浦和フットボール通信

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河合貴子×椛沢佑一 URAWA REDS 2013 LIVE DISCUSSION「新エースへ!興梠慎三、浦和で愛される選手になりたい。」

6年ぶりのACL出場。リーグ戦では、昨シーズンの3位からさらなる高みを目指して浦和レッズのシーズンが開幕した。今シーズン開幕となる広州では大敗を喫したが、その後は3連勝と今季への期待感を漂わせる内容を見せている。レッズ密着取材を続ける河合貴子氏に、本誌・椛沢編集長が浦和レッズの現状や選手達の思いを毎月訊く「レッズ2013月刊ライブディスカッション」。進化が見えるミシャサッカーについて、選手たちの素顔について、河合さんに話を訊いた。(浦和フットボール通信編集部)

充実の補強、2年目はステップアップの年になる。

河合:色々な人にレッズは良い補強をしたといわれてニヤとしてしまうんだけど、それくらい今季の補強はうまくいっている。

椛沢:補強は必ずしもプラスになるわけではなくて、補強をしてもマイナスになることもあるわけですが、今季のレッズにおいては、プラスに作用している様子ですね。

河合:補強によって、良い競争意識が芽生えていて、プラスになっているね。本当に良い補強をした。クオリティが高すぎる。誰が入っても遜色ないレベルにきたと思う。

椛沢:その補強効果もあって、去年のレッズはつぼみだと言っていたのが、今年少し咲き始める予感がしますね。去年はミシャなりにサッカーを創りながら勝つためのステップを踏んできて、今年は昨年をベースにかなり進化させようとしている雰囲気があります。そう考えるとミシャは改めてすごい監督だと思ってしまいます。

河合:もちろん、サッカーの目指しているところは去年と変わらないけれども、今季は、土台プラスアルファの部分になってきているね。練習を見ていても以前は、練習中にフリーズをかけて、本当に細かく選手の体の向きやボールの受け方、相手をかわす動きなどをこと細かく選手に指導をしていたのが、今年はミニゲームをやりながらもあまり言わなくなった。選手もそれが分かってきているのだと思う。選手同士が良く話をしていて、柏木選手のACLムアントン戦のゴールは2回目のCKでやるつもりだったけれども、マルシオが1回目でやろうと合図を送って、良いボールがきたので合わせた。狙い通りの形だったようです。あのようなラッキーなゴールが今年は既にいくつか生まれているけれども、これは必然の中から生まれてきているんじゃないかなと思います。原口の広島戦のゴールもそうだったと思う。元気は少し覚醒していると思わない?

椛沢:広島戦の原口を見ると、今年は10点以上獲るぞという活躍ぶりでしたね。

河合:今までの苦労は、この布石だったんじゃないかなとさえ思える。ワントップをやった苦労があったから、シャドーの動きで、うまくフォローが出来ていて、前を向いた時の原口は全然違う。

椛沢:広島戦の先制点で柏木にアシストしたプレーでも以前であればシュートを打っていたと思いますけど、あそこが見えていてパスが出来るようになりました。

河合:あの時は中に切り込んでシュートを打つだろうと思ったら、フェイントを入れて、柏木選手に優しくパスを出した。本当にすごいプレーだった。成長しているよね。ACLムアントン戦で阪野に出したパスも自分で打ってもよいと思ったけれども、本人に聞いたら、俺よりも可能性があると思ったからパスを出したと言っていた。でも相手のオウンゴールになるのであれば自分で打てば良かったと言っていました。あれも必然から生まれたゴールだと思う。このようなものが続くと良い流れになってくる。

興梠が胸のうちを語る「浦和で愛される選手になりたい」

河合:あとは、ここまで興梠選手がフィットするとは正直、思わなかった。

椛沢:それでも興梠自身はまだしっくりきていないんですよね?

