浦和フットボール通信

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浦和レッズ2013ライブディスカッション 「横浜時代はメンタルが弱かった那須大亮は、浦和で熱き魂になった」

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レッズ密着取材を続ける河合貴子氏に、本誌・椛沢編集長が浦和レッズの現状や選手達の思いを毎月訊く「レッズ2013月刊ライブディスカッション」。夏場の試合を乗り越えて、浦和レッズは現在、首位の横浜と勝ち点1差の2位。優勝争いを演じている、現状のレッズについて、河合さんにお話を訊いた。(浦和フットボール通信編集部)

5勝2敗で乗り切った夏場の7試合

椛沢:夏場の試合は7試合での戦績は5勝2敗。成績的には悪くは無い結果でした。しかし、内容としては、どの試合も苦しいものでした。印象としては如何だったでしょうか。

河合:苦しい試合が多かったね。改めてレッズのサッカーは、走れないと成り立たないサッカーだと痛感した。ミシャさんは「この夏場の連戦はあり得ない」とずっと言い続けていました。

椛沢:そうなった時にレッズは手を施せないのかと歯がゆい部分もありました。その中で、
新潟戦は結果を出すことに拘り、自分たちのサッカーが出来ないなりに勝負に徹して結果が出せたのは大きいと思います。

河合:新潟は、相手が崩れてくれたこともあると思う。磐田戦もサッカーが出来ないなりに勝てた試合だった。優勝を狙う上でこのような試合は重要だと思う。ここまで振返って、選手達が良く頑張って、良く耐えて我慢強く戦ったと思う。清水戦は規律を守って、レッズのサッカーが見えた。マリノス戦はフロンターレ戦に続く完敗。中村俊輔一人にやられた。俊輔は楽しそうだった。ただ、成績は上々だと思う。マリノスに勝っていればと思うけども、最後に笑えばよいと思っている。

椛沢:試合内容を見ると、嵌る試合と嵌らない試合がはっきりしていました。前からプレッシャーをかけられるとボールを回すことが出来なくなり、相手に嵌ってしまうことが多くありました。

河合:あとは、つまらない失点を先に食らうと、そこそこの力のあるチームに対しては厳しい状況になる。3点差を引っ繰り返せた、大分はそこそこの力があるとは思えない。ただ、あの試合はつまらないミスからの失点だったけれども、根性で3点を引っ繰り返した。3点を先取されたら普通はサッカー的には終わっているからね。

椛沢:ここにきて、失点が増えてきている。特につまらないミスでの失点も多くあります。

河合:連携ミスでの失点や、無理をして楔のパスを入れて、そこから勝負カウンターを狙われてしまうことが多い。先に失点をした後に、自分を見失ってしまうのはメンタル的成長が足りないのかもしれない。これから涼しくなってくると、レッズのエンジンが掛かってくると思う。ミシャサッカーは燃費良く走ると思うよ。夏場は確かに燃費が悪かった。ミシャのサッカーはボールが切れないから、水飲むタイミングや一息入れるタイミングがない。興梠がハーフタイムに熱中症のような感じで気持ち悪くなったりしていたのを見ると、どれだけ限界ギリギリで夏場を戦っていたのかが良く分かる。

椛沢:エスパルス戦のような試合がもっと出来れば、楽に戦えたかもしれません。

河合:清水戦は、効率よく戦えたね。あの試合はコンディションも整えられたタイミングだったのもあると思う。

椛沢:清水戦のような試合がしたいということが良く分かりました。あの試合は、順大も安定をしていた。相手がレッズのやりたいサッカーをさせてくれない試合になると、順大も含めて、やりたいことが出来なくなってしまう。そう考えると、順大のプレーが安定しないのは彼だけに問題があるわけではないと感じます。

河合:清水戦のあとの加藤君の表情はすごい良い表情をしていたね。もちろん、相手はレッズの良いところを潰そうとするし、弱点を突いてこようとする。レッズが後ろでボールを回している時に、ラインを上げて、前プレスをかけて、楔のパスを入れさせないというケアは絶対にしてくる。レッズはそうした時に、ディフェンスのラインの裏をつけるようなパスが出せると良い。啓太のロングフィードのサイドチェンジも有効的だと思う。

