浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトーク Vol.115 (11/28)

完敗・鳥栖戦、Remember11.27

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:先週末は、レッズは敵地・鳥栖に乗り込んでのサガン鳥栖戦でした。鳥栖は小さな地方都市という印象の街ですが、その駅前には巨大なサッカー専用スタジアムがそびえ立っています。このクラブはまさに街のシンボルになっているという印象を受けました。この日は最多入場者数となる22,116人を記録。J1リーグ戦では初見参となる”ベアスタ”のアウェイスタンド、メイン、バックも赤く染めた5000人以上のレッズサポーターがアジアを掛けた戦いに熱い声援を送りました。会場の雰囲気は、アウェイ入場口では「ようこそ佐賀県へ」とお土産を手渡されたり、子供たちが盛り上げたり、他のJクラブとは違ったアットホーム、ファミリーな雰囲気。この街のクラブを楽しんでいるという空気感が充満している感じでした。試合前には、埼玉生まれ、佐賀育ちという芸人のはなわさんが登場して、「佐賀県」の歌を熱唱。レッズサポーター側からはブーイングを受けていましたが、J2の時代にも芸人の江頭2:50が登場したことで話題になっていましたので、そんなことも思い起こす出来事でした。

豊田:”ベアスタ”には様々な思い出がありますが、J2降格時に佐賀県にこのようなスタジアムが建設されていたことに、周囲のレッズサポーターともども驚いた記憶があります。J2での初対戦では岡野雅行やイスラエルのマカビ・テルアビブから加入したばかりのアンジェイ・クビツァらの強烈な攻撃で7-0でサガンを倒したのですが、やはり記憶に残るのは11.19の最終戦でしょう。土橋選手のVゴールに対する当時の鳥栖の高祖和弘(こうそ かずひろ)監督の共同会見でのコメントは、「駒場という場所は何とも表現できない。本当に凄い試合のムードを作るスタンドだと思った。神様もレッズに勝たせたいと思ったのだろう」というもの。レッズの歴史における今回のゲームの重要性に照らしてみても、サガン鳥栖というチームには不思議な因縁がついて回っていると思います。

椛沢:試合は、戦前の予想通り、ポゼションで優位に立とうとするレッズと、シンプルに攻めるサガンという構図になりました。レッズはサイドを効果的に使いますが、しっかり中を固めるサガンの守備をなかなか打ち崩すことができませんでした。このまま0-0で前半を折り返すかというタイミングの45分にサガンのエース豊田に、左サイドをえぐられて折り返されたグラウンダーのクロスボールを押し込まれて先制点を許します。勝負の差は、この2点を決めた、点取り屋・豊田の有無だったような気がします。クロスボールへの入り方は、まさにストライカーの動き。今のレッズには欠けているプレーです。

豊田:ゴール前にラストパスで送られるボールにニアからもファーからも忠実に飛び込む。現在のレッズ、特に攻撃面でのプレースタイルから考えると、鳥栖のような「ストライカーらしい」動きや働きからの得点というのは生まれにくい情況と思います。ただね、やはり守りから入るチーム相手に、定形通りのキープからの攻めだけでは得点の気配は生まれてきません。選手達がもっとかき回す動きを能動的に行なってほしかった。サポーターも鳥栖にも五千人以上ですか……。アウェイ戦とは思えない雰囲気はテレビ画面からも強烈に漂っていただけに、終盤2節を残しての5位対3位対決にふさわしいせめぎ合いでは負けて欲しくなかった。ここで負ければACL圏内が絶望的になる相手に、注文どおりにうっちゃられる結果となっただけに。

椛沢:後半も再チャージを掛けるレッズが主導権を握り、58分に2試合連続となる梅崎の思いっきりの良いシュートが決まり、同点に追いつきますが、5分後に勝ち越しゴールを許し、一気に勢いを削がれると78分には3点目を決められて万事休す。失点をした時間帯も悪かったと思います。確かにポゼションをしっかり行ってチャンスを作る作業を丁寧にしているのはレッズでしたが、勝負を決めるプレーを確実にしてきたのはサガンでした。この差が大きく出た試合だったと思います。レッズは攻守の大事なポイントでサガンに上回られてしまった試合と言わざるをえません。この敗戦によって順位も5位まで後退。最終節を残してサガンとは1ポイント差、レイソルとは得失点4差と、まだ3位浮上の可能性は残していますが、逆にさらに中位に沈む可能性も残しています。最終節は勝ち点で並んでいる6位の名古屋です。

豊田:今季の鳥栖が作り上げたホーム戦の雰囲気は、編集長が冒頭に紹介したような多面的な努力から”ベアスタ”で勝利を積み上げてきた成果と思います。逆にレッズは他力本願の要素を数多く抱えるにしろ、ACLの出場権確保をホーム埼玉スタジアムでしゃにむに掴み取りに行くしかありませんね。

椛沢:そして昨日は「11.27」でした。この街の記憶として忘れられない日です。そう、レッズがJ2に降格して13年が経過しました。屈辱の結果を味わい、本気でこのチームを強くしなければいけないと改めて思ったのもあの頃でした。あれからリーグ、ナビスコ、天皇杯のすべてのタイトルを獲り、アジア王者にまで登りつめたのは今思い返すと、出来すぎたストーリーだったかもしれません。一度登りつめた頂点から、新たな価値を創りだすことに時間がかかっているような気がしますが、この街のクラブは永遠に続いていくわけですし、頂点に登り詰めてゲームクリアをしたわけでもないです。レッズ20周年の今年、これからの20年、10年後というものも考える時間にしたいところです。

豊田:いつもこの時期が来ると「いまは終盤の応援に賭けるしかないけど、今季のレッズの総括はどの機会にどのように行なわれるのでしょうか?」という声を耳にします。椛沢編集長以下『浦和フットボール通信』とも力を合わせて本誌特集にも取り上げて行きたいと思います。それにしても最終節を前にして、Jの勢力図もずいぶんと変わったことを認めざるを得ない。今回話題になった鳥栖や仙台がレッズの上位にいます。13年前の降格で我々がアウェイで訪れた時の”ベアスタ”や”ユアスタ”の客席には「地元のレッズ支持者」がいて、レッズサポーターの応援や熱意を唖然として見ている人々がいました。そんなホームタウンのクラブが、いまや我々を飛び越して見事にJ制覇を狙える位置にまで成長を果たしています。いままでのURAWAに足りなかったもの、これからのURAWAに必要なものを以後も変わらず探求して行かなくてはなりません。

椛沢:今季の総括についてはシーズン終了後、浦和タウンミーティングを開催予定ですので、詳細が決まり次第、お伝えをしたいと思います。今週末の名古屋戦は前述の通り、勝つと負けるでは大きく立ち位置が変わってしまう試合です。一時代を支えた田中達也のリーグラストマッチにもなります。チケットも既に52,000枚が売れているようで今季初の当日券販売もなし。5万人越えが期待できる中での試合になるかと思います。今シーズン最後の締めくくりを最高の試合にするべく全力で後押しをして、来季に繋がる立ち位置を我々で勝ち取っていきましょう。

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