浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトーク Vol.130 (3/13)

リーグ、ACLと連勝も気を緩めることなし。

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:広島戦での開幕から1週間。ホーム・埼玉スタジアムでのホーム開幕戦が開催されました。観客動員数は52,293人とここ数年の中でもハイスコアとなる数字。今季への期待が現れている大観衆がスタジアムに集まり、レッズをサポートしました。リーグ開幕の広島戦はNHKでの中継があったということもあって、今季の期待感がより伝わったようですね。サポーターも久しぶりにスタジアム全体を使った赤と白のストライプに、ユニフォーム旗を使ったビジュアルを展開して、今季への期待を示しました。

豊田:広島戦の勢いを保つためにも勝利あるのみ、という気分が客席にもあふれていました。何か不安げに新シーズンのシートに着席していたここ何シーズンかの開幕とは異質。たまたまWEB版「大原ネイチャーノート」を担当されている百瀬浜路さんのご一家も至近距離のシーチケ席に移ってこられ、今季はスタンドの周囲が知り合い多数です。個人的にも日ごろからの応援に気が抜けなくなりました(苦笑)。

椛沢:その期待に応える試合を名古屋戦でも見せてくれました。前半は起点となる永田、阿部、啓太をフォアチェックで、マークをしてきたレッズ対策を施してきた名古屋に対して、苦戦を強いられましたが、それでも落ちついてボールを繋ぎ、後半はさらにスピードを上げて、名古屋を翻弄する形になったのは成長の証。決勝点となった宇賀神のゴールも啓太から興梠に素晴らしい縦パスが入り、興梠が名古屋のバックラインの裏に走りこんだ宇賀神にパス。それを宇賀神が落ち着いて逆サイドにコントロールショットを決めました。練習で行ってきた形とのことでしたが、まさに狙った形だったのではないでしょうか。

豊田:闘莉王ほか主力の何名かが不在とはいえ、名古屋の攻めの連携はぶつ切れの状態。レッズのポゼッション体勢を前線から破ろうとするピクシーの意図は明白でしたが、失点を予感させる雰囲気は90分を通して希薄だった。選手の意識共有やチーム作りの蓄積という面から見ればミシャの圧勝と思いますよ。得点シーンの心地よさにはチーム状態の裏づけが感じられ、点差以上の満足感をファンに与える内容だったと思います。

椛沢:またストライカーとしての仕事がまだ不十分なものの興梠の黒子的な活躍は見事ですね。彼が前線で起点となれることで、攻撃の迫力が増していると思います。試合後には、森脇選手と「自分たちだけ名前が呼ばれてない」と発言をしていたようですが、「ゴールをしないとだめでしょうね」というコメントの通り、サポーターはゴールを期待する意味も込めて待っている所です。ピッチで見せないと浦和では認められないよというスタンスはこれまでも続けられてきました。それでも彼の活躍は十分認められていますので、近い段階で彼の名前がスタンドから叫ばれることになるでしょう。

豊田:選手コメントを見ていて思うのですが、何より2~3年前の俯きながらの「ダメだったけど次に繋がる」連発の頃とはチカラが違う。各ポジションのプレーヤーの解説と反省点、次の目標に整合性があり、チーム戦術が共有されていることが見てとれます。移籍組のプレーヤーたちにも「サポーターや客席に対する意識」に変化が現われていることが分かる。戦術は大きく変わったけれど、URAWAらしい結束感が戻りつつあることは感じます。

椛沢:火曜日にはACLの2戦目、ムアントン・ユナイテッド戦が埼玉スタジアムで行われました。ゴール裏からの声は空席に響き、逆にホームの雰囲気を作り出していました。初戦、広州に0-3で負けているだけに、この試合は絶対に落とせない試合でした。レッズは、トップ下にマルシオ、左サイドに関口、右サイドに平川、ボランチに那須と、過密日程を考慮してメンバーを少しいじってきました。彼らが入っても戦力が落ちることがない。今年の補強が早くも生きました。

豊田:初先発組は良かった。また、シーズン初のナイトゲームがACLとなって気分も高揚しました。私もキックオフには間に合わなかったのですが、東京方面からのアクセス経路ではそれと分かるレッズ支持者が多数見受けられました。当日券売り場も盛況。ホーム開幕戦からお目見えした大型スクリーンの裏面に浮かび上がったⅤ字形の赤い照明も印象的でした。クラブからメール配信された池袋から埼玉スタジアムへの直行バス『Here We 号』の案内も良かったと思います。