椛沢:広島戦の啓太は凄かったですね。広島とはマッチアップする形になるので、やりやすかった部分もあると思いますが、まさに啓太の展開力が嵌りました。

河合:あのようなワイドの展開が必要だね。森脇も大きく展開することが出来るし、阿部が平河に向かって、ロングフィードを送ることもある。あのようなロングフィードが通ると大きい。

椛沢:あとは、試合の流れとして、先制点が取れるか、取られるかで大きく試合展開も変わってきます。

スランプに陥りそうな所をなんとか踏みとどまった宇賀神

河合:先制点を取れると楽になるのは間違いない。磐田戦では、先制点を取られながらも森脇選手の終了間際ゴールで逆転勝利をして、諦めない気持ちを持っていて良かったとチーム全体が喜んでいた。その中で、一人だけ暗い顔をしてロッカールームを出てきて「チームが勝ってくれたことが全てです」と話している選手がいた。それは、宇賀神選手ですが、彼はそこから踏ん張った。疲れの中から判断力が落ちたりして、そこからガタガタ落ちていく中で、「こうやってダメになって試合に出られなくなり、引退に追い込まれる選手がいるんだ。俺ってそうなのか……」と思ったところで、よく踏みとどまった。ここで終わりたくない気持ちもあったと思う。梅崎が帰ってくる中でポジションがどうなるかも、分からない中で、気持ちを奮い立たせて、練習から意識高くもってやってくれたことで、その成果が出てきた。

椛沢:宇賀神は苦労人でプロになっているから、そのような強さがあるのでしょうか。

河合:自分でも雑草だといっているからね。まだまだ自分はスペシャリストになりきれていないといっている。右でも左でも 平川さんの域にはまだ届いていない。もう少しクロスの精度が必要。まだまだ彼は伸びる選手だと思う。

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椛沢:開幕の頃は、オーラーが違っていて、今年の宇賀神は違うという雰囲気があったのですが。

河合:夏場に落ちてしまったね。とにかく自分は前に前に、という積極性を持っていた。去年の等々力でのフロンターレ戦では積極的に前に行く姿勢があったから、ゴールにも繋がるプレーが出来ていた。逆に良いところを見せなきゃとか、セーフティーにやらなきゃと考えすぎてしまうと、ちょっとしたミスを気にしすぎてしまって、自分のリズムがつかめなくなってしまった。そこから、よく持ち直してくれたと思う。

椛沢:サイドは、宇賀神のほかに、梅崎、平川、関口とポジション争いも激化しています。

河合:梅がやるサイドと、宇賀のやるサイドではタイプが違うので、オプションを見せてくれたと感じさせてくれたのは面白かった。エスパルス戦の2点目を演出したシーンは、森脇が宇賀に中に入ってと伝えて、「森さんがボールを持った時に中に入ったら、森さんが出してくれなくて、えっと思ったら那須に出して、そこからボールが出てきてくれた」と試合後に、言っていた。あれは、森脇のナイスアドバイスだった。「あそこで決めきれないところが自分のまだまだの所だ」とは言っていた。あのような、ワイドの位置から中にフリーランニングで入る、ボールの無いところの動きは相手DFは掴みづらいと思う。シャドーの選手は宇賀が入った逆のところを使うことが出来れば、さらにプレーが拡がってくる。

椛沢:あの時はサポーターも宇賀神があそこにいるとは思わなくて、コールを入れるのを躊躇して、サポーターも惑わされたプレーでした(笑)。

河合:あの試合は、宇賀が2得点に絡んだ。振返るとエスパルス戦は夏場のベストゲームだったね。

椛沢:エスパルスが自由にやらせてくれたというのもありましたね。マリノスは逆にレッズ対策をしてきた。これから、あのようなサッカーをされた時にどうするのかという対応策が求められます。