河合:まだまだ出来る。元気にしても柏木にしても自分たちが前を向いて気持ちよくプレーできるのは慎三のおかげだという。慎三も二人が良い距離感をもってくれるから、自分もプレーがしやすいという。

椛沢:それでも興梠がまだ点を獲れないので、彼自身も言っていましたけども、チームの調子が悪くなった時に彼が点を取れないと矢面に立たされるだろうと思います。彼が苦しいときに点が取れる選手にならないと厳しい。

河合:自分が点を獲れていない。決めない時に決めないとチームが苦しくなると言っていましたね。名古屋戦のミックスゾーンで、あまりに自分を責めていて、聞いていてつらくなったので、「FWには点を獲る仕事があるけれども、興梠は、点に絡むプレーを十分していて、チームに貢献をしている。レッズのサポーターもそれは分かっていると思う」という話をしたら、椛沢がいったように、「チームが調子が悪くなったときに点を取れよと絶対に言われるんです」といっていた。

椛沢:その部分は、興梠選手が一番、良く分かっていますよね。もちろんサポーターの中でも彼の評価は高くなってきているのも事実です。誰もがあの活躍を理解しています。

河合:コラムでも浦和で愛される選手になると書いたけれども、興梠自身もミックスゾーンで「浦和で愛される選手になりたいんです」と言っていた。あのコラムを読んだサポーターに「タカネェが書いたみたいに浦和に愛されている選手になっているよ。でもコールをしないのは安いコールをしたくない」と言っていた。「興梠が倒れた時に、頑張れ、立てとコールをしてあげてもいいじゃないか」といったら、「あんなときにコールをして喜ぶか?興梠がコールをされて喜ぶコールをしたいと。それに値する選手だと思う」といわれて、確かにそうだと思った。中途半端なコールでは興梠は喜ばない。

椛沢:本人もサポーターも認めた、認められたというタイミングでコールを入れてあげれば良いし、そのために頑張って欲しいという思いが込められていると思います。

河合:その話を興梠に話をしたら「本当ですか?俺はすごいモチベーションが上がりました。見ていてください。待っていてください」と力強く言ってくれた。

椛沢:そういうことまで反応できるのは、久しぶりの選手ですよね。

河合:名古屋戦の試合後に「We are Diamonds」を歌っている時に興梠はすごく疲れた表情をしていたので、終わった後に話しを聞いたら、「今までのレッズサポーターではなかったですよね。槙野が来たからでしょう?でもよかったのかな。今までのレッズにはない色が出てきたのかと思います」と言っていました。

椛沢:興梠は、レッズ的な感覚がありますよね。だから既に愛されているところもあるんじゃないかな。鹿島はそういう意味でもしっかりした面があるんでしょうね。彼が点を獲れるようになってくると強いチームになって、タイトルを狙える位置にくると思います。

若手の突き上げがチーム力を推進させる。

河合:あとは、最初の5試合が越えた所で、若手の何人が絡んでくれるような突き上げがあると良い。

椛沢:今年は厳しいんじゃないですかね。補強によって戦力に厚みが出たために、逆に若手選手のチャンスがなくなってしまった気がします。

河合:それを乗り越えて出てこないといけない。チャンスが来た時に、どれだけ出来るか。チャンスはしっかりとやっていれば必ず来る。

椛沢:阪野はルーキーイヤーながら、見事にチャンスを掴んでいますね。

河合:阪野がすごいなと思ったのは、心臓に毛がはえているのか、デビュー戦が広州だったので、力むとか緊張するということがなくすんなり出来たと言っていた。埼スタでレッズサポーターがたくさんいると緊張してしまうかもしれないと言っていたけれども、いざ埼スタのピッチでも全然大丈夫だったと言っていた。

椛沢:広州、広島と阪野の活躍は、やってくれそうだという期待を持たせてくれる内容でした。久しぶりにストライカーっぽいストライカーの香りがする。あとはチャンスで、ゴールを決められれば最高でしたけど……。

河合:決めたい気持ちも分かるけども、あと一歩だよね。その一歩は何だと思うと聞いたら、「タイミングです」と彼は言っていた。私は、ポジショニングだと思うんだけどね。あと50センチ前でも良い。でも、これが焦りになったら選手はつぶれてしまうから、プレッシャーにならないようにしてあげたいなと思う。メンタル的に成長をして、切り札的な存在に成長して欲しい。

椛沢:使い方を見ていてもプレッシャーは掛からないようにはしているんじゃないでしょうか。興梠の方がプレッシャーを受けるポジションだと思う。阪野をスタメンで使わないのはそういうことでしょうね。

