浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトーク Vol.136 (5/2)

王国対決・清水に敗戦。最終戦に勝利するも、ACL決勝トーナメント進出ならず。

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:まずは先週のミッドウィークに行われた広州戦から触れましょうか。広州恒大は、アウェーで0-3と惨敗をした相手ということもあって、ホームでリベンジしたいという想いがある試合でした。クラブが主導となって、「あの時の悔しさは忘れていない」というキャッチコピーと共に試合の告知を知らせるビラの配布が試合前から行われていました。生憎の天気ということもあって、19,687人の入場者数ではありましたが、そんな活動もあって、いつも以上に熱気のある埼玉スタジアムでした。

豊田:夜の冷たい雨模様でしたがそれを感じさせない雰囲気がありました。ハーフタイムのウォーリアですが、第一声が中心から発せられた時にはゴール裏も声が束ねられていなかった。それが第二声からはバックスタンドまで一気に揃ったあたりは良かったです。広州サポーターはもちろん、海外組と代表組を除けば相手選手も経験がないスタジアム空間は作れたと感じています。

椛沢:前半からレッズがペースを握り、幾度とチャンスを作り出します。そしてマルシオが倒されてPKを獲得。先制のチャンスでしたが、キッカーの阿部がこれを外してしまいました。これで流れが悪くなると、逆に森脇のミスからボールを奪われて、ラインの裏を突かれて、バリオスに1対1をしっかりと決められて先制を許します。ダービーで負けた後の試合ということもあり、嫌なムードがスタジアムを漂いますが、後半、レッズが奮起しました。右サイドの平川のシュート性のクロスに興梠が詰めて同点。さらに阿部が持ち上がり、左サイドの槙野に渡して、さらに返ってきたグラウンダーのボールを阿部があわせて逆転ゴールを決めました。さらに興梠が倒されて得たPKをマルシオがしっかりと決めて3-1。その後は、リッピ監督が退席処分になるなど荒れた展開になり、1点を返されますが、3-2の逆転で勝利を収めました。

豊田:マルチェロ・リッピは自分的にはバッジョやデルピエーロのボスという印象で固まっているんです。助っ人の持ち駒を生かす戦術を徹底させていたが、バックラインからの展開の作り方などはやはり従来の中国サッカーとは異質だった。ミシャレッズとのサイドでの駆け引きなどゲームとしての見どころも多数。やはりこのあたりがACL観戦の醍醐味でしょう。チャイナマネーがこの舞台にまで色を加えていることを実感しました。まあ、彼を退席処分に追い込む一端くらいはこのURAWAで作れたのではないかな? バックスタンド2階席でしたが、周囲では「ザマみろリッピ」という反応がいちばん多かったようです。

椛沢:リッピという偉大な指揮官が中国にいることは、中国サッカーの発展にとっても大きい影響を及ぼすでしょうね。ビックネームの選手がプレーするよりも大きなことだと思います。他の中国チームとは異質なサッカーを展開しているのは、リッピの功績でしょう。いずれにしてもダービー敗戦に続く試合だっただけに、この試合に勝利を出来たことは大きかったと思います。ここで連敗となると後に響きやすい。勢いにのって清水戦に挑めたはずでした……。しかし、結果はご存知の通り、0-1の敗戦。試合はほとんど支配をしながらも清水が勝つならこの形しかないという形で、カウンターからバレーに突破されて先制点を奪われて、逃げ切られてしまいました。ダービーで負けることと同じくらい、サッカーの街としてのライバル・清水に負けることは浦和として許すことの出来ない結果でした。

豊田:おなじみの相手に「フットボールの質」として上回るものを見せているのですけどね。ここまでのクラブと周囲の努力を壊すようなサポーターの振る舞いについて、「フットボール通信は地元メディアとして看過すべきではない」という声をいただく情況があることは残念です。

椛沢:試合後の出来事は、個人的にも賛同できませんね。腹立たしい試合結果だったので、私はすぐにスタジアムを後にしてしまったので、何が起きたか詳細は分かりませんが、喜ぶ相手の挑発にのってしまったのであれば、それは相手の思う壺。

豊田:その現場のいきさつを詳細にレポートしてくれる人もいるのですが、虚しいばかりですよ。とりわけ今回は「チームのため」「クラブのため」という大儀も見当たりません。こういうケースで騒ぎが起こってしまえば、クラブにもサポーターにもホームタウンにもダメージとなる結末しかもたらさない……はっきりしているのはこの事実のみです。

椛沢:「サッカー王国と名乗っているチームが、あんなサッカーをして、勝っただけで喜んでいるのか?」と意に介さない姿勢を取るあたりがベストだったと思いますね。さて、リーグ戦は好調でしたが、大宮、清水と浦和として負けてはいけない2戦に連敗を喫してしまいました。昨晩のムアントン戦ではアウェーで1-0と勝利したものの、広州、全北がスコアレスドローで終わったため、2位の全北と勝ち点は10で並びましたが、当該チームの対戦成績により、予選敗退が決まりました。優勝した2007年の予選と同じ勝ち点10を稼いだものの、あの時と違うのはホームでしっかり勝ち、アウェーでは引き分けをもぎ取るというセオリーを忠実にこなせたこと。その部分での未熟さがあり、あと一歩まで迫った決勝トーナメント進出は逃しました。久しぶりに「URAWA」の看板を背負って飛び出たアジアは刺激的でしたし、我々がいない間にアジアの進化も感じることが出来ました。この大会は毎年出続けなければならないと強く思いましたし、「URAWAを世界へ!」の気持ちを再燃させることが出来ました。今季のリーグ戦で優勝をして、来年のACL出場権を獲得することを新たな目標に立てて邁進していきましょう。

豊田:グループリーグ敗退決定を受けた会見で、埼スタでのホーム全北戦後半を挙げたミシャのコメントが的確です。場なれしている韓国サッカーにはめ込まれて原口の先制点をまんまとひっくり返されてしまったあの45分間を、チームも私たち支持者も忘れてはいけない。相手は実戦力の格差を埋める「駆け引き」や「ゲーム運び」も動員して来るし、J現場で信奉されているサッカーとは違う決定力も駆使して来ます。すべてがアジアから遠のいていたレッズが置き忘れていた部分を物語っていると思いますよ。ただ、個人的にはあのホーム&アウェーに戻れたことは嬉しかったな。この舞台の常連となるために、サポーターも含めて経験値を積み上げる工夫に智恵を絞らなければなりません。試合途中で埼スタのピッチを後にしたマルチェロ・リッピも、レッズとの再戦に燃えてくれていると思いますしね(笑)。

椛沢:月曜日には、連敗で迎えるセレッソ大阪戦が控えます。もちろん新たな目標のためには3連敗は絶対に許されない。気持ちを新たにして、リーグ戦での戦いに挑みましょう。

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