【This Week】週刊フットボールトーク Vol.139 (5/21)
05年以来の大勝となったサガン鳥栖戦。
椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)
椛沢:先週末は、ホーム埼スタで、サガン鳥栖戦でした。激闘の鹿島戦に続く試合ということで、ここで緊張感が保てないのがレッズの伝統でもありましたが、試合はリーグ戦では、じつに2005年の駒場での柏戦(7-0)以来の6点差以上の大勝となりました。試合前にはロブソン・ポンテが2試合連続の来場(笑)。3日くらいの滞在の予定が、浦和が楽しすぎて滞在時間が延びて、鳥栖戦も観戦することになったようです。スタジアム一周だけではなく、北ゴール裏スタンドにも登場して、サポーターと交流を図っていました。
豊田:あのブカブカの即席ユニのシルエットで、ああロビーも本当に引退してしまったのだという実感を受けました。離日後の談話も幾つか目にしましたが、浦和時代のキャリアは彼にとってスペシャルなことが良くわかります。いつかコーチングスタッフになった彼と闘いたいという気持ちが強く湧いた。でもブラジル人でありながらブンデスリーガで結果を残したキャラクターから言っても、ハートがあることは間違いありません。埼スタのピッチ上でまた会えるような気がしてならないのですが……。
椛沢:ロビーの現役時代の勝負強さ。あれはサポーターにとっても困った時にやってくれるという絶対的な信頼感がありました。将来、勝負強いチームをレッズで彼が率いてくれたら、熱狂してしまうでしょうね。さて、試合は前半26分、興梠が仕掛けたドリブルを引っ掛けてPKを得ると阿部がきっちりと決めて先制をしました。若干硬直状態の中で、大きな先制点となりました。その先制で前半を折り返すと、後半早々には、槙野が左サイドの梅崎との連携から見事なミドルシュートを決めて追加点。相変わらずディフェンダーとは思えない精度のシュートを決めてくれました。
豊田:エリア内に近づいたときの技術やアイデアは、DFとしては突出していると思う。いまのJであれだけのアクセントがつけられる攻撃力は貴重です。それはもう代表に呼び戻されるポテンシャルもじゅうぶんにあるプレーヤーだと思います。
椛沢:槙野の追加点までは良かったのですが、7分後に鳥栖に左サイドの裏のスペースに簡単なロングボールを入れられると、槙野の軽いプレーでかわされて失点。得点を帳消しにしてしまうプレーだったと思います。
豊田:そう。ゴールが派手なぶん守りに回ったときの淡白さがきわだってしまうことは残念。このところ5番のレプリカを着けたファンが一層増えた気がするだけに、何かをキッカケに変わって欲しいです。彼だけの責任ではないが、乱打戦の様相を呈した時にゲームを落ち着かせる空気がチームの中につくれない情況が確かにあるので。
椛沢:この嫌な流れの中で、興梠が平川のクロスをどんぴしゃであわせて3点目を決めます。興梠は、鹿島戦に続くゴール。しかも苦しい展開でのゴールは、エースストライカーとしての仕事をやってくれたと思います。この試合でゴールを決められるかが、興梠のエースとしての立場を作ると思っていましたので、このゴールは今後に繋がる得点だったと思います。しかし、また得点の後に、はっきりしないプレーを鳥栖に詰められて2失点目を喫してしまいます。相手が前掛りになってきた時の判断は、継続した課題になっています。
豊田:ギド時代やエメルソン時代にもレッズは「点の取り合い」が名刺代わりになるような時期が幾度となくあった。こういうゲームはファンの興奮を呼び、クラブの魅力のひとつにもなってきた訳ですが、裏を返せば「したたかに勝つ」という計算された勝ち方が身に付いていない危惧もあるわけです。少なくとも3-2の時点までは首をひねるサポーターも少なくなかったな。
椛沢:プラス材料としては、2点目を獲られた後も攻め抜く姿勢を崩さなかったことです。この試合で攻撃のアクセントとなっていた森脇の仕掛けから、途中出場のマルシオに繋がり、右からのクロスに原口がファーであわせて4点目。これは狙い通りの形でした。さらに後半44分、セットプレイ崩れから、興梠のクロスを那須がヘッドで決めて3試合連続の得点。那須のセットプレイは本当に強い。キッカーが揃っているので、今後もセットプレイからの得点は大きな期待が出来ます。
豊田:マルシオが交代で出てきて対処に追われた時間帯から鳥栖の出足が止まった。中盤のロストボールを拾う動きが、ここからはっきり明暗を分けました。それにしても那須の破壊力には自信がみなぎって来ましたね。本当に槙野と二人で何点取るんだろう(笑)。
椛沢:レッズの3バックは今までのJの歴史で稀に見るスコアをたたき出しそうです(笑)。さらに、ロスタイムには、これまた途中出場の矢島が、森脇のクロスをヘッドで決めて、リーグ戦初ゴールで、6-2。矢島の得点も嬉しかったですね。なかなか出場機会が得られず、燻っていた矢島でしたが、腐らずに虎視眈々と出場機会を狙ってきて、しっかりと結果を残してくれました。
豊田:点を獲るまでの読みと動きは堂に入ったものです。北浦和少年団・吉野監督が言われていた通り「ワンタッチの勝負で勝ち抜いて行ける子」。昨年の柏戦もそうでしたが、あの制限時間内で結果を残す巡り会わせを大切に次に活かして欲しい。
椛沢:「We are Diamonds」の時には選手達が「俺達は5万人の前で戦いたい集え浦和人」というメッセージを出しており、ミスターレッズ福田さんもスカパーの番組で「まず5万人が来たいと思う試合をしないといけないですね」とコメントしていましたが、私も同感。選手達は5万人が来たいと思う試合をピッチで表現し続けることが一番だと思います。
豊田:ミシャの采配や起用もちょっと停滞気味だったタイミングで、鹿島相手にリカバリーのインパクトを取り戻せた経験はチームにも支持者にも貴重なものです。あそこが分岐点だった……と皆で振り返れるように、ここは大切に次節に臨みましょう。
椛沢:中断期間までは、あと2試合。日曜日の柏レイソル戦と、ACLで日程がずれていた仙台戦です。ACL組のこの2チームをしっかりと叩いて、上位固めをして中断を迎えたいところです。