浦和レッズ2013ライブディスカッション 「ポジション争いの激化が、これからの連戦を乗り切る力になる」(前編)
レッズ密着取材を続ける河合貴子氏に、本誌・椛沢編集長が浦和レッズの現状や選手達の思いを毎月訊く「レッズ2013月刊ライブディスカッション」。浦和レッズは、2位で、6月の中断に入った。2戦連続の6得点などもありながら、まだまだ成長過程のレッズをどう見ているのか、河合さんにお話を訊いた。(浦和フットボール通信編集部)
成長はまだ見えず・・・。
椛沢:前回のライブディスカッションでは、ダービーで負けて、メンタル的に落ちたところでACLの広州恒大戦を迎え、見事に勝利が出来たのは、メンタル的成長が見えたと思ったけれども、ミシャさんに、清水戦で同じような試合を見せてから、それは成長といえると言われたという話でしたが、エスパルス戦は、押し込みながら、相手の一回のチャンスをバレーのカウンターから決められて敗れてしまいました。
河合:勝てなかったね。あの試合はなんだったのか。あれで、リーグ戦連敗になってしまった。ミシャ監督が言っていた通り、成長したと言えなかった。あの試合はチャンスを作ることは出来ていたけれども、点を決め切れない試合だった。
椛沢:ただ、その清水戦の後は、負け無しで、リーグ中断に入りました。今一度、ここまでを振り返ると、13試合を終えて、8勝3分2敗で2位につけています。ミシャ2年目ということで、サッカーが進化している印象を受けますし、実際に点が入るようになって、攻撃のバリエーションが増えて、内容も良くなってきています。
河合:上にいるのは大宮。いつか浦和が上に行くと思えるから面白い展開なんじゃないかな。前半戦は、特に鳥栖、柏は最高だったね。どこからでも点が取れる。判断力も良かった。今後、混戦になった時に得失点差は大きく響いてくるかもしれないから、失点を0で抑えたかった。ただ、失点が多いという所は、リスクを冒して前に行っている部分のリスクマネージメントの部分で、ミシャさんも失点をしても2点、3点を獲れば良いんだという考え方なので、今のやり方だと致し方ないかな……。
椛沢:失点はもっとつまらない失点だったと思います。点が入った後に気が抜けて軽いプレーで失点をしたり、戦術的なものよりも個人の問題なので、選手の意識ひとつで解決は早いと思います。
河合:仙台戦の失点もつまらない失点だった。あれは加藤がよくセーブしたと思うけども、その後のプレーが問題で、あそこがフリーだった。
椛沢:あの時間帯は守りに入ったところで、押し込まれて流れが悪いまま、それを断ち切れずに失点をしてしまった印象です。
河合:失点をする前に、山田暢久選手が準備をしていて、彼を火消し役として入れてゲームを抑えるというところが見えたところでの失点でした。
椛沢:あの試合は、1-0で終わらせる試合をするべきだったのに失点をしてしまったことが問題なのか。それとも、その前に、原口がビックチャンスを外している。あれを取れなかったことが問題なのか。二つの考え方があります。ミシャさんは、そもそも1-0のサッカーをしようとしていないのではないかと思います。
河合:山田選手を入れて1-0で抑えようという場面は見えたから、守りきろうという狙いはあったんだと思う。
椛沢:でも、あそこで守りに入ると守りきれないチームのように思えてしまいます。
河合:そもそも仙台戦の問題は前半にある。前半は、内容がひどすぎた。サッカーの怖さで、中2日と中3日のコンディションの差がこんなにも影響するものかと思った。明らかに走れてなかった。
椛沢:仙台も出来はさほどではなかったので、0-0が妥当の試合の中で、PKを獲得したけども、それを勝ち点3につなげられませんでした。
河合:仙台戦は、元気が仕掛けたのもPKを獲ったシーンくらいだった。それでやっとPKを獲って苦しい流れを持ちこたえられなかったのは、もったいなかった。あのような場面でしっかり抑えて勝ち点3が取れないと優勝するチームにはなれないし、成長したとはまだまだ言えない。ただ、攻撃のクオリティーはあがってきている。鳥栖で6点を取った後は、過去のレッズだったら、大量得点をすると気持ちが緩んで負けているケースもあった。8年ぶりの6得点の後に、柏戦でも6点を決めて、大量得点を2試合連続で出来たのはレッズ史上初めての出来事でした。
椛沢:鳥栖、柏のような気の抜けたような失点をしているようだと、守りきれないのではないかと思ってしまう(苦笑)。でも、鳥栖、柏のような試合が、理想の試合に近いんでしょうね。この試合はどこからでも点が入る感じでした。
興梠には黒子だけに終わって欲しくない!