河合:マリノス戦は、しっかりとした守備から入るという意識が強すぎて、引きすぎて、5バックになりすぎて、マリノスにポジションをされてしまったという反省点はあるのではないか。それでリフレッシュをしようということで、ナビ決勝の川崎戦前には、4バックでの練習なども行ってきた。ミシャさんは「リベロの阿部が一枚前の位置のポジションを取った。だから普通と変わらないんだ」という話をしていました。それによって中盤をケアしようということだと思う。それは中村憲剛を潰すためだと思う。マリノスとやる時も俊輔を潰せという話をするのかもしれない。

椛沢:大体の試合は、プレッシャーをかけられて、引き気味になり、5バックになって、前線と離れて、押し込まれるという形で負けていますからね。

河合:そういう欠点をどう打開しようかという中での策として、ナビスコカップの川崎戦の前々日に4バックなどを試したのだと思います。

椛沢:それは、試合中に選手が判断をしてやりなさいということなんですかね。

河合:そういうオプションの一つなのかもしれない。ミシャ監督も時にはやり方を変えなければいけないという話はしていた。同じ失敗はしたくない。

椛沢:エスパルスのようにレッズのサッカーに嵌ってくれるチームに対しては、レッズのサッカーが表現できるようになってきたと思います。レッズ対策を打ってくるチームに対しては、まだ対応しきれていない印象があります。

河合:中盤で本当のテクニシャンがいるチームには苦戦している印象はありますね。それがマリノスだと中村俊輔、フロンターレは中村憲剛。ガンバ大阪だと遠藤。決定的なパスを出せて、ゲームコントロールが出来るクリエイティブな選手が一人いると、レッズは苦しくなるのかもしれない。

椛沢:そう考えると、去年は、ガンバに5-0で負けましたからね。あとはプレッシャーをかけられた時に相手を往なせるくらいの力が出てくると良いと思います。

マリノス時代は心がすぐ折れていた那須大亮

椛沢:横浜戦では、那須のミスで先制点を許す形になりましたけど、那須は、それまでにそれ以上の貢献をしているということもあり、それを責めるサポーターはほとんどいなかったと思います。

河合:那須さんは俊輔に対してやられたという想いが強くて、あそこの失点シーンでは、心折れそうだったみたい。『那須ノート』で助かったと言っていました。マリノス時代の那須さんを知っている人は、「那須はそんなに心が強くない」と言っていた。「心が折れて、次の試合はきついよ、覚悟をしていたほうが良いよ」と、マリノス担当や、マリノスのスタッフにもすごく言われた(苦笑)。「今の那須は違う。浦和の熱き魂だとレッズサポーターも皆思っている」といったら、「本当の那須を知らないからだよ」と言われたくらいです。那須さんにその話をしたら、「確かに、昔はメンタル的に弱かったと思うけど、悪いけど、オリンピックの俺とは違うから。あの頃と同じではしょうがない」と言っていた。30歳を過ぎて経験をしてきたんだよね。マリノス戦の後はすごく落ち込んでいたけどね。

椛沢:その那須を支えている『那須ノート』も見せてくれることの約束を取り付けたそうですね。

河合:那須さんが見せてくれるといった。でも、いつ見せてくれるんだろうか・・・・・・。継続的にお願いをしてみます。生きていれば、どんな強い人でも心が折れそうな時は誰にでもある。そこで本当に心が折れる人間と踏ん張れる人間がいる。踏ん張れる人間になるためのヒントを、那須さんからのプレゼントとして皆に届けたいと思っています。

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椛沢:彼のメンタルが弱かったのが信じられない。どうやって強くなったのか。そのノートをどうして作ろうと思ったのか知りたいですね。

河合:マリノスのスタッフには、アテネオリンピックの時の話も聞かされてビックリしたんだけど、アテネオリンピックが終わって空港に迎え行った時に、「俺はオリンピックを吹っ切れて帰ってきた。マリノスのことしか考えていない」と言っていたんだけど、その時にファンからサインをお願いしますと言われて書いたのが、マリノスの番号じゃなくて、オリンピックの番号だったと(笑)。自分でも何番を書いたか分からないような状況だったそうで、相当ショックだったみたいね。実際に、そのままズルズル引きずって、マリノスでもダメだったという話を聞かされた・・・・・・。

椛沢:成長を重ねて、良い時にレッズに来てくれたんですね。

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