも、少年団とレッズジュニアの連携についてさまざまな立場から質問や自論をぶつけられていましたね。おお、さすがにここはURAWAだな、と痛感するイベントになりました。

椛沢:あの会では紹介しきれなかったのですが、国内事情ではユース出身選手が続々と出世している広島の育成状況についても豊田さんは取材をしているのですよね?

豊田:ええ。やはりこのタウンミーティングでも取り上げた森孝慈さんの履歴をたどる意味からも、広島は見落とすことができない「育成の注目エリア」。くわえて、今季レッズの最大の救世主ともいえるミシャ監督が、存分にアカデミー出身のプレーヤーを鍛え上げた場所でもあるわけですから。

椛沢:色々な部分で共通点もありますし、浦和が見習うべきところがありそうなエリアではあることは間違いないですね。この部分については追って情報をお伝えしていければと思っております。

豊田:11月にはサンフレッチェとの大一番もやって来ますが、その際にも広島ウォッチングを継続しようと狙っています。会場でも話題になっていたのですが、レッズユースがプレミア・イーストから降格する危機に瀕している。ところがウェストでは広島はしっかり首位固めを継続中。このあたりはしっかり背景を見通して行きたいと思います。

椛沢:さて、今週末はリーグ戦が再開。2位ベガルタ仙台とユアテックスタジアム仙台での対戦です。昨年は震災後すぐに仙台で対戦をして、様々な思いを背負って戦い挑んできた仙台に気持ち負けをしたところがありました。今季もその思いは継続してもって挑んでくると思いますが、我々も仙台の上を狙うために、彼らに負けない強い気持ちをもって上を狙っていきましょう。チームも異例の3時間練習と終盤に向けて、調整を行っているようですから彼らのパフォーマンスをさらに引き出す雰囲気作りをサポーターはしたいですね。あとは原口元気。調子を落としていますが、彼も仙台戦で結果を出して恩返しをしたいと意気込んでいるようですから、ぶち当たっている壁を仙台で破ってもらって、終盤戦のキーマンとなれるよう活躍。ゴールを決めてもらいましょう。

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