椛沢:試合は、6年ぶりにアジアの舞台で響き渡る「赤き血のイレブン」が歌われる中、ゲームはスタート。開始8分に、マルシオのCKから柏木がボレーで合わせて先制しました。

豊田:応援サウンドも感慨ぶかかったな。すぐに指定席でも合唱と手拍子が始まりました。浦和フットボール通信のバックナンバーによれば、07年のレッズ初参戦の折もACLは予選リーグ段階で埼玉スタジアム入場合計が3試合で10万5千人近くに達したと記録されていますが、この夜も入場は23,246人。皆が「アジアで戦うレッズ」を心待ちにしていたことがよく分かりました。

椛沢:平日火曜日ということもありますが、23,246人は久しぶりのアジアの舞台としては、少し寂しい数字だなという気もします。広州では4万近いアウェーを体験しましたから、全北、広州と続くアジアのホームゲームではより多くのサポーターにスタジアムに集結をしてもらいたいと思います。さて、ゲームは終始主導権を握り続けるも、ガッチリ引いてくるムアントンを崩せないまま。29分には相手DFが2枚目のイエローで退場になり数的有利になりますが、1-0で前半を折り返しました。

豊田:柏木に得点してペースが生まれたと思います。興梠とともに中央からの攻撃のバリエーションを匂わせておいて、阿部と那須に落として関口、平川の両サイドに散らす……引いた相手を崩すホーム戦のパターンが徹底して出来ていたと思う。相手の命脈であるカウンターへの対応もスピーディで安定感がありました。タイのチームと言うとかつての代表戦のイメージから「荒っぽいのでは」という危惧があったのですが、黄金時代のユーゴ主力だったヨカノヴィッチ監督率いるイレブンはそんなことはなかったね。まあ退場を食らったDFが、オールドファンには懐かしい名前のピアポン選手ではありましたが(笑)。

椛沢:後半に入り、チャンスを作るも決めきれないまま時間が進み、62分に原口と梅崎を投入するとギアが入り、64分に関口のクロスがそのままゴールに入り、追加点。69分には原口のヘディングで3点目。78分にも原口の仕掛けからオウンゴールを誘発させて4-0で圧倒しました。

豊田:原口の3点目のヘッドまでの作りが圧巻でした。阿部→興梠→梅崎→那須でアシストの平川に開くまでのピッチ横断の繋ぎがすべてワンタッチ。ムアントンの守備網の脚が止まってしまった。会心のプロセスのゴールだったと思います。

椛沢:もう1点を望むゴール裏とピッチがシンクロせず、90分にムアントンに1点を返されてしまったことが、大きな課題として残りました。しかし4-1で勝利。広州と全北が引き分けたことで、浦和はグループリーグ2位。早くも混戦の予感のするグループリーグになりました。試合後は、コールリーダーより、この試合に向けて都合をつけてスタジアムに駆けつけて、歌うことを楽しみにしていた人もいるだろうけども、申し訳ないと謝った上で、「We are Diamonds」は、最後の失点したことを大事に考えて、次の試合で歌おうと、勝利の凱歌をあげることはしませんでした。アジアで勝ち上がるためには、さらに上を目指さないといけないという意志の表れでもあったと思います。チームもサポーターも連勝しても、浮かれる様子はありません。まだまだ高みを目指さなければ、目標の到達には近付かないと感じているからだと思います。

豊田:最後の失点は確かに残念。でもこういう強敵ひしめくグループリーグは最後まで分からない。正直、ムアントンに埼スタで1点とらせて戦意喪失させないで良かった……なんて展開もあり得るからね。今季のレギュレーションではトーナメントラウンド初戦もホーム&アウェーで戦えること(昨季は1位チーム本拠地で一発勝負)を考えれば、まずは勝点3と得失点差をゼロに戻したことを成果と捉えたいです。

椛沢:あの失点が……ということがないような展開を今後は作っていかないといけないですね。さて、今週末は、敵地・大分に乗り込んでの試合です。昇格組ということで格下扱いをするようでは、苦戦必死です。この試合をきっちりと勝利出来るかどうかは、今後に向けても大きな流れを作る試合のひとつになるような気がします。久しぶりの大分で勝ち点3を目指しましょう。

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