浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトーク Vol.125 (2/8)

URAWAのフットボール文化におけるゴール後の仕来り。

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:宮崎キャンプから帰ってきたレッズは、大原練習場でトレーニングを行いながら、各激励会やレッズフェスタなどのホームタウンでの行事に参加をして忙しく動いていたようです。

豊田:「原点」といわれる由縁でしょうか、フェスタが駒場で行われるなら万難を排して参加するという人たちは多いようです。私は今年は参加できなかったのですが、後日に行なわれたシーズンオフの情報交換をするサポーター集会に呼ばれて南浦和に顔を出しました。例のレッズの選手パフォーマンスに関する議論が続いているようで、年配サポーターの方から「あの件に対する浦和フットボール通信の意見はもっとはっきり言った方が良い。読者に伝わらないです」と言われまして(笑)。確かにここの地元の人たちは、言葉で押し付けるようなことはしない傾向はあるかも。とりわけサッカー文化に関しては昔からそうですね。ここで暮して、サッカーへの接し方を見てれば分かるだろ?みたいな……こんな言い方をすると、また椛沢編集長からは煙たがられてしまうかも知れませんが。

椛沢:育ちが違えど、私も現在は浦和住まいです!(笑)。その辺りの地元への拘りは、ここにも住んで肌で感じるところがあり、ホームタウンへのリスペクトを最低限持ち合わせているつもりです。こういうことを言うと、読者の方からも浦和以外の人間は応援をしなくていいのか、無視するのかというような論調になりがちなのですが、そういうわけではなくて、ホームタウンの空気感を大事にしながらクラブを支えるというものは、地域密着を原点に置くJリーグ、フットボール文化だと思いますので、それを大事にしていきたいですね。ただ、浦和に存在しているクラブというのでは、ホームタウンでの存在価値がなくなってしまいますから、ホームタウン以外のサポーターにも関係ない話だとは思わずに関心を持って付き合ってもらいたいと思います。

豊田:よって私もいままでの地元流儀でお伝えするために、URAWAの史実だけをお伝えしましょう。例によって昔話です。史上初の高校三冠を達成した浦和南のゴールシーンは、永井良和さんらのシュートの迫力はもちろん選手たちの表情までが話題になりました。これは当時の新聞記事にもなったのですが、何点とろうと選手がニコリともしなかったのですね。この件に対する本誌インタビューにおける松本暁司さん(当時監督:『浦和フットボール通信』vol.34)のコメントが以下です。

「(フットボールは)相手があって出来るスポーツです。ゴールを決めたからといって野放図に喜ぶのは相手に対して礼を欠く。それよりも、冷静に残り時間のプレーを考えろ。勝ってタイムアップの笛を聞いてもむやみに笑ったりしてはいけない。喜び合うのは皆でロッカールームに帰るまで取っておこう……イレブン全員に対してそういう意識を徹底させました。そこから生まれる“浦和南の雰囲気”が、勝負はもちろんテレビを通じて我々を観ているファン心理にまで影響をおよぼすと考えていましたから」

椛沢:その時のインタビューは印象深かったですね。その後の証言でも南高以前の浦和高校時代から、そのようなゴールをして不必要に騒ぐなということは伝統としてあったようですね。その空気感があるホームタウンの中では、ゴール後の“演出”はあまり受け入れられないのは自然の流れかもしれません。さて、我々は今週、お馴染みのサッカージャーナリスト・大住良之さんにお話をお伺いしてきました。サッカー黎明期からサッカーを見続けて伝えてきた氏の話は、いつも刺激を与えられます。三菱時代からレッズのことも気にしてこられただけに、我がクラブに対しても愛情深く厳しい言葉を投げかけてくれて、有り難い存在です。

豊田:大住さんとはJリーグ元年のオフィシャルガイド制作でご一緒して以来、さまざまに指針をいただいているのですが、各クラブやリーグ現状に対する指摘には変わらない鋭さがあります。とりわけ「地域活性化に貢献するJ」の側面にスポットが当てられる反面、J自体の認知度低下に対する危機意識のなさを危惧するコメントには頷くしかなかった。昨年までに仕事関係で何度か東南アジアに行き、空き時間にスポーツ関連施設を見て回る機会があったのですが、大住さんの指摘どおり欧州サッカーブランドの侵食は進行していますね。都市圏では特にそうなのですが、フットボールへの関心がそのまま欧州サッカーのテレビ観戦、グッズコレクションなどに直結してしまっている。「自分でサッカーをやる」「自らサッカー場に行って観戦する」「地元のサッカーの才能や文化を育成する」という意識が、以前より低下しているのではないかという印象を受けました。とりわけ今回、大住さんは欧州組がずらり揃った代表戦取材の帰りにお会いしたので印象も強かったのかも?ですが(苦笑)、日本のサッカー界も本当にうかうかしてはいられないと感じる。このままでは欧州のブランド戦略にJリーグの認知が駆遂されてしまいかねません。

椛沢:この話の良い例としては、マンチェスター・ユナイテッドのアジアツアーが今年行われて、マリノスと対戦をするわけですが、自由席で7000円,8000円するということがネット上でも話題になっていました。それでも日産スタジアムが埋まってしまうような状況があるとすれば、何かJの状況とギャップを感じざるを得ないですね。この潮流はACLに出場しながら浦和がアジアでも欧州クラブに負けないクラブがあるという雰囲気を出しながら、せき止めていかなければいけないでしょう。大住さんのコメント詳細はVIPインタビューをご覧頂ければと思います。レッズは今日から鹿児島に場所を移して2次キャンプを行い、2月27日から始まるACLでの戦いに備えます。2次キャンプではかなり練習試合が組まれて、実戦の中での調整を行なっていくようです。そこで徐々に2013シーズンのチームの形が見えてくるのではないでしょうか。

 

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