浦和フットボール通信

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河合貴子のレッズ魂ここにあり!「自分の身体と向き合って~鈴木啓太選手」

J開幕から浦和レッズを追いかけ、ケーブルテレビのパーソナティなどで活躍をしている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。

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啓太に突然訪れた試練。

11月3日、日産スタジアムで行われた横浜FM戦の後半開始のホイッスルが鳴った時、鈴木啓太選手の姿はピッチになかった。

関根貴大選手の劇的なゴールで勝利をものにした喜びが大きくて、鈴木選手の「体調不良」の意味を深く考えていなかった。11月15日に行われた川崎Fとの練習試合で前半17分に鈴木選手は、自ら交代を申し出てピッチをあとにした。ピッチから離れた鈴木選手は、ゆっくりとウォーキングでクールダウンをし、元チームメートの西部洋平選手と談笑しながらロッカールームへと引き下がって行った。

その時も、広報から伝えられたのは「体調不良」であった。だが、鈴木選手の顔色も良く、傍目には体調が悪いとはとても思えない感じであったので、鈴木選手には申し訳ないが、「体調不良」を軽く考えていた。この時点までは・・・。

しかし、G大阪戦の前々日、ミシャ監督と深刻な顔で話し込む鈴木選手の姿があった。練習中に途中でピッチを離れる鈴木選手を目撃した。鈴木選手の身体の中で何かが起きている!?だが、そんな不安を一掃するように、 G大阪戦の前日練習では、サブ組みながら攻守に渡り豊富な運動量で良い動きを見せていた。

練習後、鈴木選手は「良い守備から良い攻撃がポイントとなる。浦和に関わるスタッフ、サポーターの思いを背負い、責任感を持って闘う!感謝の気持ちを持って闘う!期待と不安を持って闘うのは、選手冥利に尽きる」と臨戦態勢だった。しかし、G大阪戦は、坪井慶介選手と並んで、口惜しそうにピッチを眺めていたのだ。

続く鳥栖戦にも鈴木選手はメンバー外であった。鳥栖戦の翌日練習で、またも自ら練習を離れると自分自身への苛立ちなのか、手袋をピッチに投げつけ天を仰いだ。そんな鈴木選手の姿を今まで見たことが無かった。正直、驚きと共に悲しくなった。

ロッカールームへ帰る鈴木選手に思わず「いったいどうしたの?体調不良と聞かされているが、筋肉系の怪我ではないし・・・。どうしたの?何があったの?」と呼びとめた。すると鈴木選手は凄く悲しげな目をして「ちょっと試合を出来るコンディションではない。ドクターと話して、練習をしているが、不整脈が出て難しい状況だ」と険しい表情で話した。

『不整脈』と言っても、脈が異常に速くなる「頻脈」と脈が遅い「徐脈」、脈が飛ぶ「期外収縮」の3種類に大きく分かれる。『不整脈』の原因には、過労やストレス、寝不足などもあるが、心臓を養っている血管が詰まってしまい心筋梗塞や狭心症だったり、弁膜症、心臓肥大など、様々な要因があるそうだ。

実は、今年の1月に母が「胸が痛い」と言って倒れ救急車を呼んだのだ。原因は『不整脈』であった。非常に複雑な心電図をしていて、担当医も「どこから手を付ければ良いか?考えさせて下さい」と言う状況であった。母の年を考えると・・・。戸惑う表情を浮かべている私に、担当医は「このまま放置していたら確実にお亡くなりになりますよ。手術をすれば、物凄くお元気になります。大丈夫!お任せ下さい」と言われたので、全てお任せすることしたのだ。

それから、母の入院生活が始まり、ホルダー心電図や心臓に造影剤を入れた検査など様々な検査を約2週間に渡って繰り返し、『不整脈』が起きている原因をつきとめた。母の場合は、幸運なことに心臓の肥大や心臓の血管に異常は見られず、弁も正常であった。心臓のリズミカルな収縮は、同結節から出された「動け」と言う指令が心室に伝わり、心室から房室結節へ、房室結節から心房へと伝わりポンプのように血液を送り出すそうだ。しかし、母の心臓は、同結節以外から「動け」指令が出ているだけでなく、房室伝導障害があり、心房は頻脈の状態で、心室は徐脈で、なお且つ脈が飛ぶ期外収縮だと担当医から説明を受けても、なかなか理解出来なかった。

そして、先ずは「動け」と異常な信号を出し頻脈の原因である心室内部を焼く、カテーテルアブレーション手術が行われ、術後3日目に一時帰宅し、再入院して心臓がリズミカルな収縮が行なわれるようにペースメーカー植え込みの手術が行われた。あくまでもペースメーカーは補助的なもので、正常に心臓が動いていれば作動しないそうだ。80歳を過ぎている母にとっては、かなりの負担だったと思うが、約2カ月の入院生活を無事に終えた。

ペースメーカーを植え込んだことで、電子レンジや電気毛布、電気カーペットやIH式など機器が使えず、飛行機を乗る時など多少の不便はあるが、今やスーパー婆ぶりを発揮し、お友達と食事会や音楽会など老後生活を謳歌している。多少の不安はあるようだが「ちゃんと自分の身体と向き合って、無理をしなければ良いのよ」と笑いながらスーパー婆になった母は言う。

鈴木選手の場合は、急激な負荷が掛かった時に脈拍が220ぐらいになるそうだ。鈴木選手は「いろんなドクターに選手生命や命の危険があるかを判断してもらう。12月中に詳しい検査をする予定。ドクターからは『心配しないで下さい』と言われている」と話した。2008年に扁桃炎を患い長期離脱してから、鈴木選手は人一倍コンディションには気を使ってきた選手である。母の言う「ちゃんと自分の身体と向き合う」ことが出来るはずである。詳しい検査を受けて、『不整脈』が起きる原因を突き止めて対処すれば良いのだ。

母とは違う『不整脈』だと思うが、スーパー婆になった母を見て医学の凄まじい進歩を感じた。また、2006年に浦和に加入し得点王にも輝いたワシントン選手は、フェネルバフチェ時代に虚血性心疾患と診断され、2度に渡り手術を受けた。一時は選手生命の危機に立たされたが、見事に復帰を果たしている例もある。

ただ、命あっての選手生命であることを忘れてはならない。自分の身体としっかり向き合い最善を尽くし、オフ明けには鈴木選手と笑顔で会えることを信じている。

Q.脱臼するとどうなるのでしょうか?

A.膝のお皿を脱臼しても、だいたいは筋肉の力で元の位置に戻ります。脱臼したままで病院に来る患者さんは、ほとんどいません。脱臼してまたもとの位置に戻ったときお皿の骨の軟骨は圧迫され、お皿の裏の軟骨が骨折を起こすことがあります。膝蓋骨骨軟骨骨折といいます。多くの場合膝に血がたまり腫れてきます。

川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。

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