浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトーク Vol.135 (4/23)

かつて感じたことがないくらいにヒートアップした”さいたまダービー”

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:先週末は、敵地のNACK5スタジアム大宮にて、“さいたまダービー”大宮戦でした。2位浦和、3位大宮という上位同士で迎えた対決ということで、戦前から注目を集めることになったダービーとなりました。“大宮公園”には、史上最多となる13016人が集まり、このダービーを盛り上げていました。チケットはプラチナチケットと化して、発売日には、チケットは瞬殺。発売開始3分待たずと売り切れてしまう状況でした。試合前からチケットを求めるサポーターも数多く見受けられました。

豊田:私の周囲にもぞろぞろ難民がいた。こういう状況はタイトルを賭けた対戦以外ではJでは久しぶりでしょう。「お前は取材で見れるんだろ」などという根も葉もない非難?も食いましたが、メディアパスも入手困難な注目度だった様ですね。

椛沢:メディアの注目度も高くメディア席もなくなるくらいの取材陣の数だったようですね。レッズサポーターはこの日のために、特別なビジュアルを用意しました。赤白黒のレッズトリコロールを各サポーターがビブスを着ることでカラーリングをして、90分間スタンドはこのトリコロールに彩られました。また、中央には、お馴染みのPRIDE OF URAWAのメッセージが描かれた巨大ゲート旗を掲出しました。このビブスでのサポートは、09年のカシマスタジアムでのリーグ開幕戦以来のサポートでした。

豊田:浦和の応援も素晴らしかったのですが……すいません、大宮のゴール裏パフォーマンスの熱にも感じ入るしかなかった。ゲーム終了後、多くの地元サッカー好きと意見交換をしましたが、敗戦を別にしても「アルディージャに大宮(サッカー場のこと)の雰囲気を持って行かれてしまってる気配あり」の声には危機感を感じました。編集長のために念を押して置きますが、これはサポーティングのクオリティやセンス、経験値のことではありません。“ゲーム全体を包むスタジアムの雰囲気”のことです。13,016という動員新記録以前に、すでに拮抗したダービーの空気が出来てしまっていた。わずか数年前にはミラン戦の未来戦略などにジャンプ志向していたレッズ支持者の一員としては、消せないショックや自責の思いがあることは認めるしかない。

椛沢:試合前から大宮のサポーターも気合が入っている様子は伺えましたね。歴史を積み重ねてきて、お互いに負けたくないという気持ちが高ぶってきた雰囲気はあったと思います。これまでは浦和側が一方的に煽る構図でしたが、ピッチ上では大宮がダービーを強く意識するようになり、気がつけば、対戦成績も引っ繰り返されて、お互いが負けたくないというバランスが取れてきたダービーだったと思います。

豊田:コメントをもらったメンバーの中には、満員の磐田スタジアムで行なわれた静岡のチャンピオンシップ・ダービーの経験者がいます。でも、今回ダービーにはかつて感じたことがないヒートアップがあったそうです。旧大宮サッカー場のナクスタは半世紀前の東京五輪会場にも採用された地元サッカー史を象徴する場所。いわゆる“ニュートラルな立場”から観戦するサッカー好きも数多く含まれます。もはやそれらのファン心理の中では「独自のフットボール成果」を見せれば、アルディージャへのシンパシーはレッズに追いつく形勢にある。そういうことだと思います。

椛沢:チームやクラブはもちろんですが、ファンや地元支持者もサポートの意識向上を目指さなくてはチームの魅力は欠如してしまいますし、隣町のクラブに追い抜かれてしまうという危機感は持った方が良いかもしれません。

豊田:雨というのにファミリー総出で応援に駆けつける人たちも多かったですね。普通にアルディージャの合羽スタイルの子どもたちも多いことに改めて驚いているのは私だけでしょうか(苦笑)。これは「サッカー百年の埼玉」の土壌の裏面シーンとも思えます。サッカーを受け容れる広範な層が存在する。代わりにクラブ周辺にまで求められるレベルも低くはないのです。「URAWAならレッズでしょ」「URAWAならレッズでなくちゃ」という心意気は確かに重要なのですが、その言葉を妄信して安住を続けることはこのホームタウンにおいては危険なのです。自戒を含めてそういう現実を思い知らさせてくれるダービーでした。

椛沢:試合は、今季の中でも一番形を作らせてもらえない展開だったかもしれません。オールコートマンツーマンの対策を練ってきた大宮に対して、完璧に封じ込められる形で、90分間を消化してしまったという印象。決勝ゴールとなった前半終了間際の失点も、那須が流血のために外に出ている隙をつかれてのものでした。勝負弱さを見せてしまったといわざるを得ない内容でした。対する大宮はさすがに不敗記録を作るだけあって、守備の組織が堅い。特にCBとボランチのスクエアは強固で、レッズは全く中央を使うことが許されませんでした。前半で、GK北野と交錯をして原口元気が途中交代してしまったことも大きなダメージとなりました。現状のチームでは彼以外では、仕掛けるスイッチを入れられる選手がいない。ただボールを回すだけではなく、どこかでドリブルなどで突っかけて仕掛けなければ、相手の穴は生まれません。

豊田:新潟戦もそうだったのですが、連携した動きで球際を抑えられると選択肢がなくなります。確かに原口のような駒がないとセットプレーももらえず、可能性はますます低下してしまう。レッズは現状でやるべきサッカー、できるサッカーは貫徹させたと思います。だが、またしてもそこを摘み取る大宮の対策は周到。気迫と執念も満点のサッカーで返してきた。相良純真君がよく「 大宮は浦和に意地を張るゲームをする」と言われていますが、今回は真骨頂だったかも……こちらが思う以上に大宮サポーターは充実感を味わっている気がする。それが肌で感じられるだけに、なおさら悔しさがつのります。

椛沢:今までのダービー以上に両クラブが気持ちを入れて臨んだダービーとなり、良い雰囲気の中での試合が行われただけに、この結果は非常に残念です。相手にしっかりと対応された時に、それを上回る精度を高めるのか、最終局面で勝負できる個の力を補強するのか。これはアジアの闘いでも感じている所ですが、頂を手にするためには、まだまだ欠けている部分があると思います。さて、気持ちを切り替えて、明日は、ACL広州恒大戦です。ご存知の通り、敵地で、バリオス、ムリキ、コンカという強烈な個性を中心としたチームに圧倒されて、0-3の敗戦を喫した相手です。アウェーで大きな借りがある相手を、ホーム埼スタに迎えての試合。是が非でも勝利が欲しい。予選リーグ戦突破への展開を考えてもこの試合は落とせません。ここで易々と負けているようでは浦和の名が廃ります。意地を見せないといけない。我々サポーターもアウェーで見せつけられた4万人の大観衆アウェーをホーム埼スタで再現をして、さらなる圧倒的なホームの雰囲気を作ってチームを後押ししましょう。

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