浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトーク Vol.127 (2/21)

アジアの完全アウェーで求められるサポーターの声。

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:浦和レッズは宮崎、鹿児島での厳しいキャンプを終えて、来る26日のACLアウェー広州恒大戦に向けて調整を行っています。

豊田:いよいよ開幕が間近です。間もなく印刷に入る本誌Vol.49号のデザイン作業を進めているのですが、制作スタッフによれば編集長はACL初戦・アウェーの広州へ参戦するそうですね。私は聞いていなかったのですが……(笑)。

椛沢:久しぶりのアジアの舞台に参戦させて頂きます。広州には2,000人近いレッズサポーターが乗り込むとのことで、既にこれだけのサポーターが大挙して中国に行くことが事件です(笑)。広州恒大は、莫大な資金力を武器にFWバリオスなどの欧州でも一線級の外国人選手を擁しており、平均観客動員数も46,000人を越えるアジアのビッククラブに名乗りを挙げる新興勢力です。大アウェーが予想されますが、その中でURAWAを見せつけて、相手を叩きたいところですね。新興勢力を突っ走らせないためにも、浦和レッズここにあり!を見せたい初戦です。強力な戦力を擁するチームですが、ミシャ特有の戦術に対応するのは時間が掛かるでしょうから、対策を講じられる前の早い時間でゴールを狙い、その後は果敢に攻めてくるであろう広州の裏をとって、カウンターで仕留めたいところです。現地のレポートは帰国後に配信をしたいと思います。

豊田:やはりレッズサポーターには異国の戦いも良く似合う……そんな感じでしょうか。では行くからには我々スタッフの分までしっかりレッズをサポートしてきてください。

椛沢:了解しました。

豊田:さて、異国の戦いといえば、今年はあの「ドーハの悲劇」から20年目の年です。(編集部注:カタール・ドーハで行なわれたワールドカップ・アメリカ大会のアジア地区最終予選最終戦の結末を指す。元浦和レッズ監督のハンス・オフト率いる日本代表は、イラク相手にロスタイムに失点して痛恨のドロー。史上初の本大会出場を寸前で逃した)例によってサッカー親爺たちの思い出話となったのですが、あの時のテレビ東京の実況が金子勝彦さん(三菱ダイヤモンドサッカーを担当した名アナウンサー)。解説の席には森孝慈さんもおられました。終了寸前のCKからイラクのヘディングシュートが決まった後のスタジオの悲痛な雰囲気はいまも忘れることができません。

椛沢:当時、中学生でしたが、あのワールドカップ予選は、テレビの前にかじりついて見ていて、当然のことながら、イラク戦も生中継を見ていて、悲劇を目の当たりにした衝撃は、今でも忘れないですね。中継が終わって、スタジオにいた岡田武史さんが言葉を詰まらせて、何も言葉にならずにいたことも覚えています。思い返せば、あの経験を下にして、4年後のフランス大会でのワールドカップ初出場に繋がっていったのだと思います。ドーハの悲劇は日本サッカーにとって、Jリーグ創設時に重なる重要な出来事であったと思います。

豊田:当時の私はビジネス世代まっさかりで、かなり「サッカーからはかけ離れた環境」に追いやられていました。その鬱憤のせいでしょうか、あのロスタイムの衝撃や日本代表の試合ぶりとともにテレビ実況にもしっかり届いていたウルトラス・ニッポンの応援にはとにかく驚き、感銘を受けた思い出があります。

椛沢:その日本代表サポーター「ウルトラス・ニッポン」のメンバーには浦和レッズ創生時のクレージーコールズを率いた吉沢康一さんもいました。

豊田:その「ウルトラス・ニッポン」は、まだサッカーファン以外にはほとんど認知されていない存在でした。応援を牽引していたコールリーダーは三人。レッズサポーターの吉沢康一さんと日本代表と当時はまだヴェルディ川崎のサポーターだった植田朝日さん、そして鹿島アントラーズのサポーターグループ「インファイト」の創設者だった河津亨さんの三人です。とにかくテレビ実況に映る彼らのビジュアルとコールの音響が威嚇的でね。正直、昨今の国立競技場で見るサムライ・ブルーとやらの華やかな?サポーターとはまるで異質のオーラがありました。

椛沢:あとで話を聞くとJ開幕から、駒場を演出した吉沢さんや相良さんは当時から本場のフットボールのサポーティングを理解していた存在でした。ブームの盛り上がりを見せるJリーグの中でもレッズサポーターの雰囲気が異質だったのはそのせいだったのだと思います。フットボールを盛り上げる術を既に理解していたのだと思います。

豊田:当然のことですが、当時の彼らには「テレビ実況が持ち上げることもない自然発生的な意志が強さ」が全面に押し出されていた。凄い、これなら中東ムードのまっただなかでも戦えると……プレーヤーのみならず敵地の客席にいる彼らに「オレの分まで代表を応援してくれ」と肩入れする気分が高揚し、テレビ画面に釘付けになったことを憶えています。

椛沢:「オレたちがチームを支える」という精神は、今でも浦和レッズのスタンドに息づいていますね。ACLで、自分が体験したアウェーゲームの経験からいうと、完全な敵地でこそサポーターが作るその空気は、必要になってくると思います。国内リーグに比べると、ホーム&アウェーでは、全く違う戦いになります。その中での完全アウェーの雰囲気を少しでもひっくり返すことが出来ると有利に立てます。2007年にACL制覇を果たした際に、各国に大挙押しかけたサポーターのパワーは確実に原動力になっていたと自負します。

豊田:そうですね。ましてや日中間には軋轢が露見している時節、マナーをわきまえ、かつ熱いACL戦のスタートを期待します。

椛沢:この情勢下では、色々なことが結び付けられてしまう可能性もありますが、我々はあくまで、浦和レッズとしてフットボールで戦いに行くわけですから、そこを踏み外さず、闘うことですね。そうでなければ相手のリズムに持って行かれてしまいます。「URAWAを見せつけて勝つ」これだけです。

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