椛沢:セレッソ戦は、原口のゴールは素晴らしかったですね。原口がいない数試合は、うまく崩そうとしているけれども、ゴールまで行かないというもどかしさはあったけれども、あの試合では原口がそれを打開する力を見せてくれました。
河合:綺麗に崩すことは出来ているけれども、最後シュートに行くのか、そこでゲームの流れを読んで、今何をしなければいけないかという判断力は大事だと思う。ミシャ監督も内容を求めて戦っている。点を取ること。リスクを冒してでもいいから、点を取ること。そのような見方をしていれば1失点でも良いのかな。その判断力を合宿を含めて高めていくのではないか。昨年は、相手がブロックを作っているのに、無理に楔のパスをいれてカウンターを食らうシーンが多くあったけれども、今季はそのようなシーンは減ってきた。
椛沢:鹿島戦は、Jリーグ20周年記念試合に指定された中で、全国が注目する中で、気分が良く勝つことが出来ました。
河合:記念試合というと、今までのレッズは負けることが多かったけども、よく勝った!
問題のゴールもありましたけど、ゴールはゴールでしょう!
椛沢:あの試合で興梠がゴールを決められたのは大きかったと思う。チャンスメーカーとして評価はあるけれども、鹿島戦でゴールが決められないと、ストライカーとしての評価がどうなの?と言われかねない試合だったと思います。
河合:柏戦で、マルシオに出したパスとか、すごいと思うシーンはあったけれども、あの試合では、シュートは0本。だから彼に言った「打ってよいシーンでなぜ打たない?黒子になりすぎてないか?」と。
椛沢:鹿島戦はそういう意味で、俺が決めなければいけないというエゴがちょっとあったように思えます。その差なんじゃないですかね。
河合:あったね!そうなんだと思う。黒子に徹している興梠選手の貢献度はすごく評価するし、すごく出来る選手だけども、選手としての欲をもう少し出しても許される。そうでなければ、ただの黒子で終わってしまう。
椛沢:良い流れで勝っている時は良いけど、0-1とかで負けた時にストライカーとしての責任で、なんでお前が決めないんだという話になってしまいます。
河合:柏戦でも、ゴールの起点はほとんど興梠選手だったけども、前半の23分に、どフリーだったのに、シュートを打たなくて怒ったシーンがあった。これから黒子プラスアルファを求めたい。そうでなければ厳しいよ。それは思わず本人にも言った。彼は浦和で優等生過ぎるところが出ているかな。「今のサッカーは誰が点を取ってもおかしくない、良い雰囲気で出来ている。前の3人が近くでやれると良い崩しが出来ている。夏場の連戦が続く時がある。そこの部分でどうなるかだ」と話はしています。
椛沢:必ずしも良いサッカーが出来ないので、その時に、自分で決めるというのがないと苦しい試合が出てくると思います。
河合:興梠選手は自分が決めなくても、よりよい選択肢と考えているのだと思う。でも、これからは黒子だけではなく、得点が求められるシーンが絶対に出てくる。
中断明けの連戦が、山場になる。
椛沢:中断明けの7月は甲府、F東京、川崎、横浜と連戦が続きます。
河合:ここはキツイね。中断明けの7月6日、10日、13日、17日という連戦は、重要になってくる。ここが山場になる。ここをどう乗り切るかで、この後の終盤戦が見えてくる。そして10月2日の大宮戦。
椛沢:大宮には、直接対決で引っ繰り返せる位置にいないといけない。大宮はけが人が出ない限りは、落ちてこないのではないかと思います。連戦の中で、全部の試合で、良い内容のサッカーが出来るわけではないでしょう。ここまでは、良い試合のときは勝たけれども、苦しい試合で勝てなかった。これから、苦しい試合でも勝てるようになると勝ち点がもっと積み上げられてくると思う。
