浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトーク Vol.117 (12/14)

レッズの補強事情と育成事情。CWCにエメが帰ってきた。

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:今年も早いもので残り3週間です。リーグ戦も終了し、浦和レッズも天皇杯での戦いのみとなりました。今週末は、熊谷で横浜Fマリノスとの一戦です。田中達也の赤いユニフォーム姿を1試合でも多く目に刻むためにもひとつひとつ勝ち上がりたいところです。さて、現在日本で開催中の世界クラブ選手権では、サンフレッチェ広島が開催国枠で出場しましたが、アルアハリに敗れて5位決定戦に回りました。そして南米王者、コリンチャンス、欧州王者チェルシーがいよいよ登場。コリンチャンスには、あのエメルソンが所属していますね。ブラジルに戻ってからもフラメンゴ、フルミネンセ、コリンチャンスと強豪国を渡り歩いて、コパ・リベルタドーレスでも13試合5得点、決勝でゴールを決める活躍で大会MVPとなり、南米王者の原動力となっていました。あのスピードも健在。プレーぶりも変わっていなくて懐かしい感じがしました。コリンチャンスはブラジルでも1、2位を争う人気クラブで、今大会にも1万人以上のサポーターがブラジルから乗り込んでいるそうです。

豊田:ブラジルは国内経済の追い風やワールドカップ(2014年)やオリンピック(2016年)の開催予定が近く、州リーグまでが活況を呈しているそうです。ヨーロッパリーグから帰った王国の猛者たちも多い中できっちり結果を残し、日本開催の本大会にまでこぎつけたエメはさすがというか頼もしい。幾つかのプレー動画も見ましたが、独特の背筋を伸ばした疾走も強引なシュートも健在です。サンフレッチェも敗れた後は、ひとつチェルシー守備陣とのエメの真剣勝負に期待したいです。彼にはレッズ在籍時代にインタビューをしたことがあるのですが、若かったせいか凄い負けん気と気迫を持つ選手と感じましたね。「埼玉スタジアムの応援はプレッシャーになるか」と訊ねたら、「僕には8万人が入ったサンパウロのアウェー戦で石を投げられた経験さえある。観衆からパワーはもらうけど、プレッシャーに感じたことはない」と豪語していた。またレコーダーを切った後のブレークタイムの気安さから「すごい快足だが、100m走は何秒?」と訊ねたのですが、「僕はサッカー選手。そういう記録は測っていない」ときっちりと回答を断られてしまいました。自分がフットボーラーであることの自我を強く持っている男でした。あのメンタリティで大会王座を勝ち取って欲しいです。

椛沢:エメはオフト監督に指導を受けて大きな影響を受けたそうです。それまではスピードと個人能力で打開するだけの選手だったのが、周囲をうまく使ってプレーすることを覚えて、より彼の個人能力を活かせるようになりました。これまで長く活躍出来ているのも、その力の使い分けが出来るようになったからでしょうね。レッズの話に戻ると、リーグ戦が終わり、戦力補強の話もにわかに盛り上がってきました。浦和関連で、メディアでも賑わしているのは広島の森脇、鹿島の興梠、仙台の関口というあたりの名前が出てきています。来季、ACLでの戦いも考えると戦力の上積みは必要とされます。少し聞いた話ですと、彼らが来る可能性は高いとのこと。今年不在だったストライカーの存在としても補強の動きはある模様です。

豊田:浦和からストライカーと呼べる存在が消えてから、ずいぶんと長い時間が経過しました。ゴールが奪えず、逆にカウンターを浴びて……というシーンは今季もあった。確かにストライカーは欲しいですが、現在のJリーグで本当の意味での「点取り屋」と呼べる才能を探すのは難しい。また、ミシャの基本戦術はJの中でも特殊です。他チームで成果を残した実績があっても、浦和でそれができるかは別。ミシャ体制確立が命題である以上、獲得した選手に合わせて戦術を決めるという手順はないわけですから、首脳部と現場が議論を重ねた上でリストアップをして欲しいです。

椛沢:補強部分は強化部とミシャの下でコミュニケーションがしっかりと行われている中で動いているようです。補強だけではクラブのカラーは薄れてしまいます。そのための才能育成部分の話では、レッズユースが高円宮杯U18プレミアリーグ9位で降格が決まり、来季プリンスリーグ関東1部での戦いとなってしまいました。関東1部には、柏レイソル、FC東京、横浜Fマリノス、川崎フロンターレ、大宮アルディージャと強豪チームが所属しているので、強いチームとの戦いという環境では、ものすごい差があるわけではないのかもしれません。翻って見ると、プレミアリーグのWESTでは、サンフレッチェが圧倒的な強さで優勝をしているのを見ると、育成年代は結果だけではないのかもしれませんが、クラブとしてのピラミッドのつくり方で差をつけられている感は拭えません。

豊田:フットボール通信でも何度もお話してきたとおり、広島は長いサッカーの歴史を誇る場所です。そんな地元・広島とプロのサンフレッチェの関連や地元高体連との繋がりを追っていくと、長い時間をかけて模索された「クラブとホームタウンの絆」が浮かび上がります。そこには地元サッカーへの情熱や愛着を持ち続ける何人かのキーパースンの存在も見えて来る。同様の長いサッカー史を誇るホームタウンであるURAWAとして、少なからずジェラシーを感じますね。そこには形式上だけではないサッカーに対する価値観の共有がありますし、人材を交換して経験値を上げる努力も小規模ながら継続されています。これは長いスパンで見ないと分からない「クラブ力」なのですが、育成型としてはトップレベル。残念ながら完全にレッズを上回る蓄積を果たしてきた、と見てよいのではないでしょうか。レッズはミシャの戦術理解者を獲得するという補強プランを考えるばかりでなく、長期的なクラブ力を育てる作業を追及して欲しいです。

椛沢:このあたりの話題も含めて、来週19日水曜日には橋本代表をお招きして、浦和タウンミーティング005回が開催をされます。2012シーズンをクラブとしてどう総括するのか、トップチームはもちろんのこと、ホームタウンとの向き合い方、クラブ運営など様々な角度からお話をお伺いして、交流会も設けたいと思います。まだ参加者を募集中です。自ら当事者としてクラブの意見を聞き話をしたいという方のご参加をお待ちしております。

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