浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトーク Vol.124 (1/31)

宮崎での厳しい1次キャンプを終了。興梠の発言について。

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:浦和レッズは、宮崎での1次キャンプを終了させました。現地で取材をしたライターによると、乗っけからフィジカルトレーニング、実戦トレーニングと厳しい練習をこなしたようです。

豊田:そもそも昨シーズンのスタート時点でも、ミシャ監督のキャンプ・メニューの厳しさが筆頭で話題になりました。指揮官交代の背景はあるにしても「クラブの雰囲気自体が変わった」という声が多かった。あの頃の時点で木村元彦さんに旧ユーゴおよび東欧の指導陣の話を聞いていたのですが、オシムにしろ、ストイコビッチにしろ、ポポビッチにしろ、指揮官たちも自分のカラーのチーム作りに関してはこだわりが強く、とことん頑固だとも言っていました。つまりクラブ方針や選手優先のタクトの振り方は一切ないと(笑)。自分流に染めて行くのであれば、キャンプでやることは山ほどある指揮官ということでしょう。そういえば代表チーム監督にオシムが就任したときも、さまざまにエピソードがありました。協会の予定は優先しない、欧州組が入っていても合宿初日から走りこむ、時差がある遠征地に行った直後でも全員が走りこむ……すべて協会の意向をくんでプログラムを組み、無理強いのようなトレーニングはやらなかった前任のジーコ監督時代からは、まるで空気が変わったということでしたから。

椛沢:クラブの哲学を創る上では、ミシャは適任だったということでしょうか(苦笑)。たった1年での浸透度合いは驚くべきでした。そのミシャ政権も2年目ということで、昨年からのサッカーを、更に熟成させるためのトレーニングが行われているとのことです。練習試合も宮崎経営産業大学、大分トリニータとそれぞれ行い、昨年のチームをまずベースにしてから、新加入選手などをどうマッチさせてチームのレベルアップをさせていくかということも既に行われているようです。今季から完全移籍となった槙野はすっかりチームの中心となり、チームの盛り上げ役をかっているようで、明るくも厳しい雰囲気の中でのキャンプが行われたとのことです。

豊田:移籍してきた選手たちも全てではないにしろ「指揮官ありき」の面でレッズに決めた部分は大きいと思います。しかし穿って言うわけではないですが、レッズにとっては指揮官や戦術はワンノブゼム。サポーターやスタジアムの雰囲気、またホームタウンのサッカー深度などを見て、初めて「これがURAWAか」と思う選手も多いのでは? 槙野選手もこのクラブとホームタウンを咀嚼した上で改めて期するところもあるのだと思います。そういえば鹿島から加入した興梠選手が森脇選手に対して「レッズのサポーターは(選手たちが作る)新しいパフォーマンスを許してくれるのか」とメディア上の対談で発言したそうですね。いままでの鹿島と浦和のゴール裏の流儀を見比べてきた私にすれば、なるほどねとか感じるメッセージなんです。ところが、こういう宿敵相手に対する「サポーター心情」みたいなものって最近薄れつつあるのかな、何人かのファンの人からは「そこってそんなに大事なところですか?」と言われてしまいました。編集長なりに解説加えてフォローしてください(苦笑)。

椛沢:それぞれのクラブカラーがあって、それは豊田さんの言うようにピッチ上で展開されているサッカーだけの話ではないですよね。そのクラブを周りで応援するサポーターが求めることは何か、それによって様々な空気感は変わるでしょうし、広島流パフォーマンスは、広島の土地であるからこそ活きる部分があって、それが他の地で活きるかどうかは別の話になってくると思います。浦和は元々サッカーを通じての熱気、歓喜、感動を求めている人が多いと思います。その中で“作られた演出”ではそれを上回ることは出来ないと思う。「浦和にしかないカタルシスがある」というのは浦和でプレーした選手たちが良く口にする言葉ですが、それを理解することは、この浦和でプレーする上では重要なことだと考えます。そのようなことを含めて楽しめるとフットボールの魅力を更に感じることが出来るのではないでしょうか。興梠選手の発言を読んで、憎き鹿島はスタンスとしては浦和に近いんだなと共感ではないですが、納得してしまった部分はあります(笑)。

豊田:アントラーズ支持者のファンからメールももらったのですが、興梠選手のレッズ移籍については浦和サイドで考える以上にあちらでは反響が大きかったようです。大迫勇也選手と先発争いをしていた彼が、レッズに舞台を変えて今度は原口選手とのポジション争いになったことも話題になっているらしい。テストマッチの大分戦で得点も上げましたが、「無理するくらいやらないと」と悪コンディションをおしての強行出場だったそうですね。このあたりも注目したいです。

椛沢:鹿島のエース番号13をつけていた選手ですから、浦和の9番をつけていたのに近い意味のある選手だったのだと思います。その選手が浦和に行くと考えると反響が大きいのは頷けます。それだけに興梠選手の覚悟というものも想像することができます。この後、浦和レッズは鹿児島で2次キャンプを行い、来月26日のACL広州戦を幕開けにシーズンがスタートします。鹿児島でもトレーニングマッチをかなりの数でこなしながら、実戦の中で戦力を見定めながら、チーム力のアップを図っていくのではないでしょうか。

豊田:思い起こせば初出場だった07年のACLも、思い切り寒い三月のナイトゲームからペルシック・ケディリ戦が始まりました。当サイトの読者には少ないでしょうが「アジアの舞台」が初めてのサポーターの人には、とにかくACLは予選から現場に駆けつけるべし、とおすすめしたい。あのトーナメントラウンドを目ざして一歩一歩上がって行くライブ感をホーム&アウェーの中の埼玉スタジアムで感じるチャンスはかけがえのない物です。世界中のクラブがくり返している挑戦ですから、ぜひご一緒しましょう。

椛沢:フットボールは世界共通の言葉ということが感じられるのがACLですね。正直、他のクラブがなぜ盛り上がらないのかが理解できないほど、魅力を感じる大会です。アジア、そして世界へを言葉にするレッズサポーターですから、ぜひこの大会をみんなで盛り上げたいと思います。アジアの舞台はやっぱり浦和が出ないとね、と言わせる熱狂をみんなで創って行きましょう。

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