阿部勇樹が今、浦和に必要なものを感じさせてくれたシーン【河合貴子のレッズ魂ここにあり!】
J開幕から浦和レッズを追いかけている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。
冷静沈着、ピッチの中で戦術眼を持つ男
対戦相手を分析しチームが勝つために、選手の起用やゲームプラン、戦術など全てにおいて導いていくのが監督の役割であり、それをピッチの上で具現化していくのが選手の役割である。
サッカーの試合を見ていると、試合の流れは生き物のように思うことがある。まるで1つの意志をもっているのかように、ちょっとしたことで予測も付かないようなことが起こる。それは偶然ではなく、いくつもの事柄が重なり必然となる。
例えば、単純なトラップミス1つでもパスの受け手側のスキルやタイミング、方向、強さなどは、パスの出し手側と合っていたのか・・・。相手のプレスはどうだったのか・・・。この単純なミス1つで試合の流れは変わってしまう。また、選手交代によって良い流れを引き寄せられることもあれば、途中出場の選手が上手く試合の流れに入れずにチーム状況を悪化してしまうこともある。
監督は、常にベンチから戦況を見守り選手たちに指示を出す。だが、時にはこの指示が広いピッチに散らばる選手たち隅々まで届かずに混乱を来すこともある。もちろん、上手くいくこともある。試合の流れが悪く上手くいってないことを肌で感じているのは、ピッチで闘っている選手たちが一番良く分かっている。
流れを引き寄せようと我武者羅になる選手もいる。がむしゃらなプレーが、チームの刺激になりチーム全体にスイッチが入り流れを引き寄せられる場合もあれば、そこでバランスを崩して難しくしてしまうこともある。本当に、サッカーの恐いところだ。
監督が、試合を止めて具体的に動きの修正を図ることができれば良いが、それを行うのは練習だ。試合中は、ピッチで選手たちが声を掛けたり、わずかなアウトオブプレーで話し合い修正するしかない。
そこで重要なのは、選手たちの試合の流れを読む力だ。試合の流れを読む力は、選手のサッカー指数だ。それは、如何に修羅場をくぐり経験を積んで来たかだ。ミスや敗戦をおざなりにしていたら、いくら経験を積んでいても決してサッカー指数は上がらない。
浦和には、このサッカー指数が高い選手がいる。阿部勇樹選手もその1人である。
ピッチの中で冷静沈着に流れを読んで、鋭い戦術眼を持っている。ピッチの中で起きている状況を素早く判断して、攻守に渡りバランスを保っている阿部選手の存在は大きい。
堀新監督になって初めて迎えた、さいたまダービーの大宮戦。前半に先制して1-0で折り返すも、意思疎通が図れずに情けない失点で追いつかれた。
安い失点だったために精神的なショックからチームがガタガタと崩れておかしくない状況で、阿部選手は首を左右に振りながら周りを良く見て、チームのバランスを考えて冷静にポジションをとっていたのだ。
失点からわずか3分後に2-1とした菊池大介選手の仕掛けからのクロスも柏木陽介選手のゴール前に飛び出す動きも見事であったが、阿部選手がしっかりとバランスをとっていたからこそ生まれたゴールであるであった。
2-1と再びリードする展開の中で堀新監督は、75分に疲れが見え始めた興梠慎三選手に代えてラファエル・シルバ選手を投入した。
この時、ラファエル選手は「守備で貢献してもらいことに加えて、相手の裏のスペースに突くことだったり、自分の良さを出して欲しい」と堀新監督から指示を受けていたのだ。
ちょうどこの選手交代が、柏木選手が得たFKのタイミングとなり、このわずかなアウトオブプレーの時間で選手たちは一斉に水分補給を行っていた。当然、阿部選手も水分補給をしていたが、他の選手たちと違いこのわずかな時間を見逃さなかったのだ。
交代の準備をしているラファエル選手を見て、ベンチ前で水分補給をしながらロドリゴ通訳を呼んでラファエル選手への伝言を頼んでいたのだ。
ラファエル選手は「『中を閉めた状態で、サイドバックのケアをしっかりと頼むぞ』と言われた。守備では、自分たちの狙っていたことができたと思う」と手応えを感じていた。
いかにも、阿部選手らしい声掛けであった。ラファエル選手がピッチに入りインプレーになってしまうと、なかなか上手く伝わらない。ラファエル選手の攻撃力は分かっているが、守備力となると攻守の切り替えが少し遅れることもある。そこで、具体的に一声掛けておくだけでラファエル選手の守備面の意識があがる。
些細なことかも知れないが、試合の流れを考えると本当に重要なことである。
しかし、残念ながら試合終了間際に同点されてしまい逃げ切ることができなかった。監督が代わり、試合までの短い準備期間で直ぐに上手くチームを立て直すことができるとは思えない。だが、少しは改善の兆しが見えたものの見えただけで終わってしまった。
ペトロヴィッチ監督が解任されて「選手の責任だ」「悔しい」男泣きする選手たちの姿を見た。その気持ちがあるのであれば、ピッチでしっかりと示して欲しい。
決して忘れてはいけないのは、試合が始まればピッチで闘うのは選手たちだ。阿部選手のような冷静沈着で優れた戦術眼を持ち判断し、行動することをチーム全体が意識すれば、浦和は変われるはずだ。冷静沈着で優れた戦術眼を持つ男の背中が、今、何が浦和にとって必要なことなのかを物語っていた。
Q. 肉離れになるとどの程度安静にしていれば良いのでしょうか?
A. 軽傷の1型の場合は、2~3週間。中度の2型の場合は、3~4週間。腱断裂などの重症の3型の場合は、復帰するまで2ヶ月ぐらいかかります。気を付けないといけないのは、肉離れは癖になると言われています。筋肉の回復したときに筋肉の柔らかさがどの程度まで戻っているのかが重要です。特に子供の場合は、2週間ほど安静にしていて痛みが取れてから、完治したと思いプレーするとまた肉離れを起こして内出血する悪循環になることがあります。筋肉がどれだけ回復しているのか、しっかりと確認をしましょう。
川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。
川久保整形外科がリニューアル開院しました。平成28年5月6日(金)より新クリニックにて診療を開始しています。MRIなど最新施設を備えて、より良い環境の下での医療とサービスをご提供していきます。http://www.kawakubo-clinic.jp/