浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトーク Vol.94(6/29)

仙台戦、そしてナビスコ広島戦。浦和サッカーフェスタで見た「ユナイテッド-ミュンヘンの悲劇」について

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:先週末の仙台戦は、首位との差を詰めるチャンスがあった試合でしたが、現状の力を認識してか守りの采配で、スコアレスドローに終わりました。ホームゲームですし、リーグを盛り上がる上でも、もう少し勝負する姿勢を見せて欲しかったというのが率直な感想でした。そして、今週のミッドウィークには、ナビスコカップ広島戦が行われました。残念ながらこの試合を前にレッズは予選敗退が決定してしまっていた消化試合でした。しかし埼玉スタジアムには、14,022人の来場がありました。これはすごい数字だと思います。ゴール裏も「サッカーに消化ゲームなどはない。若手選手の台頭をこの試合で見極めてリーグ戦に繋げよう」とチームを鼓舞しました。

豊田:槙野からエリア左に走り込んだ柏木にグラウンダーが通って、折り返しにデスポトビッチが忠実に飛び込んだ。攻めの決め手が見つからないなかで貴重なゴールだったと思います。それにランコは数少ない自分の出番に、ゲームを通してよくチェイシングやヘッドの競り合いに邁進してくれました。これだけ腐らずにやってくれる外国人助っ人はなかなか居ないのでは? 両軍にとって「消化試合」に過ぎなかったあのゲームに魅力を吹き込んでくれたと思います。

椛沢:前半は少し退屈な時間も続きましたが、槙野、柏木が起点となって決めたランコゴールは、成長の証ですね。ランコのパフォーマンスには物足りない所があるのも事実ですがプロフェッショナルな姿勢は多くの選手が見習うべきところがあると思います。そして浦和出身の矢島慎也のプレーも日に日に良くなっていて頼もしいですね。VIPインタビューに登場するFC浦和で指導した町田さんも彼の活躍に目を細めていました。

豊田:何度かチャンスをものにできずにいたが、最後に決めてくれました。ガッツを感じさせないというか(笑)非常に淡々とボールを扱いながら、いつの間にやらスコアを記録してる。不思議な間合いでシュートチャンスを見つける選手という印象。ただフィニッシュの場面をリプレーしてみると、落ち着いていますよね、彼は……。自分のタッチによほど自信を持っているのだと思う。豪快さは一切ないけど、スペースもタイミングも無いところから確実にDFの網を避けてキックを枠に収める技術はインパクトがありました。

椛沢:飄々としながら大胆なこともしてしまう感じですよね。町田さんの矢島評は、なるほどなと思えるものでした。『彼の良さはテクニックにある。足はけっして早くないが、次の展開が読める子なので、良い所に常にいれるとのことでした。常に落ち着いてプレー出来ているもテクニックの高さが裏付けされているからではないか。小学校のあの時期は大事なんだ』とおっしゃられていましたね。 試合は広島に3-0の快勝。相手も消化ゲームの色合いが濃かったこともありますが、開幕にコテンパンにされてから半年が経って、成長の証は十分に見えた試合だったのではないでしょうか。試合後は、ナビスコ100試合出場の山田暢久を称えるコールがあり、少数精鋭ながら、来場したサポーターは十分に楽しめて、ほっこりするホームゲームだったのではないかと思います。

豊田:さて、先週始めの月曜夜は浦和サッカーフェスタのイベント、浦和サッカー上映会にお邪魔したのですが……編集長は遅くまでのレイトショー、お疲れさまでした。

椛沢:地域資産であるサッカーを使って街を盛り上げようという「浦和サッカーフェスタ」に関わらせて頂き、今年はサッカー映画を毎日ユナイテッド・シネマ浦和にて上映する「浦和サッカー上映会」という企画にチャレンジしています。初日は、レッズOBの西野努さん、西村卓朗さん、内舘秀樹さんに舞台挨拶をして頂き、翌日は吉沢康一さん、轟夕起夫さんの「THE RED BOOK」コンビ。昨晩は清水勇人さいたま市長にもお越し頂き、最終日は、西野努さんと都築龍太さんが舞台挨拶を行う予定と、豪華なメンバーが会を盛り上げてくれています。

豊田:この夜の上映はBBC制作の『ユナイテッド ミュンヘンの悲劇』。レッズサポーターにはおなじみの58年欧州チャンピオンズカップのさなかにマンチェスター・ユナイテッドに起きた航空機事故がモチーフで、その惨劇から立ち上がるマット・バスビー監督以下選手やクラブスタッフたちの苦難を描いています。断片的なニュース映像では何度も見た事故映像なのですが、このようにドラマ仕立てでリアルにさかのぼると……「これほどの惨事が現実のサッカーに降りかかったのだ」という思いにかられて胸が痛みました。

椛沢:ミュンヘンの悲劇というストーリーはもちろん知っていましたが、実際に映像として振り返ると壮絶なものだったということが分かる作品でしたね。

豊田:ネタバレしない程度で印象に残ったシーンをあげると、オールドトラフォードのドレッシングルームのドア文字が変わらず「HOME」の文字で描かれていたこと。それから、ジミー・マーフィーらクラブスタッフのネクタイの緑と黄色のストライプ柄にはジンときました。グリーン&イエローはユナイテッドが真紅の“レッズ”に生まれ変わる以前のクラブオリジナルで、いまだに地元ファンはこのカラーセットには郷愁を感じるとか。そういえば2010シーズンのチャンピオンズリーグの決勝ラウンドで、ユナテッドがACミランと対戦した時に、ミランのメンバーとしてオールドトラフォードに帰還したベッカムが試合後にグリーン&イエローのスカーフ姿でファンに挨拶して話題になったそうです。

椛沢:ユナイテッドの理念、信念というものもしっかり描かれていた作品だと思いますね。今でも彼らがブレないのは、このような背景があってのものなのだと再認識させられました。7月からはユナイテッド・シネマ浦和でも上映をされることが決定しましたので、皆さんぜひご覧頂ければと思います。

豊田:当時の選手たちの質素でシンプルなプレーヤー生活の描写も印象的でした。かつてこの映画の主人公役であるチャールトンが事故にまつわるBBCのインタビューに答えた際、チャンピオンズカップに出場してピッチ上で顔を合わせるまでは当時最強のディ・ステファノらレアル・マドリーのプレーは「テレビ映像でさえ見たことがなかった」と告白していました。スペインまで行って憧れの強豪と対戦するなんて、自分たちの境遇を考えれば想像もできない……そんな時代だったということでしょうね。私たちが映像でもスタンドからも、多くの仲間たちと地元クラブのゲームを見とどけ応援できるのは幸せなことと改めて感じます。

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