河合:ミシャさんはすごいよね。原口をシャドーで使うのも、たまたまじゃない気がする。それまでは左サイドをやらされたりしていて、その後、シャドーの位置に入った。色々な狙いの中で選手機用をしていると思う。

椛沢:その他、若手で出てこないといけない選手は誰でしょうか。

河合:小島、岡本拓。矢島、野崎も厳しいけど、この一年でずいぶんと成長したと思う。

椛沢:小島は試合に出られますかね。

河合:秀仁はスマートすぎるのかもしれない。これは本人もよく言われます……と言っていたけども、逆に岡本はギラギラし過ぎている。練習でもガツガツ相手に向かっている。

ミシャは「交代のための交代はしない」

椛沢:小島のポジションで言うと、ボランチの二番手は、那須選手という状況です。

河合:那須も良いからね。那須選手をベンチに置くことで、いざという時は、どこでも那須君で、どのポジションでも出来る、あのユーティリティ性は大きい。

椛沢:何人も補強したようなものですよね。ボランチに、サイドに。ベンチから外しづらい選手だと思います。

河合:メンバーは固定されていると言われているけれども、その固定をそうではないといわせるのが若手選手の使命だと思う。

椛沢:固定というよりは戦力として認めている選手かどうかということなんでしょうね。

河合:そうだと思う。ミシャさんは今年最初の会見でも話していましたが、選手が疲れているからといって、交代のための交代ということは意味がない。代わった選手が同じくらいの質で、プレーが出来る確信がない限り、交代はしないと言った。たとえば、原口に代わってマルシオが入っても遜色はない。

椛沢:その中でも阿部と柏木のような替えがきかない選手というのもいるのだと思います。

河合:興梠も替えのきかない選手かもしれないね。そこを乗り越えていくことが出来ない限り、厳しい。宇賀神選手を見てもスタミナは落ちないし、頼もしくなった。関口はもう少しミシャサッカーになじむためには時間がかかりそう。上がるタイミング、下がるタイミング、攻守の切り替えのタイミング、ポジション取りが悩みながらやっている感は練習でもある。もう少し時間があるとやってくれるだろうなという手ごたえはある。

レッズのサッカーを構築させなければいけない。

椛沢:ミシャは、ここまで着実にレッズのサッカーを進歩させてきました。長期視野に立つとクラブがどのようにチームを構築していくのかということも気になる所ではあります。

河合:レッズスタイルの構築と言ってきたけども、それは20年間構築されなかったわけだから、ここでレッズがクラブとしてやらないといけないのは、ミシャさんが監督になった今、絶対に揺るがないものを作ることだと思います。

椛沢:それはどうやって作るんでしょうね。ミシャさんをずっと監督として続けさせるのか、それでもミシャさんが体調不良で帰りますといったときにどうするのか、正直その部分の継続性は見えない。簡単なことではないですけどね。

河合:サンフレッチェの例でいうと、コーチにいた森保さんを監督に添えるということもあるね。

椛沢:そうなると堀さんにDNAを注入しつつ、将来的に監督になってもらうとかですかね?

河合:それかミシャさんと同じような考え方の監督を連れてくる。ミシャサッカープラスアルファの要素を足していければ良いと思う。

椛沢:今はミシャさんのサッカーだから、レッズのサッカーは何なのかというところまでは追及はまだ出来ていない。ミシャさんはこうで、レッズはこうですよといえるようになるのか。

河合:それも続けていって欲しいと願うね。そのためにはまず桜を咲かせないといけない。色々なことを考えるとまだまだやることはある。

椛沢:周囲の期待が高まりすぎているところはあるけれども、まだまだ現在のチームは、ステップアップ段階で、成長を見ていかないといけない部分もあります。

河合:まだレッズのつぼみは、一輪、花が咲いたくらいだからね。

椛沢:選手たちが試合後に「新たな歴史を刻むために、今シーズンも共に」というメッセージを出してくれましたけども「新たな歴史を刻む」というのはこれからレッズのサッカーを創ろうというメッセージも込められているのかなと感じました。

河合:新たな歴史を刻めると思う。それは信じていきたいね。チームとサポーターが同じ方向に向いているから、クラブもそれを支える体制をしっかりと作ってもらいたいと思います。

(2013年3月、浦和にて)

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