河合:うまく戦力のターンオーバーをして乗り切って欲しい。ミシャさんは、選手が疲れたからという、交代はしない。代わりに入る選手が同等のパフォーマンスをしなければだめだと言っているからね。そうなってくると補強を考えないといけないのかな……。
椛沢:本気で優勝をしたいのなら、補強をするべきだと思います。
河合:補強をしたとしても、ミシャサッカーをするためには慣れるのに時間がかかるからね……。
椛沢:その意味でも外国人選手は欧州リーグのオフにあわせた今が獲得しやすい時期なので、この時期に獲って、来年の開幕の戦力になるために今獲った方が良いんじゃないかなとも思う。来シーズン開幕で補強をしたら、また遅れてしまう。
河合:補強するなら、今でしょ!ってやつだね(笑)。それはあるよね。日本国内で連れてくるのであれば別だけどもね。
椛沢:補強については、もう動いてなければ、遅い話ですけどね。おそらくその動きはないでしょうね……。理想だけ語っても仕方がないので、補強をしないのであればしないなりに頑張るしかないですね。
河合:今、矢島選手にしてもそうだし、試合に出られなかった選手がいきなり試合に入っても遜色なく出来るというのは良いと思う。永田充も帰ってきたけれども、ポジション争いはまずます激化する。その争いがなければ、これからの夏の連戦は乗り切れない。合宿で直輝も出場するんじゃないかな。本人が試合に出ちゃうからね~と言っていたから(笑)
椛沢:その反面、メンバーは絞られてきたという印象も受けます。試合に出られる選手と出られない選手のラインというものは、はっきり引かれてきたのかなと思います。
河合:戦力の循環という意味では、この前、細貝選手が大原練習場に来た時に、「いつか帰ってくれるんだろうね。いつまでも阿部ちゃんと啓太がボランチに頼っているようではレッズの未来は無いよ」という話をしたら「いつかレッズに帰って来たい気持ちは、もちろんあるけどもチームがどう判断するかどうかもあります。ボランチは、マコさん(長谷部誠選手)もいるからなあ」と言っていた(笑)。ただ、もし自分がレッズに戻ってくるならボランチでと言っていた、まだ海外で頑張りたいとも言っていたから、当分先の話かもしれないけどね。
椛沢:将来的に、長谷部、細貝のダブルボランチが戻ってきてくれれば、安泰ですね(笑)
河合:あとは、私の夢の柏の3連戦が消えた……。
椛沢:ACLでは、勝ち点は優勝した2007年の時と同じ勝ち点10を稼ぎましたが、当該チームである全北現代との対戦成績の差で予選敗退となりました。ホームで全北戦に負けたことが痛かったですね。
河合:全ては、ホームの全北戦だね。あれは自滅でしょう。もったいない試合をした。これを糧にして、来年もう一回行こうよ。そして伸二と当たろうよ。伸二も大原練習場に来た時に、「たかねえ、絶対に上がってきてよ。優勝が無理でも3位に入って、ACLの出場権は絶対だからね。レッズと対戦をしたいんだから!」と言っていました。
椛沢:久しぶりにACLに出ることが出来て、アジアでの戦いががあると世界の中でやっているという感覚になれて楽しかったですね。経験不足で、敗退したことを含めても、この大会に出続けることの重要さも感じました。
河合:レイソルが全北に勝ったときは、すごく悔しかった。その鬱憤はリーグ戦で晴らしたけど、それでもやっぱり代えがたかった。真の鬱憤は晴れてないから……。来年、もう一度アジアに出よう。
(次週、後編に続く)